侵入、奴隷の檻1
日が傾きかけた頃、誠志郎とマルクス、ノアは人気の引き始めた市場を歩いていた。マルクスの壊された櫓がある市場からは一キロほど離れにある、この市場は城までの一本道に面している。
ここでは王の目が直接かかることもあるため、誠志郎はマルクスから貰った白いローブを身に纏っていた。
どんな素材を使っているのかはわからないが、このローブはとても軽いと感じているようだった。誠志郎はその事を我慢出来ずに尋ねた。
「このローブはめちゃくちゃ軽いな。それでいて頑丈そうだ。何で出来てるんだ?」
すると、ノアが自信満々に答えた。
「オイラ知ってるぞ。このローブは絹魔法に特化した魔法使い様が作ってくれているんだ」
「絹魔法?実際に手から糸でもでくるとか?」
誠志郎が半笑いで問い返すと、ノアとマルクスが真剣な表情で呟いた。
「出るに決まってるでしょ」
「ああ。そうだよな、幾ら何でも糸は出せ…えっ、出せんの!?」
驚く誠志郎の口をマルクスが力強く抑えた。
「でかい声出すんなよ。怪しまれんだろうが」
誠志郎のか細き腕では、マルクスの丸太ほど太い腕をはがすことが出来ず諦めた。その代わりに小さな声で、再び尋ねる。
「魔法使いってそんな事まで出来るわけ?」
ノアはため息交じりに誠志郎に問う。
「セイシロウだって魔法使いなんでしょ?まあ、セイシロウは男だから具現化する魔法は使えないよね」
マルクスも頷いてノアの言葉に賛同した。
「セイシロウは魔法使いだがこの世界を知らなすぎる。それに男の魔法使いなど一部を覗いて、たかがしれているものだ。だから、女が戦争に出るしかないんだろう」
誠志郎はマルクスの言葉に違和感を抱いたが、先を急がなければいけないと知っているため、これ以上の立ち話しは続けなかった。だが、頭の中ではずっと引っかかっているようだ。『女が戦争に出るしかないんだろう』という言葉が。
商人達が次々と櫓をたたんで行く中、三人は遂に城のすぐ近くに辿り着いた。
城と市場は同じ土地の中にあるのだが、大きな鉄の門が閉まり切っていて開くことは困難だろう。まさしく王の住む城と言ったところだろうか。
「それで、この城の中に奴隷になる人達がいるのか?」
誠志郎が質問するとマルクスが首を横に振って、門の少し右隣を指差した。
「あそこに小さな小屋があるだろう。あそこには地下の入り口があってな、その地下道が城の中にあるオークションドームに繋がっている。だから、奴隷達は城の中というよりはその地下にいる」
「じゃあ、あそこから入って連れ出せばいいんだな」
「そんな甘い話ではない。小屋の中にはかなりの手練れが…」
誠志郎はマルクスの助言を置き去りに小屋の中に入って行った。その姿を目で追いながら、ノアが呟いた。
「セイシロウって無鉄砲だよね」
マルクスは深く頷いて、すぐに誠志郎の加勢へと向かった。
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