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奴隷解放宣言6

 ヨナ・ウィリアムの用心棒であるランとポーネが瞳の色を赤く染めると戦闘が始まった。誠志郎の知っている情報として、ランと呼ばれている金髪の女は水魔法という事。

 それから、ポーネと呼ばれている黒髪の女は刃物のようなものを扱う魔法だという事。


 全てはランという女が口にしていた事だが、見るからに頭の悪そうな彼女の言葉を誠志郎は疑わなかった。それに、疑う暇もなくポーネの手から刃物が飛んできたのだ。

 不意を突かれたものの何とか避けた誠志郎だったが、動きを読まれていたかのようにランの圧縮された水弾が飛んできて、再び腹部を抉った。


「圧縮された水滴が一定速度を超えるとその水圧が体内に衝撃を与える。厄介だな。おまけにもう一人は刃物を無条件で投げてきやがる」

 誠志郎は持ち前の優れた動体視力と素早い動きで二人の攻撃をギリギリの所でかわし続けていた。だが、それにも体力の限界が見え始めていた。


 右足を引くのが一瞬遅れただけで刃物が右足に突き刺さる。

 足が止まれば胴体も止まる。すると、ランの水弾が容赦なく襲いかかってくる。水弾を雨のようにくらい続けていると、誠志郎の臓器は勿論のこと、筋肉にも衝撃が走り出した。そこに追い打ちをかけるはポーネの刃物だった。


 刃はそこまで大きなものではないのだが、刺さればそれなりに出血をするし痛い。それを全身で受けてしまった誠志郎は既に血だらけだった。意識すらもかろうじてある程度だろう。


 目の焦点を合わせることすらも困難でその姿を見た、ランとポーネは愉快そうに笑っていた。

「見てポーネ、あいつもう死ぬよ?」

「そうね、ラン。二人でグチャグチャにしちゃいましょうか」


 楽しんでいるランとポーネを見ていたヨナ・ウィリアムは不機嫌そうに言った。

「いいから早く殺れ」


 ヨナ・ウィリアムはこの圧倒的有利な状況の中でも何か嫌な予感を感じていた。そして、この場に突然の静けさが訪れた。


「ラン、ポーネ。さっさと殺らんか!」

 ヨナ・ウィリアムが怒鳴り、二人は肩を震わせながら誠志郎にトドメの一撃を放とうとした。だが、ヨナ・ウィリアムの嫌な予感が的中し、誠志郎はランの後頭部に手刀を打ち込み意識を絶った。


 ランとポーネはヨナ・ウィリアムを恐れていた。そのことを見抜いていた誠志郎はヨナ・ウィリアムが二人に命令する隙を狙っていたのだ。その瞬間こそ、二人が一瞬敵から視線を逸らすと思っていたから。


「いつ以来かな。痛くて、痛くて、最高に燃えてきた」

「な…」ポーネが声に漏らし、刃物を至近距離で投げ付けた。だが、その刃物は誠志郎の頬をかすめる程度で致命傷は与えられなかった。


 誠志郎は眉間に皺を寄せて言った。

「もう一度だけ言うぞ。俺が()でお前らが()だ」

 誠志郎の拳はポーネの腹部を抉りこみ、たったの一撃で沈めてしまった。


 そして、この場には誠志郎とヨナ・ウィリアムの二人だけが残った。


 後ずさるヨナ・ウィリアムを前に誠志郎は距離を詰めて行った。実の家族に銃口を向ける王族に対しての、激しい怒りが暴発寸前でずっと我慢していたのだ。この怒りが破裂した時、ヨナ・ウィリアムはこの世から消えて無くなってしまうだろう。


 本人もそのことを本能的に悟っているからこそ、こうして逃げているのだ。無様な姿になったヨナ・ウィリアムに誠志郎は震える声で言った。


「尻尾巻いて逃げんなら逃がしてやるよ。その代わりな、王都に着いたらこの俺が…誠志郎が全ての奴隷を解放してテメーら王族を滅ぼしてやるって伝えろ。お前も許さねぇからな」

 ヨナ・ウィリアムは足を震わせながら誠志郎を眺めていた。すると、誠志郎は王族であるヨナ・ウィリアムを見下すように改めて宣言した。


「いつか…()()()()()()()()()()()()()()()()首を洗って待ってろ」

 

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