第3夜 おっちゃんとの出会い
「考えろー、考えろおれー」
おれはあの後、おっちゃんの家に連れてってもらった。今はそこのトイレを借りている。
つまり今は用を足しながら考え事をしている。
「ここは、夢で見た世界だよな……?」
確かに、ここは夢で見た世界と同じなのだ。今のところは。
そして、お腹の痛さが尋常じゃない。現実的すぎる!
お腹の痛さに冷や汗を流しながら、おれは更に思考を巡らせる。
一般的には、夢と現実の区別を付けるには頬をつねって痛いかどうかを見ると言うが。
ここまで痛いと感じるということは、やはりおれはこの世界に存在している、という事になるのか……?
「これが異世界転生と言うやつか!?
……せっかく人生をやり直せるんだ、魔王にでも勇者にでも何でもなってやるー!!」
おれはそう言うと、頭に手をかけて、カッコつけた決めポーズを取りながら続けた。
「深淵より来たる、大魔王山本、か……。フッ、悪くない。」
ここでおれは我に戻る。
「待て待てぇー!これじゃお腹痛いのに加えて、ただのイタい奴じゃないか!痛いとイタいのダブルパンチじゃねぇーか!」
山本は心に20のダメージを受けた。
「ま、まぁトイレの中だし誰も見てないよな!これからは中二病発言は気を付けよう、うん。」
そう言いながらおれは頷き、勢いよくトイレのドアを開けて出た。
バタァーンっ!
その瞬間、大きなモノにトイレのドアがぶつかった事に気がついた。
ちらりと下を見やると、おっちゃんがいた。
「お、おいおっちゃん……何してんだ?」
「い、いや……何か面白い独り言が聞こえたからトイレのドアに耳当てて聞いてたんだよ。」
「は!?」
「で、でも!見てはないから!許して下さい大魔王山本様ァ!」
「や、やめろォ!」
おれは顔が赤くなり、蹲った。
あぁ、もう……この世界ではまともに生きようと思ってたのに……。
「まぁ、人生生きれてちゃこんな事もあるさ。受け流していこうぜ!」
おっちゃんはそう言うと、握手を求めてきた。
いや大体の原因あんたなんですけどー!
でも、まぁ、なんだ。やっぱり良い人そうだしな。ここは握手に応じることにしよう。
おれは、笑顔でおれを見つめながら握手をするおっちゃんと、照れくさそうに下を向きながら握手をした。
そうしておれたちは握手をし、この一連の流れから…少しばかり、ほんの少しばかりだと思うが、おれたちの間に絆が出来たように思えた。
あれっ?絆ってなんか重い!?
第3夜以降は一応書き上がってはいますが、少し修正してから投稿したいと思います。