魔王現る
おはようございます。清々しい朝ですね。今日はお家に帰る予定だった日です。
それなのに今何故かほかのむらの方々とトロッコに乗って何処かへ向かっています。
どうしてこうなったんだっけ。そう、確か二時間ほど前。
「おーい。起きろ。起きろ!」
「え、あ、はい。どうかしましたか?」
まあこんな感じで起こされて。
「知らん。でも父上が呼んでる。」
「父上?」
「早くこい。」
呼ばれて。
「事情が変わった。うちのと一緒にあれに乗ってけ。詳しいことは着いたらわかる。」
乗せられて。ガタンゴトン言ってるトロッコに揺られてはや一時間半。
しかもその間同乗者の確か…クリス君とは名前以外何も会話なし。
いやー気まずいったらありゃしない。なんか怒ってるし。なんかしたっけ。
暇潰しに解析してみたら怒られるし。分かった事なんて同じ魔族だって事と名前、『癇癪持ち』って言う称号のみ。あとは見た目でわかる情報。身長。とにかくちっちゃい。150センチくらい?
そうこうしてる今も横から歯軋りと敵意が横から。
最初はビクビクしてたけどもう慣れた。世の中には関わらない方がいい事もあるんだ。
「おい!お前!聞けよ!」
「何?」
「何?じゃねえ!突き落とすぞ!」
おー怖。こんな豆粒の何処にそんな怒り溜め込んでるんだか。
「もうすぐ着くぞ!」
何処に?まあ十中八九あのお城だろうけど。
うん、あれだわ。レール繋がってる。
到着。
「前へ進メ。」
石像が喋った?まあ異世界だもんな。
言われた通り前へ。
いっぱい。いっぱいの魔族の子供。
それが広場に並んでる。数千人はいるんじゃない?
みんな城を見てる?いや、ベランダ?あ、何か出て来た。
「っ!」
肌が痛い!針でチクチクされてるみたい。
「頭が高い。敬礼せよ。」
言われなくとも。立つのは絶対に嫌だ。何これ。威圧感的な?
「お前達に力を与える。光栄に思え。」
■■■ [選別]
あとは任せたぞ。」
「はっ。」
あ。魔王(仮)いなくなった。これで一息つける。代わりに来た人はあんま怖く無いし。
お?光?赤青黄色、紫、緑、白。計六色。あれがどうかしたのかな?
ん?紫だけ俺の方に来てる?ちょっ来るなよ紫!いや、落ち着け。
周りにこんなに魔族が居るんだぞ。俺の可能性は限りなくゼロに近い。
それにあんな特別っぽい物が俺のとこに来るわけ無いさ。凡人は退散しよう。
いや追ってくんなよ紫!
分かった。もう分かったよ。俺のこと狙ってる!いいよ!ずっとそこでクルクル回ってろよ!
「えー。今光球に選ばれた者以外はゴーレムの案内に従い、兵舎へ行くように。」
バイバイ選ばれなかった人たち。もう二、三十人しかいないから広場がずっと広く感じる。
それにしてもこれからどうすれば?取り敢えず他の人を観察。
知ってる人は居な…居たわ。クリス君とシェイス。他は居ないね。
これからはどうするのかさっぱりわからん。まさかあのバルコニーにいる人が指示するのか?石像もどっか行ったから多分そうだけど…結構遠いよ?って消えた!
「コホン!貴方達は未来のこの国を担う幹部となることが決定いたしました!……あれ?
イエーイとかやったーとか無いんですか?」
何故か後ろにいるのは置いといて未来の軍団長とかドユコト?説明プリーズ。
「まあついて来てください。詳しいことは行きながら話しますし。」
付いて来い言われたら付いてくしか無いか。
「やだ。何で知らないおっさんについてかなきゃならないんだよ。」
うわぁ。ハッキリ言っちゃった。おっさん固まったよ?
■■■ [痛み]!
「ゔぁあああああ!」
急にどうした奇声あげて!めっちゃビックリした。まあ原因は分かってるけど。
それでも人が隣でいきなり奇声あげたらビックリするでしょ。
「フン。」
この人も恐ろしい人だったか。
それはそうとして今どこに行ってるんだ?お城は通り過ぎたし。城下町っぽいとこ…いやそのまんま城下町か。とは行ってる方向違うし。もう唯の草原だよ?
「ここら辺にしますか。」
何を?ここら辺で何するの?
「はい。皆さん。目を閉じてください。自分の武器を取ってくるんですよ。」
流石におっさん呼ばわりした人がああされたから誰も逆らわない。
「はい。いいですよ。」
全く違う。居た場所も。メンバーも。俺一人で、目の前に…籠手を置いた台座。
あ、あと紫の光。何か籠手に吸い込まれたけど。自分の武器ってあの籠手かな?
まあ多分アレだよね。じゃ。でも籠手って武器か?
「痛っ!」
電流?的なもん流された。じゃあ硬化して。
「痛っ!」
またかよ!まあだいぶマシになったし。根性で行くしか無いか。
吸ってー、吐いてー。
「せいっ!」
よし。取れた…けど前にいた場所へ戻るわけじゃ無いし。あー。そう言うことね。
何あいつ。ゴーレム?まあゴーレム的な物が出てくる。取り敢えず取った武器は使わなきゃね。
サイズはピッタリ。防御範囲は肘から指の付け根まで。よし、把握。
さて。イメージ通り鈍重なパワー型ゴーレムに殴る蹴るは通用するか?鉄の塊に殴る蹴るか…
でもこの籠手の謎の力に期待しよう。
「ふんっ!」
ムリ。ヒビしか入らん。でもクリア不可では無い。胴体にはヒビしか入らないなら。
足。足。足。右足に集中攻撃。お?球?取り敢えず砕く。と同時にゴーレムが転ぶ。
いや、倒れたんだな。右足が『無くなった』から。これは攻略法分かったぞ。
多分アレはゴーレムの核で、あれは足の核。それが砕けたから足も砕けた。
つまり核を一つずつ壊してけばいつか死ぬ。右手硬化。次は右手壊すか。
やっぱ石より硬いな。砕くんじゃなくて抉る方向で行くか。
ふふふふふ。倒れてジタバタしてる石の塊なんてボーナスステージだ…え?
「がぁっ!」
痛った!しかも動けない?体から出ちゃいけない音が出てる!何も見えねえ!
「がっ!ごっ!げっ!」
あー、概ね理解したわ。あいつが、俺を掴んで壁に叩きつけて、投げた。
被害甚大。まああんなモンスターに投げられたらね。右目見えねぇ。しかも左手が動かん。
そして大量の血。内臓とかかなりヤバイんじゃない?一つだけ無事なのは硬化してた右手のみ。
しかも状況的に最悪。あいつ右足一本で立ち上がってこっち来てる。遅いけど、確実に来てる。
俺があいつに勝ってるのは硬化してる時の防御力とスピードだけ。あ、知恵も。
じゃあ止まってられない。スピードを活かせ。硬化は動いててもできる。
♢♢♢
ほーれほれほれー。そんなのろまな攻撃当たらんぞー。
はいっ、最後のコア破壊。何か…油断せず攻略法に従ってたら結構余裕だったな。
これで終わりかな?じゃあ出口出口。
「おっ!あれか。」
ご丁寧にexitって書いてあるし。
「よっ!」
♢♢♢
「あ、戻ってきましたね。武器も取れている。貴方は二番目ですよ。ええっと…スティング。」
「あ、はい。」
「さては。貴方未だに状況が飲み込めていませんね?」
「はい、まあ。」
「じゃあ簡単に説明します。まあ特別な指導を受けて軍団長だとかになります。ま、少しすれば状況が飲み込めてきますよ。取り敢えず、これが貴方の部屋番号とそこまでの地図です。あ、鍵はこれです。」
「ありがとうございまーす。それじゃ。」
「くれぐれも迷わないように注意して下さいね。」
「? はい。」
えーと、ガーゴイルの広場に行き、右に曲がる。次は突き当たりで左折。階段を登…どれ?
あ、部屋番号か。0813ね。ここは違う。ここも違う。お。0817番。なら。
♢♢♢
見っけ。鍵穴も発見。でも…ふた…つ?細かい説明抜けすぎじゃない?しかも入んないし。
あ、右のに入った。ガチャッとな。
「ん?」
服?の入った袋とメモ。ほう。これによるとやっぱり袋の中身は服。
後はカード…学生証とか身分証明書みたいなもんか。それと…十分に休息を取るように。か。
じゃあ眠いし寝る。おやすみ。