不安と隠し扉2
克二が机を完全にひっくり返すと、床には真っ暗な穴が空いていて階段のような段差が下へと続いていた。けれど、その闇はどこまでも広がっていて先などまるで見えやしない。
誠志郎は息を飲み一歩後退した。
「誠志郎よ、怖いか?」
その問いに対して誠志郎はいとも簡単に口にした。
「ごめん、結構怖いかも。俺はこの先に踏み入れてもいいのかなって」
すると、克二はワハハと笑い始め、誠志郎の肩を力強く叩いた。怖気付いてしまった我が子に頑張れと言わんばかりに、何度も何度も叩いた。
「ソリティアとワシの故郷はこの下にある。だが、そこにたどり着くまでにどれ程かかるのか、気温はどの程度なのか、酸素はあるのか。ワシは何も知らんし、知ってるのはこの屋敷を作ってこの地下道への階段を取り付けた創造魔法使いであるソリティアだけだ。だが、安心しろ、ソリティアは人が死ぬようなものは決して作らぬ。生きて下の世界へ辿り着けるだろう」
誠志郎は怖気付きそうになっていた自分を鼓舞して、地下へと続く階段に足をつけた。
微かにひんやりとしていてこの先も進まなくてはいけないという現実が心底怖かった。それでも、ソリティアをすくためには行くしか無いのだからと歩みを進めたのだった。
背には大きな荷物を抱えて震える足を一歩、また一歩と踏み出していった。そして、体の半分が地下へ入った時、誠志郎は背後を振り返った。
「じゃあ、行ってきます」
「ああ、ソリティアの命はワシがなんとか繋いでおく。だが、持っても二、三か月くらいだと思え」
「わかった」
「それと…お前のその力は下の世界では魔法と呼ぶ。こっちの世界ほどの希少価値はないだろうが滅多に見せるものでもないからな。況してや、その能力は十人十色だ、自分の能力を話すことも、出来ればせんほうがええじゃろ。あともう一つだけ…金に困るようなこともあるかもしれん、そんな時はお前の持ち物を商人に売るといい。科学はこちらのほうが進んどるはずだからな」
誠志郎は克二からの最後の助言を胸に閉じ込めにこやかに微笑み、暗闇へとその姿を消していいた。
そして、克二は自身の机を元の位置に戻した。ガチッ!という音がまたもや響き渡り、下の世界への入り口は再び閉ざされた。
「ソリティアよ。誠志郎はワシらの故郷へと向かったぞ。ワシは誠志郎に全てを話したがそれは断片的に教えたに過ぎない。この世界がそういうものなのか、その核心を突くような話をするには誠志郎はまだ子供過ぎるじゃろ?それに、この先起こりうる戦争に誠志郎は関係ないからな…」
克二が独り言のように呟き、その声は静夜に呑み込まれていった。
気が付けば、屋敷から光が無くなり次の日には屋敷からソリティアと克二の部屋が無くなっていた。
そして、後にこの呪われた屋敷は肝試しの心霊スポットとして活用されるようになっていった。
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