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静かな旅立ちと修行開始1

 夜が明けるよりも少し前、誠志郎とカナはマルクスとノアに見送られ、櫓をあとにした。

 二人は目的地であるディア国に行くため、マルクス紹介の元、物流船の船長に送ってもらえる事となった。


 マルクスの行為に感謝しながらも誠志郎とカナはソリティア国北部の湾岸に訪れた。そこにはいくつもの物流船が並んでおり、どの船に乗るべきなのかは全くと言っていいほどにわからない。

「カナ、これはどれに乗ればいいと思う?」

「マルクスさんのお話ではお迎えがあるようだけど…」

 そう言って周りを見渡してみるカナだが、人影すら見当たらずため息を漏らした。


「しらみつぶしに探してみるのも良いけど、それじゃ埒があかないねーな」

「埒があかないけれど、他に方法が見当たらないでしょう」

 カナに図星をつかれると、表情を顰めるが諦めたかのように頷いた。

「分かったよ。しらみつぶしだな」

「ええ」


 誠志郎とカナはあてもなく物流船を見て回る事にしたのだが、思い返してみればマルクスの知人がどんな人なのかすらも知らない。知っているのはユウ・ミリアンという名前だという事のみ。

 だからこそ、二人はその名を叫びながら歩いた。

「ユウ・ミリアンさんはいませんかー?

「ユウ・ミリアンさーん」

 

 それだけ名前を呼びながら歩いても人一人として現れない。その事に二人が違和感を覚えていたその時、数多く並んでいる物流船の中で一際汚い船の上から何かが飛んで来た。

 気が付いた誠志郎とカナは飛んできた物を難なくかわした。だが、二人は安心などできやしなかった。何故ならば飛んで来たのが殺意のこもったナイフだったからだ。


 二人の見上げた先には、一人の女性が立っておりその両手にはナイフを持っていた。

「ここからじゃ部が悪いな」

 誠志郎がそう呟くと、カナは微かな笑みを浮かべて言った。

「いいえ、優勢よ」

 カナはそう言い残し、女のいる船へと走って行った。勿論ナイフを投げられるのだが、当たることはない。誠志郎相手でも当たることはないであろう真っ直ぐなナイフなのだが、驚くべきポイントはカナがナイフを一切見ていないということ。


 まるでどこに飛んでくるのかがわかっているかの如く走り抜けていた。やがて、立ち止まったカナは船から吊るされているハシゴに足をかけた。

 誠志郎はすぐにカナの後を追い援護を試みるが無駄足だったようだ。


 ハシゴを登るカナは格好の餌となり、上からナイフを投げられていた。先ほどよりも近距離な上に足場の悪いハシゴの上じゃ胴体を狙われた時点で終わりだ。誰がそう考える、だが、カナはその考えを遥かに凌駕していた。


 投げられたナイフは全て自らの短刀で薙ぎ払い、淡々と登って行く。息ひとつとして見出すことのないカナのそんな姿を見て誠志郎は思った。

「俺よりも強いんじゃ…」


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