第六話 VS未知の敵
「こんな所でまごまごしてる場合じゃない!行くぞスティング!」
「分かった!今のうちに…[戦闘形態移行]!」あれ?力が抜け…でも鎧が出て来たから、それを着れば。
ヒュン!飛んできた。しかも次々に。おや、力が溢れ出て来る。戦闘形態の名は伊達じゃないな。
「俺も…[戦闘形態移行]…獣形態」
「もうすぐだ。先制攻撃を仕掛ける。3、2、1![氷の鉤爪!]」
「…何も音がしない。本当に此処なのか?」
「その筈…何だが。血糊もあるし。いなくなったのか?」
「多分。けど、何か悪い予感がする。警戒して進も…すまんシェイス。まだ此処にいたみたいだ。」
目の前にいる亀の甲羅、光る怪しげな紋様、三本の足を持つ機械が、俺達二人を凝視していた。」
「侵入者ヲ発見。タダチ二排除シマス。アサルトモード、起動。変形開始。」
亀、と言うのは間違いだった様だ。甲羅の中心部がせり上がり、出てきた柱からは剣を持った腕が出てきている。おまけに紋様の光が赤黒くなり、目?と思われる部分が俺達二人を追跡している。
「解析完了。攻撃開始。守護絡繰兵13-273、守護絡繰兵剣装起 動。 」その言葉と共に剣が蒼く光り、形状が変化した。
そしてその形状のまま、剣で岩壁を削りながら俺に向かって来る。
ギャリィンッ!手甲に小さいヒビが入る。
「危ない!」
■■■ ■■■ [影拳乱打]!
俺の影から無数のの黒い拳が突き出て奴を岩壁まで吹き飛ばす。
「ありがと。シェイス。」
「切り札を使う。準備するから引き付けといてくれ」
「分かった。どれぐらい?」
「三分で終わる。」
つまりやる事は一つ。奴の攻撃は速い。が、攻撃力はさっきの攻撃で低いのが分かっている。硬化すれば十分耐えられる。せっかくだからあれを使って見ますか。
「[封印の瞳]」力が抜ける。軽い目眩がするが、倒れ込む程では無い。が、2度目は無いだろう。奴は?
止まっていた。空中で、剣を振り回している体勢のまま。だが、表面を波紋が動いてるのが怖い。急に動きそうだ。だんだん波紋の動きが速くなっていく。今の内に攻撃。が、殴っても殴っても空中で動かない。しかし、楽勝タイムは唐突に終わった。突然表面の波紋が砕け、奴の身体が吹き飛ぶ。その後、最初の速度を上回る速さの攻撃を仕掛けて来た。そして、速いという事は威力も強い。簡単に装甲が砕け、手首から先が切り飛ばされた。運良く奴の刀が岩壁に食い込んだので追撃を受ける事は無かったが、もしも追撃を受けていれば終わりだっただろう。が、そうそう喜んでばかりもいられない。もう既に刀は半分近く岩壁から抜けかけているし、もう一本の刀は健在だ。それに、奴の紋様の一部が光を増して来ている。でも、何もしなかったら今度こそ間違いなく終わるだろう。斬られるのを覚悟で突っ込む
しか無い。
「[硬化]![近接格闘]!」
奴に既に斬られている右腕を更に斬らせる。こいつが機械なら何処かにセンサーがあるはずだ。センサーを塞げば視覚を失うはず。そして、一番の近道は…奴に溢れでる血飛沫を浴びせる。上手くいったようだ。奴は俺を見失った。が、戦闘能力を失った訳では無い。刀を闇雲に振り回しながら四方八方に攻撃を繰り返している。このままでは目隠しが取れるのも時間の問題だ。だが、問題はない。
俺には信頼できる仲間がいる。
■■■ ■■■ ■■■ [牢獄]!
■■■ ■■■ ■■■[拘束]!
氷の壁は奴を包み込み、氷の鎖は奴の体を絡め取る。奴は腕をばたつかせて抵抗しているが、結果は変わらない。幾重にも鎖が奴を絡め取り、分厚い壁が完全に包み込む。それからも奴は抵抗をし続けたが、遂にはプシュウという気の抜けたような音と共に動きを止め、紋様の光が消えた。
「ふう。これで一先ずは一安心って事かな。」
「ああ、恐らくは、な。」
「でも、これだけ強かったんだから何かあると思ったのに、何もなしか。」
「確かに、何かあってもいいな。……!スティング、この壁、迫って来てる!」
「壁が? 何を…迫って来てるな。しかも出入口が塞がれている。まずい。」
少しずつ、少しずつ、壁がゆっくりと、だが確実に迫って来ていた。
しかも 光っていた苔?が剥がれ落ち、速度が速くなる。
「これ、壁じゃない!蛇だ!この洞窟の主、俺達を絞め殺す気だ!」
「逃げ場が無い!」
「この壁破るぞ。スティング。」
■■■ ■■■ ■■■[影剣刺突]
しかし、無情にも影から繰り出された剣は弾かれ、、折れてしまう。
「壁は破れなさそうだな。じゃあ後は…上か下。」
「上に空間があるか分からないが、下には通路があるはずだが…ここを通過しないと上には行けない。」
「結局上しか無いの?」
「いや、手段はまだある。だが、光が必要だ。光苔の破片を集めてくれ。」
「光苔?あのちょっと光ってる奴?」
「ああ。強い衝撃を与えると3秒程強く光る。」
「1、2、3…5個あれば良いか!?」
「充分だ。叩いたら俺に触れろ。」
「? 分かった。」
破片を思い切り殴り付ける。そして、シェイスの肩に触れた直後、背後から閃光が走った。
「影渡」
シェイスの言葉を聞いた直後、視界は暗転し、謎の黒で染まった空間に引きずり込まれた。
遠くに光が見えているが、水の中にいるような感覚で素早くは動けない。光までたどり着くまでどれだけかかるだろうか。そう考えた正にその時。俺の…正確にはシェイスの身体が光に引っ張られる様に動いた。当然、その肩を掴んでいる俺も引っ張られる。
うおおおっ?痛っ!頭ぶつけた。
こんなことになるとか聞いてないんだけど。文句言ってやろ。
あれ?シェイスいない。何処に…まさか先に?
まあ前以外行き止まりだから前しか無いんだけど。
俺も進もう。朽ちた扉?にボタンがついてる。ポチッとな。
ヴィィィィィ!
「今こそ、貴方に試練を与えます。そのままお待ち下さい。」
え?何で?何故?天の声(仮)の時はは気にならなかった。そういうものだと思っていたから。
でも、今の音声は日本語だった。同胞達は魔族語を話していたのに。つまり、
≪熟練度が一定に達しました。スキル「予測LV1」を取得しました≫
うるさい。朽ちた扉という事は、タイムスリップしているんじゃ無いか?
とんでもない未来に。歴史上何度かある。神隠し、未来人、マヤの未来予言書。タイムスリップだとすれば、全ての辻褄が合う。説明出来ない事も、俺のいた時代より遥かに進んだ技術があるなら別。
まあ、いいか。今に関わることでは無い…はず。
それより試練って言ってたな。内容は?