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呪われた屋敷2

 二人だけの生活が一ヶ月ほど経過し、せいしろうは新たな出会いに遭遇することとなった。


 せいしろうはこの一ヶ月、呪いの屋敷の一部屋を借りていた。運び込まれたのが呪いの屋敷で、ソリティアがこの屋敷の住人というのだから居座るのは仕方のないことだった。はじめは怯えることもあったが既に慣れ始めて子供の順応さを魅せた。


 だからだろう、ドアをノックする音に警戒心を解いて応答してしまったのは。


 ヘアのドアがコツコツとなりせいしろうはドアを開けた。ソリティアだと思ったのだ。というよりも、この悪名高い屋敷に他人が来ないと疑わなかった。けれども、ドアの先にいたのは顎髭が妙に整っているおじいさんだった。


 険しい表情に加え皺の数々が睨みを利かせているかのようだった。せいしろうは怯えるあまり尻餅をついて腰を抜かしてしまったようだ。

 そんな怯えるせいしろうに近付く顎鬚のおじいさんは、んーと低い声で唸っていた。その後に屋敷中に響き渡るほどに声を張り上げた。 


「ソリティアァァ!何処におるぅ!ソーリーティーアー」

 顎鬚のおじいさんはギシギシと歯を擦り合わせ怒りを露わにしていた。


 けれども、ソリティアの来る気配はなくその危なげな視線と怒りは腰を下ろしたままのせいしろうに向けられた。

「クソガキ。何故ここにおる?言うてみ?」

 威圧を含んだその問いにせいしろうの口は固まったままだ。すると、痺れを切らした顎鬚のおじいさんはせいしろうの胸ぐらを掴んだ。


「言えんのなら、今ここでぶち殺してやろうか?あぁん!?それかさっさと家に帰れ、お前みたいなガキが来るところじゃねーんだよ」

「い、いく場所が無いんだ…」

 せいしろうが勇気を出して言葉にすると、顎鬚のおじいさんは「あ?」と眉に皺を寄せ睨みつけた。そうすればこのクスガキはきっと怯えてこの場を去る、顎鬚のおじいさんはそう思っているのかも知れない。


 けれども、思い通りの結果へは転んでくれなかった。

 せいしろうは睨まれて怯えるどころか睨み返したんだ。


 顎鬚のおじいさんは、ほほうと笑みを浮かべご自慢の顎鬚をワシワシとなぞっていた。そして、せいしろうの周りをゆっくり歩き出した。まるで品定めでもしているかのようだった。


 やがて一周し終えると、ワハハと声を上げ愉快そうに笑っていた。

「お前、親に捨てられたのか?」

 せいしろうは何も答えようとはしなかったが、その反応だけで答えになってしまった。


「お前の母親はこんなガキを捨てるようなクソ親だったのか。こりゃ傑作だな、お前もそう思うだろ?」

 せいしろうは何も言わない。けれど、怒りに似たナニカが体の内からこみ上げて来るのを感じていた。

 せいしろうは俯き力を無くしたように呟いた。


「…わない」

「あ?」

「思わない、僕はお母さんが悪いなんて思わない!何も知らないお前に笑われてたまるか」

 その瞬間、せいしろうは顎鬚のおじいさんの腹部に見事な蹴りを撃ち込んだ。だが、所詮は大人と子供。到底ダメージを与えることなんて出来ない。


 せいしろうは多大なる無力感に苛まれこの一件はこれにて中断、となるのが大人と子供の話なのだがこのおじいさん相手にはそうもいかないらしい。

 次の瞬間、せいしろうは部屋の隅っこまでぶっ飛ばされたのだ。


 子供に向ける拳ではないのだが、殴られたせいしろうは何をされたのかすら分からないような素っ頓狂な表情をしていた。鼻血がボタボタと床と服を汚し、呼吸をすることすらも苦しそうだ。

 

 それなのに、せいしろうは鼻血を拭き再び顎鬚のおじいさんの元へ突進して行った。

「うりゃぁ」

 子供の自分が勝てる相手ではないと知っている。それでも引き下がれないモノがたった五歳のせいしろうにもあったのだ。


 その姿を見て顎鬚のおじいさんは真剣な面持ちになり手を広げた。突進をとっ捕まえてぶん投げてしまおうと言う魂胆だろうか。もはや、このおじいさんなら何をしても驚きはしない。


 せいしろうにもそれなりの覚悟はあったんだ。だから、待ち構える強敵を前に足を止める事をしなかった。

 そして、せいしろうの突進は顎鬚のおじいさんに届いた。


「ガキの割には肝が座ってる。だが、足が弱い、力がない。気持ちだけで倒せる奴などいる訳がないだろうに。勝てぬ相手に何故向かう?それで死んでは元も子もないだろうが、生きるためには逃げることも覚えろ」

 顎鬚のおじいさんは助言を言ってやれるほどの余裕がある。その時点で諦めるのが動物的には正解なのだろう。それなのに、死の危機が迫っていて尚、せいしろうは力を緩めなかった。


「意地など捨て置け!ここで私に挑むことにどれほどの意味がある!?」

 せいしろうは顎鬚のおじいさんに投げ飛ばされた。だが、起き上がってはまた突進をしていた。

 それでもなんども投げ飛ばされるから、何度も起き上がって突進を止めることはない。起き上がるたびに、せいしろうの中が熱を帯びていくようで力が強くなっていった。


 その変化に気がついた顎鬚のおじいさんは、これまでで一番強い突進をして来るせいしろうを強く抱きしめた。

「分かった。もう止まれ。これ以上は本当に死んでしまう」

 けれども、せいしろうは唸りをあげていた。

「あやまれ。こ、このクソじ、じい…が」

 

 最後にそう言い残し、せいしろうは意識を失ってしまった。

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