この世界の創造者2
外から見た時には小さな櫓だったのに、いざ中に入って見ると中々に広い雑貨屋という感じだった。その大半は武器で書籍や食料はほんの二割程度だろうか。
商人はノアを椅子に座らせ、誠志郎に向き直った。
「さてと、換金はしてやる。だが、その前に聞いておく事がある」
「丁度良かった、俺も聞いておきたい事があるんだ。でも、俺の質問は後でいい」
商人は「分かった」と頷き、光の籠った鋭い双眸で誠志郎を見て問う。
「ノアに近ずいて何を企んでる?こいつはスチュアート家だが、その血筋から抹消されたんだ。身代金なんてものは貰えんぞ」
その質問に誠志郎は迷うこともなくあっさりと答えた。
「大金はいらない。欲しいのは少しの間生きていける程度の金と回復に長けた魔法使いだ」
商人は重たい空気感を漂わせて呟いた。
「俺はノアに荷物を盗まれて、それが返ってきたからケーキをご馳走してやるだけだ。その後は自由に生きれば良い」
誠志郎の発言を聞いた商人は、ため息交じりに「酷な事を言いやがる」と言った。その言葉が聞こえていた誠志郎は「なぜ酷なんだ?」問い返した。
すると、商人は近くの椅子に腰を下ろして語り出す。
「お前は何も知らねー様だから教えてやる。この世界には五つの国があり、国ごとに優劣がある。上から、エリティエ国。アルム国。ソリティア国。ディア国。そして、無名国」
「ソリティア国?」
「ああ、ここがそうだ。それで何で自由が酷かって話だったな。この五つあるうち無名国以外の四つの国は、世界が出来てから戦争で競い合っている。全ては創造者に認めてもらうためだ。その結果、今の所は話した通りの優劣という訳だ」
「戦争中で自由がないのは分かった」
「違う。自由があっちゃダメんだ。いいか?戦争に参加していない無名国の人間は判別が出来ない、その癖して創造者に牙を向けるイカれた国だ。つまり、どの軍や国にも属さない自由な奴、それは無名国の人間であると思われ四つの国から狙われるって事なんだ。四つの国対個人の戦いなんて結果は見えている。だから、この世界の人間は自由を恐れるんだ、分かったか?」
自由を求める者は創造者に牙を向ける人間だと断定されてしまう、きっとそこに真実など無く可能性があるか無いかだけで物事が進むのだろう。そして、実際に命を落とした人達がいるからこそ皆は自由を掲げなくなったのかも知れない。
誠志郎はこの話を聞いて、商人にするはずだった質問を変えた。
「創造者ってのは何だ」
「俺らも良くは知らない。各国のトップ達は年に一度、創造者の屋敷に招かれることがあるらしいが、誰一人としてその場でのことを公言した者はいない。噂では、黒いローブを身に纏っている時くがその程度の事しか知らん。そんな奴がこの世界の中心だってんだから虫唾が走る」
商人の機嫌がかなり悪くなってしまった頃、漸くノアが我に返った。そして、すぐさま誠志郎に詰め寄り怒鳴りつけた。
「創造者様を悪く言っちゃダメだ!全くなに考えてんだ!?」
十個近くは年が離れているであろう少年に怒られる誠志郎。素直に誤っている様だがどこか歯がゆさを感じている様だった。
そんな二人の姿を見て商人は再び、ダハハハと笑いながら機嫌を戻した。
「お前ら二人は本当に愉快だ。今日は俺の櫓で誕生日パーティーだ!」
商人が意気込んでそんな事を言うと、ノアは瞳に涙をためて大喜びしていた。
「やった!これでオイラも幸せになれる!さっきのお姉さんみたいに奴隷になれるかも知れない!」
「おう!そうだな、お前も奴隷になれるかもな!」
『は?ちょ、ちょっと、待てよ。聞き間違いか?』
誠志郎は二人の会話に疑問を抱いた。と言うよりも寒気を感じている様だった。奴隷になりたいと願う子供を初めて見たし、それを応援する大人も初めて見た。二人の表情には曇り一つとしてなく、奴隷になることが心からの幸せかの様だった。
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