奴隷解放の第一歩3
『レディースアンドジェントルメン!大変長らくお待たせいたしました。これより、人身オークションを開催致しまーす!』
城の敷地内にある大きな園庭に作られたドームはなんと三階建てで、その収容人数は数千人をも超えるという。
そんなドームで競り合いをするのに己の声は使わない。全ては個人の席に設けられたタッチパネルに打ち込む形式だ。そのパネルには入場時にあらかじめ入金しておいた金貨の数と奴隷になる人の一覧が表示されていた。
お目当の人間を品定めするということだろうか。
因みに、奴隷の一覧に載っている人をタップすると人物の顔写真や特技、意気込みが記載されていた。名前の記載がないあたり既に人権は剥奪されているのだろうと、誠志郎は考えていた。
「おい、誠志郎。始まるみたいだぞ」
妙に緊張しているマルクスの声で誠志郎はステージに視線を向けた。
ステージには大きな長帽子をかぶってふざけたハート型のサングラスをかけているおじさんが注目を集めていた。カラフルなライトがステージを踊り、場内のボルテージが上がりきったところで一人目の候補者がステージに連れてこられた。
すると、ふざけたサングラスのおじさんはマイクを片手に説明を始めた。
「本日スタートを飾る商品は、絶世の幼女です!これと言った特徴は御座いません!この子を貴方好みに育て上げ、アーンなことやコーンな事をしちゃいませんか?」
誠志郎が苛立ちを隠せずにいると、隣にいるマルクスがその怒りを収めるために声をかける。
「落ち着け。良い人に巡り会えば彼女にとっても良い人生になる」
「んなこた知らねーよ。俺はあの子を商品だなんて言いやがったあのクソジジイが気に入らねーんだ」
「一人目からこの取り乱しよう…先が思いやられる」
マルクスは誠志郎が席から立ち上がらぬように、その両手を力強く押さえつけた。その時、ステージ上部に設置された大型モニターの画面が切り替わった。
画面には『スチュアート家、金貨五十枚』と映された。
「スチュアート家が、この幼女に金貨五十枚を差し出したぁー!他に名乗り上げる者がいないのなら、スチュアート家に決定致しまーす!」
誠志郎は力を抜いてマルクスに尋ねた。
「スチュアートって事は…」
「ああ、ノアの元家族だろうな」
「ノアを探すためにここへ来ていたって事だよな?なあ?マルクス」
マルクスは沈黙を貫き、その間に三階席に座っていたはずのスチュアート家当主様がステージに上がり、奴隷契約の儀式を行った。
ふざけたサングラスのおじさんから受け取った鍵に、自らの血液を垂らし胸ポケットにしまった。すると、ふざけたサングラスのおじさんにコメントを求められ、華々しく笑顔を振りまいて答えた。
「私は先日バカ息子を捨てました。ですので、この娘はバカでないといいなと思います。はっはっは」
その言葉が場内を笑いの渦に巻き込んだ。だが、この場内でたった三人、笑っていない者がいた。
一人は誠志郎。もう一人はマルクス。二人はノアの家族の発言が許せずに怒りを抑えているようだった。
そして、三人目の人物はワイングラスを右手に持ったまま無表情を決めこむ赤髪の女性だった。
女性はワイングラスを時計回りに回すと、誰にも聞かれぬよう呟いた。
「今までも馬鹿げた世界だったが、ここ最近は腐った世界に落ちたもんだな。これが貴様の作りたかった世界か創造者よ」




