不安と隠し扉3
もうどれ程階段を下りただろうか。その正確な段数は分からないものの誠志郎の靴底に小さな穴が開きだしたのだから相当な段数だろう。
それなのに、誠志郎は休むことなどせず黙々と歩いていた。時折、睡魔に負けて階段を転げ落ちたりもしているが、眠りにつくという選択はしなかった。
元々、誠志郎の目的は下の世界に行く事ではない。その事を本人がよく知っているからこそ休まざる終えない状況までは休む気がないのだろう。
今回の目的として、下の世界に辿り着くのは大前提に過ぎない。肝心なのは回復に徹した力の持ち主を見つけ出す事だ。そんなに都合よく見つかるとは到底思えない。だからこそ、削減できる時間は削減しておくのが効率的だろう。
足の裏にどれだけ豆を作ろうとも、睡魔で足元が覚束なくなろうとも進む以外の選択肢なんて初めからないのだ。だが、誠志郎の思考とは別に体の方はとっくに限界を超えていたようだ。
無理もない、誠志郎は時間にして三日もの間眠っていないのだ。
踏み出す一歩に力がなく、膝から崩れるように階段を転げ落ちた。
転がりはとどまるところを知らず、誠志郎の体に奥の擦り傷を残していった。当の本人は深い眠りについていて痛みなんてありもしてなさそうだった。
意識のない誠志郎はどこまでも転がっていき、やがて一枚の壁に突き当たる。
ドゴッ!と低い音が鳴り響き誠志郎は目を覚ました。途端に自分の体に傷ができていることに気がついてた。
「転げ落ちたのか…」
行き止まりの壁を触れながらもそう呟いていると、壁を挟んで外から声がしてきた。




