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この世界の創造者7

 消え去る三人を誠志郎は追わなかった。というよりも追えなかったのだ。

 胸に刺さったナイフを引き抜いて、背後にいるノアとマルクスに向き直った。

「ごめ、ん。何か、刺し傷に効…く薬。くれ」

 そう言い残して、誠志郎は前のめりに倒れた。


 すかさず、ノアが誠志郎を抱きかかえたがあまりの出血量に声を抑えられなくなった。


「うぎゃー!マルクスゥゥー、セイシロウの血が止まんないよ!どうしよう」

「待ってろ、止血薬がある。クッソ、さっきの爆風でどこにいった」


 マルクスは瓦礫や武器や商品で散らかった床を這いずり回った、そして思っていたよりも早く薬を見つける事が出来た。

 武器と武器の間に挟まっていた様で容器が割れてしまい、残りはあまりなかった。それでも、刺し傷一つ塞ぐには十二分に足りる。

「よし。ノアは見ない方がいい。今から傷を塞ぐ」

「う、うん」


 ノアは誠志郎の傷口が見えない所に避難し、マルクスが誠志郎の服を脱がした。思っていたよりも深い傷で出血は未だに止まる気配がない。マルクスは布に止血薬をたっぷり塗り込み傷口を塞いだ。そして、布が落ちない様にさらに上から布を巻きつけて固定していった。

 手際が良いとは言えないが、丁寧な処理だった。


「ごめんな、マルクス…助かったよ」

 誠志郎が話だし、マルクスは驚いていた。

「これだけの痛手を負ってずっと意識があったのか?」

「俺は、ここに初めて来たからな…。怖くて落ち落ち眠ってらんないんだよ」

「そ、そうだよな。セイシロウにとってはここら一帯が敵地みたいなものだ」


 マルクスは思った。

 何故、初めての土地で彼はここまで気丈に振る舞えるのだろうか。長くこの地に住んでいる私ですら気丈には振る舞えない事態にも彼は動じない。それどころか、敵に喰ってかかろうとしていた。現に創造者の使いとあろうものが、セイシロウ一人に呑まれかけていた。だから、撤退をせざるを得なかったのだろう。


 セイシロウには死んでも良いという重い覚悟と死んでも成し遂げるという強い意思のようなものがあるのかも知れない。


「おい、マルクス。いつまでボーッとしてんだよ。奴隷になる前に彼女を助けに行かなきゃ行けないんだ。暇してる時間はない」

 そう言って、塞ぎ切らない傷口に手を当てて誠志郎は立ち上がった。

 その姿を見てノアは表情を明るくして喜んだ。

「やったー!セイシロウ、治った!」

 ノアの元気に負けじと誠志郎もガッツポーズをした。

「おう!余裕だ!」


 その時、マルクスは誠志郎の腕を掴み声を荒げた。その声は誠志郎の強い気持ちにすがるかの様、それでいて何もできない自分を恥ずかしんでいるかの様だった。


「俺から見れば、セイシロウ、お前とて子供だ。それなのに何故、異国の地でそれほどまでに気丈に振る舞える?怖くはないのか?俺は、創造者の使いが来た時反逆することに恐怖を感じた。奴らは俺の反逆の意思を知ったから消しに来たのではないかと思うと、夜も眠れない」


「俺だって怖いさ。刺されたら痛いし、殺されたくもない。でも、なりたい自分は曲げたくない。答えになってないかも知れないけど、今はこれで勘弁してくれよ」

 マルクスは頷きながら「十分だ」と呟いた。


 そして、マルクスは床に散らばった武器の中から一刀の剣を手に取った。

「日が暮れたタイミングで奴隷になる者はオークション会場の地下に移動する。日没まではそう長くはない。今なら間に合う。俺が案内する、その代わりノアは自分の住処に戻れ」

 ノアはすぐさま首を振り断った。

「オイラも行くぞ!また一人になるなんて嫌だ」

 ノアの気持ちは痛いほどに分かるがマルクスは引かなかった。

「ダメだ。お前がいても足手纏いになる」

「嫌だ行く!」

 

 二人の言い合いを見兼ねた誠志郎は、二人に割って入った。

「まあ、待ってよマルクス。ノアがここまで行きたいって言ってるんだ」

「だが、奴隷解放なんて戦争にすらなり得るぞ?」

 誠志郎はマルクスの言葉に頷く。そして、ノアの目線までかがみ話し出した。

「ついて来てもいい」

「ほんと!?」

「ああ。ただ、ノアの夢を奪う事になるぞ?ノアがなりたい奴隷ってのは思っているよりも残酷なんだ。無抵抗に殴られるし、泣く事も出来ない。いつの日か感情すらもなくなってしまう人だっている。それでも、奴隷になりたいなら俺はもう何も言わない。連れて行く条件は奴隷のみんなをちゃんと見る事、そして、ノアが本当に奴隷になりたいのか、その答えを見つけてくれ。それが出来るなら俺が守ってやる」


 ノアは息を呑み、真剣な表情で答えた。

「分かったよ」

「よし!マルクス、ノアも連れて行くよ。さあ、出発しよう」

 マルクスはため息交じりに、ノアに言った。

「覚悟があるならいい。話も聞かなくてすまなかった」

「ううん。オイラこそマルクスがオイラのためを思って言ってくれてるのにワガママばっかだ」


 二人の仲直りの早さにうんざりしたのか、道も分からずにズカズカと進んで行く誠志郎。そんな誠志郎を見て二人は同じ言葉を呟いた。

「「不思議な人…」」

少しでも面白いと思われましたら、

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