この世界の創造者3
『奴隷が幸せ』この光景を前に、誠志郎は漸くはっきりしたのかも知れない。この世界は自分の知る世界とは異なる物なのだと。
「ノア、お前は奴隷が何なのか分かってんのか?」
ノアは元気にうんっ!と頷き、瞳を輝かせて話し始めた。
「ご主人様の言いなりになって、その代わりに生活を送れる人。オイラの夢なんだ、高貴な家はオイラみたいな薄汚い奴を買ってはくれないから。頑張らないと!」
その言葉を聞きながら、誠志郎は怒りに震えている様だった。その事に気がついた、商人は誠志郎の肩を軽く叩いて言った。
「お前がどこの誰で、どこから来たか知らんがその優しさと悔しさは痛いほど分かる。でも仕方ないんだ」
「仕方ないって何だ。お前も大人なら何とかしてやれ!」
誠志郎は声を荒げて商人の手を振りほどいた。すると、商人は柄にもなく涙を溜め込みネックレス?の様なものを掴んだ。
「無理だ。俺ら商人でさえも奴隷だから」
誠志郎がネックレスの様に見えていた物が枷だと知り、膝から崩れ落ちた。
その光景を見ていたノアは誠志郎に近寄り「大丈夫?」と問い掛けた。
誠志郎はその問いかけに応えることは無く別の質問をした。
「ノア、今日お前を捕まえた女性はもう奴隷になってるのか?」
「え?多分、明日くらいじゃないかな?」
「彼女を解放する…」
誠志郎が力の籠った声色でそう呟くと、商人がそれを止めるべく口を割った。
「おい、それだけはやめておけ。お前はここに何か目的があって来たんだろ?んなことしちまったら、目的どころか殺されるぞ」
「ああ、気をつけるよ」
「いや、気をつけるとかの問題じゃ…」
誠志郎は商人の言葉に割って入った。
「今日あった彼女からは悔しさと悲しみがあった。おまけに骨が軋む程の傷だ。奴隷になりたい訳がねーんだ。安心してくれ、俺は魔法使いだ!あの子は俺が連れ出す」
誠志郎は勢いのまま口にしているだけでは無い。勿論、勢いあっての物なのだがそれ以上に今ここで一人の人を見捨ててソリティアを救うために動けば、ソリティアと克二に合わせる顔がない。誠志郎は実母に育てては貰えなかったが、ソリティアと克二から多くの愛をもらった。
人としての正しさを教えてもらった。それに反する生き方だけはしたくなかったのだ。たとえ、この世界にはこの世界のルールがあろうとも、そんなルールに縛られて生きるなんてごめんだった。でも、懸念すべき点もあるにはある。
「もし!彼女がノアの言う様に奴隷になりたいのならそれは止めない。でも、俺は誰かに生かされてる人生を人生だと決して呼ばせない。俺はやるだけやってその後に真実の答えを自分で出す」
啖呵切る誠志郎を見て、商人の男は力なく呟いた。
「あなたの名前は…」
誠志郎は商人に名前を聞かれ、そういえばまだノアにも名乗ってはいなかったと気がついた。
「俺は、セイシロウだ」
ノアと商人は誠志郎の名を聞いて、目を丸くした。丸で声の出し方すらも忘れてしまったかの様にパクパクと口を開け閉めする。そうして、数秒時が経ちノアが呟いた。
「悪魔だ…」
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