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容姿端麗、文武両道な生徒会長は俺のストーカーではない(願望)7

 ようやく授業が終わった。

 すぐ帰ろう。今帰ろう。真っ直ぐ帰ろう。


「守谷。この後生徒会室にこい」


 帰ったら何をするかな。


「聞こえないのか守谷。この後生徒会室までこい」


 最近晩飯がインスタントで済ませてたから料理でも作ろうかな。その方が安上がりだし。


「どこに行くの守谷君?」


 扉開けたら雫とこんにちは。


「あ、しずーー松本さん。昼はありがとう。今度お礼させて。じゃあ、俺は帰るから」


 横切ろうとしたが、雫は進路を塞ぐように体を横移動させる。


「松本先生が呼んでるよ?」

「そうなんだー。俺イヤホンしてたから気づかなかったよー」

「ほう、イヤホンをつけてるようには見えないのだがな」


 雫の笑顔といつの間にか背後にいる松本先生の声が怖い。流石に言い訳が苦しすぎたか。


「いや、そのー……あ、用事があるのを思い出したので」

「行くよ守谷君」

「ぼさっとするな」


 用事があると言ったのに、二人で両腕を掴み、そのまま俺を何処かに拉致していく。

 当然だがその光景を周りに見られるわけで……。


「は、恥ずかしいから離して欲しいです」

「「ダメ(だ)。絶対逃げるでしょ(だろ)」」


 信用ならないのもわかるけど、流石にこれはキツイ。

 ようやく生徒会室に着くやいなや扉を開ける。

 中には他の生徒会メンバーが勢ぞろいしていた。

 これから俺の身に何が起こるのだろうか。


「廉君! どうして君がここに!?」


 俺との出会いに興奮した綾先輩が一目散に両腕を広げて俺に向かってくる。

 しかし、雫がすかさず間に入った事で綾先輩は少しだけ不機嫌になったものの両腕を下ろして進行をやめてくれた。


「あのー、杏花さん? 私達に話とはなんでしょうか」

「うん……早急に」


 何故集められたのかわかっていない様子の副会長の南條先輩と書記の小野寺先輩。

 かくいう俺も何故呼ばれたのかわかっていない。ただ、嫌な予感だけはしている。


「話と言うのは……」


 松本先生はビシッと真っ直ぐ俺に向かって指を突きつけた。


「こいつを生徒会の庶務にする。みんな仲良くしろよ」


 …………は?


「はあ!?」


 了承なく決められた事に思わず声が出た。


「ふーん……」

「あらあら」

「本当か!?」


 俺ほどではないが驚いている生徒会(ただし、綾先輩の顔は満面の笑み)。

 雫はこの事を知っていたのか、表情一つ変えない。


「待ってくださいよ」

「なんだ、言いたい事でもあるのか?」


 あるに決まってるでしょうが。


「前にも言いましたけど、俺は入るつもりはありませんよ」


 これで三度目の断りだが、いい加減に諦めてほしい。そもそも人よりも優れた所もないのに。


「廉。落ち着いて」


 まさか雫が俺を落ち着かせにくるとは思ってはなかった。


「これは廉のためでもあるの」

「俺の?」


 俺が生徒会に入ったからって、俺に何の恩恵があると言うのか。


「綾ちゃんはあなたが好き。ここまではいい?」


 いいえ、と言いたい所だが首を縦に振った。


「え、綾ちゃんこの子が好きなの?」

「やっぱり……」


 副会長はどうやら知らなかったようだが、書記さんは気づいていたらしい。


「……綾ちゃん。これから廉に関わらないように出来る?」

「無理だ」


 即答で断言された。

 ここまでくれば雫が何を言いたいのか嫌でもわかる。


「つまり、廉がこのまま普通に生活をすれば間違いなくあなたの近くに綾ちゃんがいる事になる。もちろん、周りに人がいる中でもね」


 そうなってしまえば俺はほとんどの生徒から注目され、安心した生活を送れないだろう。


「そこで廉が生徒会に入ってくれればーー」

「生徒会役員っていう名目で他の生徒に納得させる事が出来るし、綾先輩の行動が他人に見られる心配は減る」


 雫は力強く頷く。

 間違いなく現状よりかは過ごしやすいだろう。

 雫と松本先生は俺のためにここまで考えてくれてたとは思わなかった……って、感動しそうになったけど、


「そもそも綾先輩を何とかすればいいのでは?」

「私は応援派だし」


 松本先生は頑なにそう言う。

 視線を雫に移すが、目をそらされてしまった。


「……出来てたらこんな事提案しないよ」


 ですよね。

 念のため本人にも聞いておこう。


「綾先輩。俺を諦めるって選択は?」

「私に死ねと言うのか?」


 思った以上に恐ろしい回答に俺はそれ以上何も言わなかった。


「決まりだ。これからよろしく頼むぞ」


 パンッと両手で叩いた松本先生は生徒会メンバーと共に一列に並ぶ。


「一応、生徒会顧問の松本杏花だ」

「会計の松本雫」

「書記……小野寺小鞠」

「改めまして、副会長の南条姫華よ」

「そして私が」


 凛とした姿勢をとる綾先輩は高らかに言う。


「君の彼女の東雲綾だ!」

「綾先輩は生徒会長でしょ!」


 こうして庶務としてこの生徒会の一員になった俺。

 しばらく俺の平穏な日は来ないだろうと思いながら俺は彼女達を見つめる。

 ……こうなっては仕方がない。


「一年の守谷廉です! 皆さんの力になれるよう頑張るのでこれからよろしくおねがいします!」


 姿勢を正し、頭を下げた。

 生徒会には入ったからには職務はまっとうしよう。


「そんなに気張らなくてもいいわよ」

「と言うか、暑苦しい」

「守谷、お前が務まると思うなよ」

「仕方ないとは言え、生徒会の一員なんだからしっかりしてよ」


 ……決心した矢先だけど、すでに心が折れそうです。


「廉君どうした? 不安か? 籍入れようか?」

「結構です」


 俺は本当にこの生徒会でやっていけるのだろうか。

この話で一区切りつきました。8話からのタイトルは「お嬢様で、優しい副会長は女王さま(疑問)」を予定しています。お楽しみください。

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