カナ・ウィリアムという人生
幼い頃から魔法使いに憧れていた。
私にも魔法が使える様になる薬が届くのだと願っていたし、実際に薬は届いた。私の生まれは凄く高貴な家系だったから、色々と優遇されて魔法の薬が早く入手出来たんだと、今では思う。
両親は私が女だったからどんな具現化魔法を使えるのか期待してくれていた。それなのに、私の身には何も宿らなかった。
魔法の薬を飲んでから魔法が発生するまでに個人差はあれど、魔法が発症しないなんてことは聞いたことがない。そう、私が初めてだった。
だから、私は五歳になった誕生日の日。両親からプレゼントがあると言われ、離島に捨てられた。
高貴なウィリアム家にとって私の様な不出来な娘は邪魔だったのだろう。
私は離島で泣き続け、その声を聞いた大人達が匿ってくれた。四つある国のどこにも属さない島には、魔法の使えない人たちが集められていた。皆、私と同じ境遇でこの場に捨てられていた、だからこそ魔法が発症しない人の存在が一つもなかったんだ。
当時、両親に捨てられて心身ともに疲れていた私は、もう立ち上がれないのだと思っていた。けれど、私と同じ境遇の皆は私を家族だと言ってくれた。だからこそ、一年ほどで私は前を向き始めた。
そんな矢先に、私の暮らしていた離島にミサイルがいくつも撃ち込まれ、木に火がうつり辺りは一瞬にして火の海となった。
あちこちで火に焼かれて苦しむ家族達の声が聞こえてくる。それなのに、私は自分の身を守ることで精一杯だった。
生きよう、生きよう。そう思った先にあったモノは孤独だった。
離島は二日ほど燃え続けたが、雨に消火された。火は消えても木からは煙が立っていて、あの日ほど頭がぐらついた事はない。
そして、あの日ほど泣いた日は無い。
骨すら残らない家族もいたし、半焼けで亡くなった家族もいた。私よりも若い命だっていくつも亡くなった。それなのに、私は生きてしまっている。
私の他にも数人生き残ったが、一日一人ペースで自害していった。だから、私が本当の意味で孤独になるまでにはいくつも夜を見ていない。
私は、もう一人だと受け入れて死ぬことさえも考えた。けれど、亡くなった家族の仇を討ちたいと言う、憎しみに溺れた。
誰がやった事なのかもわからないが、私を絶望の淵から引っ張り上げてくれた大切な人達を殺して、何がしたいのか。私の家族が死ぬなら、他の皆も死ねば良い。その一心で私は剣を振り、国の中に入り込み内部から壊していった。
一人では正面から戦うことができないのだから仕方ないと自分を毎晩言い聞かせていた。
そうして、私は最近になって感じるようになった。
『私は多くの命を奪っている。だから、私が恨んだ人達と同じなんだ』
この罪悪感を持ったまま死ぬ事が嫌で、私は奴隷になる事を望んで捕まった。
もう、私の幸せなんていらない。私はもう何年も幸せなんて望んでいない。
罪滅ぼしが自己満足出来たならあとは死ぬだけなのだから…それなのに、なんで、彼は私を見捨てないの。
私の小さな親切だって自己満足でやっただけなのに、何で私に構うの。
昨日、ノア君と彼との別れ際私にかけてくれた魔法は、とても温かくて優しくて、あれが最後のご褒美だと思ったのに…。これ以上、私を救おうとしないでよ、私達は他人なんだから、もう放って置いてよ。
どれだけ、彼を引き剥がす事を願っていても、私にそうする事は出来なかった。出来る訳が無い。
『他人に人生笑われてんじゃねぇ』って、どれだけ口調や声色が怖くなっても、君の…セイシロウの言葉は私に頑張れって言ってくる。
「も、もう、これ以上私に言葉をくれないでよ」
気が付くと、私は涙に濡れてセイシロウの背中に叫んでいた。
目の前には私達奴隷を買いにきたお客さんがいるのに、みっともなくて顔を上げられない。
もしかしたら、私を捨てた家族が上の席で見ているかも知れない。
場内では笑いが巻き起こっている。きっと、奴隷の涙が面白いのだろうな。国を引っ掻き回して悪名を上げた女が奴隷になった途端、泣き崩れたのだから。わたしの心の内がわからない他人には、奴隷になりたくない哀れな涙にしか見えないだろう。
でも、他人の心なき笑いのお陰で私は今、死にたいと思えた。
もう、本当に終わってしまおう。
舌を噛むのは痛いのかな、なんて事を考え始めた、その時。
私の体が大きな何かに引き寄せられ、優しく包まれる感じがした。
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