静かな旅立ちと修行開始2
船のハシゴをカナが登りきり、誠志郎もハシゴに足をかけていた。カナの時のように邪魔が入ることが無いため駆け上がり、数秒で登り終えた。
カナと女が向かい合っており、女の手にはナイフが握られていた。これだけの数のナイフがあるとするならば服の何処かに隠し持っているのだろう。そう思ったが、女の服装は短パンに長袖のシャツ一枚。どう見てもナイフを隠し持つことは出来ない。
だとすると、女は魔法使いの可能性が高い。
「カナ。そいつは魔法使いの可能性が高い」
誠志郎がそう言うと、カナは頷いた。
「でも、あなたの魔法はナイフの創造じゃないよね?」
誠志郎がカナの発言に耳を疑っていると、女は突然あははと笑い始めた。そして、ナイフを置き両手を挙げた。
「降参だよ。あんたらマルクス・ドン・サウロの紹介してた男女二人組だね?」
「ええ、やはりあなたがユウさん」
二人の会話に置いてけぼりを食らっている誠志郎はカナに尋ねた。
「どういう事なんだ、カナ。そいつがマルクスの紹介人って」
そう言って頭を悩ませている誠志郎にユウが冷めた声色で言った。
「カナ・ウィリアムは認めるけど。君は認められないね」
「は?」
誠志郎が声を漏らすとユウは誠志郎の目の前まで近付いてきた。
「女に先陣切らせて自分はその尻を追う。おまけに察しが悪い。私を魔法使いだと言い当てて無ければ今すぐに叩き出していた、君だけね」
「な、なんだと?」
「マルクスの話を聞く限りじゃ、他の男達とは違うみたいだったから入船を許可した。でも、結局は同じじゃない。あなたも大変ね、カナ・ウィリアム。こんなボロ雑巾みたいな奴、私なら汚れを拭くのにすら使わないわ」
ユウにボロクソに言われた誠志郎は頭に血を上らせながらも、怒りを堪えているようだった。無意味な戦いは望まないし、何よりも図星を突かれて怒るのは格好が悪い。
誠志郎はユウが言うことの全てに自覚があった。
「ユウ・ミリアン。俺はお前の言う通りの人間だ。さっきもカナの方が俺より強いんじゃないかと思って、安心した。自分より強い奴が味方にいれば心強いからな。でもそうじゃないだろう。それじゃ、カナを連れ出した責任が取れていない」
ユウは「責任って?」と聞き返し、誠志郎が真っ直ぐな声で言葉にした。
「彼女を守って行く責任だ」
「気持ちだけは立派ね。でも、君は力も技術も経験も追い付いていない。早く強くなりなさい。そんなんじゃディア国で死ぬよ」
ユウの言葉に誠志郎は息を呑みまた一つ覚悟を決めていた。




