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新たな出会い3

「この荷物はあなたのだよね?」

 天から女神の声が聞こえた。そんな馬鹿みたいな事を思いながら誠志郎は顔を上げた。視線の先にはボロ雑巾を縫い合わせた様な服を着ている金髪女性とその女性に捕まったであろう小さな少年がいた。


「お、俺のです!」

 誠志郎の声が大きかったのがいけなかったのか、彼女は驚いて一歩後ずさった。そして、少年を突き出して状況を説明しだした。

「この子があなたの荷物を盗るところ目撃しちゃったの。だから取っ捕まえて来たってわけよ。足枷のせいで少し時間掛かったけどね」

 そう言って、彼女は足枷をカチャカチャ鳴らして笑っていた。よく見てみると、彼女は素足で傷だらけだった。顔はとても綺麗で可愛らしいのに足や腕には多数の傷がある。おまけに枷をつけられているなんて、まるで奴隷だ。


 誠志郎が真剣に考え込んでいると、捕まった窃盗少年が暴れ出した。

「離せこの野郎!オイラの物を返せ」

「あ?」

 誠志郎は窃盗少年の言葉に反応して、気がつくとゲンコツを喰らわせていた。


「痛ってー!何で殴るんだよ」

 目が大きく、ボサボサの髪をした窃盗少年は涙ながらに誠志郎を睨んだ。すると、誠志郎は無言でもう一発ゲンコツをお見舞いした。

 それを見ていた彼女は少年を庇うように自らの体の後ろに隠し誠志郎を睨んだ。


「この子はまだ子供なのよ。暴力なんてやめてよ」

「子供だからってやっちゃいけない事があんだよ」

 誠志郎が正論で食いかかった、その時彼女の瞳に涙が浮かび、口を開いた。

「あなたみたいな、見るからに余所者の人にこの子の辛さが分かるの?生活していく事がどれだけ困難か…」

 彼女の涙を見て窃盗少年はポツリと呟いた。


「ごめんね、お姉さん。オイラの為に泣かないでよ」

 二人は静かに抱き合い、その姿を誠志郎はかつての自分とソリティアに重ねて見ていた。それでも子供の盗みを笑って見過ごすなんて事が誠志郎には出来なかった。


「おい、いつも盗みをして生活してんのか?」

 誠志郎の声に少年は怯えながらも答えた。

「違うよ。今日は特別だったんだ」

「特別?」

 少年は誠志郎の問いに頷きながら話し始めた。


「みんなは誕生日にケーキを食べるんだけどオイラは食べた事ない。誕生日に食うケーキってのは美味くて幸せになれるって聞いたから、オイラも今日食べれば幸せになれるって思ったんだ」

「お前、今日が誕生日か?」

「そうだよ。でも、もういいんだ。ケーキを食べようなんて夢みたいな事考えたオイラが馬鹿だったんだ」

 少年の頭を撫でる彼女を見ながらも誠志郎は考えていた。


 自分の荷物を盗んでケーキが買えるのだとすればこの荷物はそれなりに金になりうるのかもしれない。それに、この少年が換金方法など知っていそうだ。これなら金も作れるし、一つ目の問題が解決出来るだろう。

 何より、この子にはあのケーキの味を知ってもらいたくない。一人で食べる誕生日ケーキのあの味を。


「よし!」

 誠志郎の意気揚々とした声に二人は肩をビクつかせた。

「お前のケーキは俺が買ってやる」

「え?な、なんで?」

 少年が驚き、彼女も誠志郎を疑うように尋ねた。

「どういう気の変わり様ですか?」

「気なんか変わっちゃいない。盗んだ対価として俺に物の換金方法を教えてくれ。今回はそれで許してやる」

「では、ケーキを買ってあげるというのは嘘ですか?」

「嘘じゃない。嘘じゃないがそこのガキには知っておいてもらいたい」


 誠志郎の声が優しくなるのが感じ取れたのか少年は誠志郎の正面に立ち、目をまっすぐ見据えた。

「いいか?誕生日ケーキを食うことが幸せなんじゃない。誰かに祝ってもらって食うケーキが美味いんだ」

 誠志郎の言葉を聞いて少年は肩を落とした。

「じゃあ、オイラは美味いケーキが食えないんだな」

 落ち込む少年の肩に手を置いた誠志郎は、優しく笑いかけて呟いた。

「今日は俺がいるだろう。誕生日おめでとう…えーっと名前は」

「ノア。ノア・スチュアート」

「そうか、誕生日おめでとう、ノア」

本日もご一読頂きありがとうございます。


星をひとつ頂けるだけで書くための活力になります。


よろしくおねがいします。

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