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奴隷解放の第一歩2

 日が昇り、崩れた櫓の全貌が嫌でも目に入る。埋れた商品の中には高貴な物が混ざっているとは言えど、瓦礫の下ではゴミ同然だった。誠志郎とマルクスは、そう思ったからこそ、櫓の掃除なんか後回しにしていた。


「よし、ぼちぼち行く準備でもしないとな」

 誠志郎がポツリと呟くと、マルクスが反応した。

「そうだな、ノアを救ってやらねばな」

 マルクスの反応を見て誠志郎は目を丸くして沈黙した。何も言い返しては来ない誠志郎に違和感を覚えたマルクスが問う。


「どうかしたか?」

 すると、誠志郎が口を開いた。

「マルクスも行くのか?」

「昨日の流れ的に行くに決まってるだろ!」

 マルクスは声を大にして言った。だが、誠志郎には何か懸念する部分があるようで少し口籠もった。


「マルクスは俺が連れ出そうとしている彼女を恨んでいるんだろ?昨日のお前の目を見れば分かる。お前がどれだけ彼女を悪く言おうとも、彼女が裏切りを専門的に繰り返していようとも、俺は連れ出すぞ?」

 誠志郎が思いがけず真剣な面持ちで話してしまうと、マルクスはクスリと笑った。そして、誠志郎の肩を何度も叩きながら言った。


「いいんだ。一晩考えてみたが結局俺は彼女を…()()()()()()()()という女をよく知らん。それに、物事には事実であっても真実でない事もあるからな。俺がカナ・ウィリアムを恨むかは彼女を見て決めるさ」

 マルクスの考え方に誠志郎は尊敬しているようだった。怒りや憎悪を殺して、誰かを救う勇気をマルクスは持っている。それは強さであり、優しさであり、圧倒的な正しさなのだろう。


「はっきり言わせてもらうと、俺はここでのルールも生き方も何もかも知らない。俺が救いたい彼女は一体何をして囚われの身になったのか、何故マルクス達は自由に生きられないのか。俺はバカだから考えても分からねーんだ」

 マルクスは黙り込んだまま、話している誠志郎をじっと見つめていた。

「俺はここに来るまでに、友達とか家族とか多くは無いけど少なくも無い人達に心配されてきたんだ。それだけ、俺はヤワな人間に見えていたって事なんだと思う。それと同時に、俺は恵まれていたんだと思う。全ての人間とは言わないけど、俺は抱えられるだけの人を幸せにしたいって思うんだ。その中にはお前もいるってことを忘れないでくれよ?マルクス・ドン・サウロ」


 マルクスは微かに笑みを浮かべて顔を背けてしまった。だが、その瞳に宿る優しき雫を誠志郎は見逃してなどいなかった。彼の涙が奴隷の本心だと信じて、進むはオークション会場一択。

『ごめんね、ソリティア。少しだけ寄り道するけど、必ず戻るから…』


 マルクスは瞳の雫をぬぐい、誠志郎は身軽になった体に白いローブを纏い場内のオークション会場へと向かった。

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