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魔王な私の世界録  作者: ヴァルキリァ
第四章 ②
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エピローグ


 淡い日光の中、わっと欠伸をして私は自室の寝台(ベッド)から起き上がった。

 隣で丸まりながら眠っているスィフィの頭を優しく撫でる。長い髪が指を伝って落ちるが、彼女はまだ夢の中のようだ。


 世界崩壊の危機からずいぶんと日がたった。結論からいうとリフィアの箱庭は存続をしている。


 この世界を再生させる条件の一つである『世界を管理する役目を持つ神を配する事』という条件に当てはまる者はスィフィしかいなかった。

 彼女はアバイドワールを生まれ変わらせたいと願い、そしてそれに答えるように世界は少しだけ姿を変えた。



 新アバイドワールは『祀族(しぞく)』という種族と、その地形に祀族領地(アラバスター)が加えられた。

 魔族領地(ヴァーミリオン)に隣接したその領地内には数多くの遺跡や神殿が出現し、祀族の歴史は遥か古から存在したということになっている。



 ただ、まだ謎は多く残されている。その一つであったのが、タンジェリーンの恋人であったリタニの存在だ。

 これは後に彼から聞いた話だが、リタニは亡くなった後もずっとタンジェリーンがやって来るのを待ち続けていたという。

 いわゆる霊体であったという彼女はリフィアの異変に気付き、最後の力でスィフィをアバイドワールへ逃がしたという。

 彼女はそれを語り終えると、別れの言葉を残して消えてしまったそうだ。

 それからタンジェリーンはいち早く天空城へ駆け付けて、ハーティと共に私を救ってくれた。


 この話を聞いた後、リタニにもなんとか感謝を伝えらないかと、私は墓を作って彼女の供養をした。それぐらいしか出来なかったことが悔やまれる。



「ふぁ~」

 そこでスィフィが欠伸をしながら起き上がってきた。私が挨拶して頭を撫でると、彼女は眠気眼をさすりながらコクリと頷く。

 寝台(ベッド)端から足を投げ出すとスィフィが太股に寝転がろうとするので、先に棚上のブラシを手にしてから彼女を膝に乗せた。

 薄桃色の髪をとかしながら、私は数日前のことを思い出す。


 先日、ミーティアから手紙が届いた。彼女が実家の整理をしたところ母親であるカリーナの日記が見付かったというので、その内容を書いて送ってくれたのだ。

 そこには娘、息子の成長記録も含まれるが、意味深な文面も多く残されていた。古い物になると文字がすり切れて読めない部分があるらしいが、そのほとんどが勇者の話であったという。


 その一部によると、伝承の主人公はカリーナ自身であるらしい。そして自分は祀族の末裔であると記されていたそうだ。

 それは彼女が生み出した空想物語であるのか事実なのかは、今となっては知る術がない。


 これは予測に過ぎないのだが、異空間にカリーナが現れたのは、何らかの形で彼女が創造神に関わっていることを暗示しているのではないか……。


 そんなことを考えながらスィフィの髪を結ってあげていると、部屋の扉を叩く音がしてラヴィナが顔を出した。


「――おはようございます、トリ様。あの、本日は早朝会議でございますよ?」


「うわっ! 早く行かなきゃまたシャーに怒られる」


 シャーは、私たちが帰還した後、無事に目を覚ました。まだ包帯がとれないが、私を叱り上げるほど元気なのでもう大丈夫だろう。


 私はというと、自ら(まつりごと)に参加すると宣言をした。新米魔王は誰もがより良く暮らせる世界を目指して、足を踏み出したばかりである。



「ラヴィナ、スィフィをお願いね」


「はい、いってらっしゃいませ」


 用意してあった簡易な着衣(ドレス)に着替えると、彼女の返事を聞いてから急いで部屋を飛び出した。


 廊下を進んでいると、ふっとスカートの裾が捲れ上がる。奥の窓の一つが大きく開かれて、そこから強い風が吹き込んでいた。


 何かに導かれるようにそこへ近寄る。窓から外を覗くと、天高く上がった太陽の光が降り注いでくるのが分かった。

 私は目を細めながら、遠い地平線へと思いを馳せる。


 アバイドワールにはまだ見ぬ大地が広がっているのだ。それは私の可能性を示唆しているかのように、共に生きながら成長し続けている。


 私は澄んだ空気を胸一杯に吸い込んでから、それを背に謁見の間へと足を踏み出した。

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