別れの旅立ち3
屋上に取り残された辻道と八浜美丘はいくつかの言葉を交わしていた。
「誠志郎が東地区を出るって話本当だろうけど、何か隠してたよね」
「うん。問い詰めはしなかったけど、どこに行くのかも言わないなんておかしい」
辻道は八浜美丘の意見に頷きながらも一週間ぶりに誠志郎にあったときのことを語り出した。
「俺さ、久しぶりに誠志郎を見た時人違いかと思ったんだ。妙に大人びてて、幾つもの覚悟を背負ったような強い目をしてた。そんであの体質?力?の事聞いて確信したよ。あいつは何か危ない橋を渡ろうとしてるんだって」
「根拠はあるの?」
「あいつの生活してた家は、あの呪われた屋敷なんだ。これだけでも根拠にならないか?」
八浜は驚きなど飛び越えて空いた口が閉じなくなっていた。それほどまでに、誠志郎の住む屋敷は有名で恐れられているのだ。けれども、辻道は満面の笑みで八浜美丘に言った。
「あの屋敷には分からないことが数多くある。でもさ、それ以上に愛のある家族なんだぜ?誠志郎の家族はよ」
少しばかり曇っていた八浜美丘の表情に光が差した。
「そんな気はしてた。彼の魅力はきっと彼だけの物じゃないから…。さーて、私が彼に告白できるのはいつになるやら」
「ん?」
辻道が首を捻り八浜美丘と目を合わせた。
「え、八浜氏は誠志郎が好きなの?」
今日一番の驚きを見せている辻道を前に八浜美丘は頬を赤らめ可愛らしく微笑んだ。
「彼に言ったらタダじゃ済まないからね?んふふ」
こうして、誠志郎の知らぬ間に去って行った筈の春が早くも再来しようとしていたのだった。
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