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奴隷解放宣言3

 ステージ裏を当てもなく誠志郎は走り回った。何故ならばどこに行けばノアがいるのか知り得ないからだ。片っ端から当たってみるしか誠志郎に術はない。

 そんな事だろうと思ったカナは、誠志郎の手を強く引き、話し出した。


「道が分からないなら聞いてよ。ほら、こっちよ」


 守ると誓った側から手を引かれる自分の状況が面白くないのか、誠志郎は不貞腐れたように頬を膨らませていた。その姿を横目に見ていたカナは悪戯に笑みを浮かべていた。


「こっちよ」

「うん」


「次はこっち」

「はい」


「今度はこっち」

「かしこまりました」


 カナは突然足を止めた。

「角を曲がるたびに謙虚になるのやめてくれます?かしこまらないで貰えます?」

 誠志郎は、目を丸くして呟く。

「了解っす!」

「何、セイシロウは言葉が伝わらない人種なの?暴力だけなら猛獣と同じよ」


 余りの毒舌ぶりに誠志郎は思わず大笑いしてしまった。カナは至って真面目に話しているのに、相手は笑っているのだから相当苛立つことだろう。それなのに、どういう訳かカナ自身も笑みを浮かべている様で、楽しそうだった。


「カナ。なんか楽しいな!」

「何を呑気な…」

 二人は兵を見つけては戦闘を避ける様に隠れながらノアの居るであろう場所を目指した。そして、さらに数メートル進んだ扉の前で、カナが立ち止まった。


「ここよ。侵入者は次のオークションに回されるからそれまではここで監禁されるの。勿論、ご飯なんて出てきやしないから良い待遇とは言えないわね。それだけならいいのだけど」

「開けるぞ」

 誠志郎がドアを開けると、そこには既にマルクスが居て、ノアを強く抱きしめていた。だから、誠志郎は静かにドアを閉めた。


 カナは「何故、中に入らないの?」と尋ねてくるが誠志郎は頬を赤らめてこう答えた。

「男にはできちゃいけない人とできてしまう事がある。見なかった事にしてやろう…な?」


 誠志郎が意味深な発言をしていたのが聞こえていたのか、中からドタドタという足音がなり、勢いよく扉が開いた。

「できとらんわー!」

 

 マルクスが青ざめた表情で誠志郎を怒鳴りつけるが、当の本人は平然とした表情で答えた。

「おーマルクス」

「何が、おーマルクス。だ!聞こえの悪い言い方すんな」

「その様子ならノアは無事なんだろう?」


 誠志郎がそう尋ねるとノアの元気な声が聞こえてきた。

「オイラは元気だぞ!」

 誠志郎はその声だけを聞いて安心しかけるが、ノアの足に巻かれた包帯を見てマルクスに問うた。


「ノアの足はどうした?」

「恐らく折られている。応急処置はしたが走れはしないだろうから俺がおぶって行こう」

 誠志郎はノアの目線まで腰を下ろし謝った。

「ノア、ごめんな」

 するとノアは満面の笑みを浮かべて首を振った。

「オイラは大丈夫だぞ。セイシロウもマルクスもカナもいる。オイラ、一人じゃないから大丈夫なんだぞ!」

 誠志郎は目に涙を浮かべ、ノアの頭をワシワシと撫で散らかした。ノアは痛がっている様で嬉しがっている様でもあった。

 

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