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この世界の創造者4

 ノアの震える声は誠志郎の心を痛めつけていた。素直で無邪気な少年が向けた『悪魔』という言葉の刃は鋭く、胸中に深く刺さっていく様だった。

 この世界でのルールや価値観なんて訪れて数時間の誠志郎には理解できやしない。自分の様な思想はここでは悪魔だと思われてしまうのだろうか。だとしても、その強き心がぶれることは無かった。


 誠志郎はノアと商人に尋ねる。

「奴隷になる人達はどこに捕らえられてる?大体の道を行ってさえくれれば一人で行く」

 商人は少しの間を空けて、食い入るように言葉を発した。

「いいや、俺も連れて行け。俺の名前はマルクス・ドン・サウロだ。マルクスと読んでくれ」

 マルクスは誠志郎に手を伸ばした。その手を誠志郎が受け取ろうとしたがそれをノアが横入りしてきた。ノアの表情は怒りに満ちている様だったため、誠志郎は様子を見ることにした。


「マルクス・ドン・サウロ…か。何でだよ、何でオイラには名前を名乗ってくれなかったんだ。セイシロウが悪魔の名前を持ってるから特別なの?オイラとは長い付き合いだったじゃないか、オイラはてっきり名前がないのかと思ってたのに」

 ノアの怒りはやがて涙となり櫓の地面にポツポツと落ちて行った。マルクスは、ノアの頭をワシワシと撫でて優しい瞳で言葉にした。


「本来、奴隷ってのは名を持たない。持っていたとしても名乗ってはいけない。名を言った者も聞いた者も只では済まないかも知れない。けど、セイシロウを見ていて思ったんだ。奴隷は正しい生き方じゃない。ノアの思っているよりも汚くて苦しくて、俺は奴隷が嫌いだ。今までお前に名乗らなかったのは俺に反逆の勇気がないからだ」

「じゃあ、オイラがガキで信用出来ないからとかじゃないって事?」

「ああ、俺が臆病だっただけだ。ずっと名乗らなくて悪かったな、ノア」


 意図も簡単に仲直りしてしまう二人に親子の影を見た誠志郎。二人はきっと長くを共にして来たが本当の意味で共にいられた事は無かったのだろう。

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