第七話 管理者が現れた!
え、説明なし?あ、無いんだね。わかるわ。どうせこのロボ倒せ!でしょ。あからさまに武器付けてあるもん。
でも大砲が付いてる様に見えるのは目の錯覚かな?違うね。照準機の赤い光がキョロキョロしてるし見つけられたら大穴開けられるのは自明の理。しかも俺よりでかい。んで足はキャタピラ。副砲二台。うん、ロボっていうか戦車だね。戦車。これなんて無理ゲー?何とか死なずに済む道は…あった。戦車の上。上に行けば主砲は勿論副砲二台も届かない、はず。まあ正面切って突っ込むより遥かにいいと考えよう。
「戦闘形態移行。」右腕が再生。
でもまだ待つ。この鎧を囮にして後ろに回る。胴鎧だけ付けて後は残しておく。
まあ来るよね。派手に金属音鳴らしたし。近くの岩の後ろへ。
見えないけど一か八か!上へ! もうちょい後先考えた方が良かったかな。
嫌、考えた方がいいに決まってる。
戦車なんだから機動性も良い事に気付けたかもしれないのに。何バックしてくれてんの。
全然届きそうも無いしピッタリ照準付けられてるし。
着地。避ける。まあ当然当たる。鎧意味無え。でも動く。今生の体は特別製。左腕とか色々千切れても動ける。今考えた第二策。もう折れた棒だけど役に立てよ槍!主砲に投げる!刺さる事は期待出来ないが主砲の中に入れば別。自爆しろデカブツめ。そして流石に副砲二台は硬くなれば大丈夫だと思う。…あれ?いつまで経っても自爆しない。代わりに俺に当たったのは棒。いや、槍だった物。そして「当たった」じゃない。「刺さった」だ。
砲塔旋回で投げてきやがった。しかも地面の割れ目に槍が挟まって抜けない。これで撃たれたら終わる。
でも…諦めてたまるか。強引に槍を抜く。左腹が無くなったが関係ない。
「? 理解不能。知的生物認定を解除します。」
知的生物認定?お前にそんな事を決める権利は無い。何様だ。機械の分際で。
俺の価値は俺が決める。俺の価値を勝手に決め付ける奴は敵だ。
≪熟練度が一定に達しましたスキル≪太古の本能≫を取得しました≫
≪裏人格capensisを発見。操作権限を一時譲渡します≫
≪熟練度が一定に達しました。レベルが1上がります≫
≪封印中のスキルを解除。管理者権限を一部譲渡します≫
≪熟練度が一定に達しました。スキル≪怒り≫を取得しました≫
≪怒りによりスキル≪怒り≫を発動します≫
?? 身体が動かない。いや、動いてる。俺じゃない誰かが動かしてるだけだ。
さっきまで怒っていたのに、今は何も感じない。「俺」が戦車の砲塔を握力だけで握り潰している。
このまま行けば勝てるだろう。だが、これは俺じゃない。俺の体で暴れてるだけの他人だ。
俺を勝手に使うな。怒りがみるみる無くなっていく。それでも、怒りが収まらない。
怒りが湧き出る方が無くなるより早いから。それだけ怒りが強いから。
遂に戦車が動かなくなった。獲物を取られた。さっき迄あれ程死にそうだったのにそんな思いが湧いてくる。だからどうした。それがどうした。何があろうと俺を使った奴がいる。そいつは「敵」だ。
≪管理者からコンタクトを受けました≫
「あーあー。聞こえますか?あ、前ですよ前。あ。気付きましたね。」
「スマホ!?どういう事だ。」
「簡単な事です。私達が貴方達を「異世界転生」させたから、です。」
「達?それに転生って事は死んでるのか?」
「ええ、全員ね。ちなみにこっちでは貴方達の死因はガス爆発になってます。まあ、本当の事を言えば全く違うんですけどね。」
「で、お前は誰で、何故スマホが此処にある?」
「私は貴方達の世界の管理者で、スマホは私が空間転移させたから。あ、ついでに言うと貴方とお友達が見たあのオーパーツ達はこっちの手違いです。で、それを潰してくれた貴方にプレゼントがあるんですよ。」
「プレゼント?」
「そう。この悪魔ノ書の中から一つ選んで下さい。能力を十分の一程度の強さで貴方に送ります。じゃ、決まったら連絡して下さいね。」
≪通信が切断されました≫
何だったんだ?恨み言言おうと思ってたのに突然来て突然帰ってたな。
取り敢えずこの「悪魔ノ書」を見てみよう。
悪魔の名前がずらりと並んでる。まさか、これ全部目次?まずは聞いた事のある方から。
ない。ルシファーだのサタンだのベルゼブブとかが見当たらない。
地道に便利そうなの選ぶしかないか。と探したいけれど、此処にいるのは得策じゃない。
って事でスマホを袖に仕舞う。
まずは外に出ないと。あとシェイスも探さなきゃ。
道は一つしかない。なら進む。出来る事ないし。
試練の克服者を確認。脱出機能を作動します。10秒以内に光っている円の内側に入ってください。脱出します。
お、こりゃ僥倖。よいしょっと。
数秒後。脱出機能が作動し、床が上にゆっくりと動き始めた。
でも、やっぱりかなり古いエレベーター。しかも手入れされてない。
しかも魔物が攻撃してきた。そりゃ停まる。結論。自分で壁を登るしかない。
如何にハイスペックな魔族の身体でもかなり堪える作業。できないわけじゃ無い。
時間と安全が有れば。絶えず魔物が襲って来る上、壁は垂直。普通は登れない。
まあ普通はの話。登れるんだけど。地上までおよそ50メートル。到達予想時間、後3〜4分。
後ろに気をつけて、よっ!グチャ。魔物が潰れる。
ずっと思ってたけど、魔物馬鹿じゃない?なんかもう壁に近づいて突進避けたら壁に当たって死ぬ。
と、そんな事言ってたら地上に到着。思ったより早くついたね。
「当然でしょう。私が腕によりをかけて改ぞ…ゴホン。強化したんですから。」
「なんだお前か。」
「まだ2回しか話してないのにお前呼ばわりですか。酷いですねえ。それで、欲しい能力、決まりました?」
「いや、まだぜんぜ「まあずっと見てたから決めてないのは知ってるんですけどね。後、面白くない能力は消しましたから。結構少なくなってるはずですよ。」
「いや、それ普通こっちに確認取ってからするよね?」
「だってめんどくさかったんで。めんどくさいの嫌いなんで。こっちは久々に面白い玩具を見つけて退屈から解放されたのでそれ以外やる気出ないんです。わかる?この気持ち。」
なんかだんだん言葉遣い崩れてきてるしめんどくさいとかふざけんな。
「まあそれは置いといて、連絡する時はスマホで電話してくださいね。」
ブツッ…ツーツー
切れた。まあ嫌な奴からの電話があっただけで他は何もなし。で、どこに行けば帰れるのかが分からん。
右に氷のスロープ(なぜか残骸)があるからおそらくスタート地点と見て、大体の方向が分かった。
で、確か…あった。シェイスが俺を引っ張って来たそり。これの跡を辿っていけば村に着くはず。でもシェイスを置いて行くのはちょっと良心が痛い。どうしたものか。
≪熟練度が一定に達しました スキル「集中LV1」を取得しました≫
あ、新スキル。早速解析。
「魔力を消費し、一時的に思考速度を上げる。また、消費魔力と発動時間は比例する。」
お、おお。よく分からんかったからちょっと使ってみよう。集中。
特に変わった所は何も…動けない?いや、物凄く遅いけど動いてる。全部。
草の動き、自らの動き、硬化の経過もよく分かる。だんだん灰色になって、それから黒くなってく。
あ、なんかクラッときた。魔力の限界か?解除。自分を解析。
魔力が半分ぐらいから十分の一ぐらいになってる。まあどういうスキルかは分かったし良しとしよう。
なんか寒い。もしかしてだけど魔力の使いすぎ?そんなわけ無いと信じたい。
でもやっぱり寒い。眠い。欠伸を噛み殺しながら木のうろに入り込む。そこら辺に倒れるより遥かにマシだろう。ここが動物の巣とかじゃ無ければの話だが。一応硬化。
そこで…俺は永遠にかもしれない眠りについた。