奴隷解放の第一歩1
奴隷たちが列を成す地下道から出た誠志郎とマルクスは、元の櫓に戻っていた。
瓦礫に埋もれた商品達の中から、誠志郎は自身のリュックを引き抜きマルクスに差し出した。
「この中の物を鑑定してくれ。その上で俺に金をくれないか?」
マルクスは誠志郎のリュックを漁り、数分後に青ざめた表情で呟いた。
「とてもじゃないが俺には扱えないものばかりだ」
「どういうことだ?ガラクタばかりなのか?」
誠志郎が慌てて聞き返すと、マルクスは力無く首を横に振って答えた。
「価値が高すぎて、こんなチンケな店じゃ金を出しきれない」
「なんだよそれ。金にならなきゃ、彼女もノアも救えないんだぞ?」
「待て、金ならある。俺の全財産をお前に託す。それだけの価値があるものなんだ、セイシロウの持ち物はな。だが、全ては受け取れないんだ。俺の持ってる金は金貨百五十枚だが、この持ち物はそれ以上だろう」
マルクスの話に納得した誠志郎は、お金にならないわけではないと知り安堵のため息を漏らしていた。だが、ここで一つの問題に気がつく事となった。
「なあマルクス。金貨百五十枚あればあのオークションで二人を落札できるのか?」
マルクスは迷う間も無く頷いた。
「オークションにくる身分の奴らは金の亡者達だ。金は持っているのに良いものは安く買いたがる。その結果、どれだけの上物でも安い価格で売れてしまう。その駆け引きが三日ほど続いた事もある。だから、最近では新しいルールが加えられた」
「新しいルール?」
誠志郎が聞き返し、マルクスが答えた。
「ああ。始めに金貨百枚を出した物は確約というルールだ。言葉の通り、金貨一枚から競り落とせるこのオークションで、金貨百枚を初手で提示した者に獲得権利が無条件で与えられる。それならば、身分の知れていないセイシロウでも勝てる」
誠志郎はオークションで勝てる可能性が高いことを知った。そして、直ぐにマルクスの金貨と荷物を交換することにした。
二人はオークションが開かれる明日に備える為、地べたに背をつけながら夜空を仰いだ。
「なあ、マルクス。お前は奴隷なのにこんなことしていいのか?」
「あー、ばれなきゃなんでもありだよ。俺ら奴隷は見えない首輪をされていてな、その鍵を主人が常に持っている。その鍵を通さないと支配は出来ない。つまり、常に監視されている用心棒でもない限りは割と自由だ」
「ふーん、因みにお前の首輪はどうやれば壊れる?」
「鍵さえ折れれば契約は無効だ。だが、そう容易くはないんだ。鍵を手に入れる事も、ましてやそれを折るには特別な工具が必要だ。鍵が折れたなんて前例もないしな」
マルクスが悲しみの籠った声で話し終えると、誠志郎は笑みを浮かべて優しく言った。
「前例なんて作ればいいだろうが。明日、見せてやるよ」
「何を見せるつもりだよ?」
「そんなもん決まってんだろうが…」
マルクスは誠志郎の発言に耳を疑い呆れかけていた。それと同時に新たな希望の光でも見つけたかのよう、涙ながらに笑った。
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