淑女で、紳士な二人は生徒会長の両親です(絶望)1
タイトル通り、とうとう両親登場!
小さめのシャンデリア。そのシャンデリアから放たれる光で輝くステンドグラス。埃や傷一つない家具達。白を基調とした広いリビングからは清潔感が漂っている。
家族三人で使ってもまだまだスペースのある大きなL字のソファの前にはガラステーブルが置かれ、その上には紅茶で満たされたティーカップが四人分置かれている。
こんな洋風な部屋で優雅に紅茶をいただけていないどうも守谷廉です。
どんな状況なんですか? 一体何がどうなっているんですか? と、聞かれても答えられないんだよ。むしろ俺が知りたい。
ここに連れて来た元凶である、右隣の彼女を盗み見る。
紐で結んで肩だけ露出させた、ゆったりした薄いピンクのワンピース。対し、下は脚のラインがはっきりとした黒のズボン。
俺の学校の生徒会長兼ストーカーである綾先輩はニッコニッコしている。
そのまま視線の先を進ませ、ソファの角を曲がり、上品な女性で動きを止めた。
綾先輩とよく似ているが、そわそわしている綾先輩とは違い、落ち着いた大人の女性。
パッと見は綾先輩のお姉さんに見えるが……
俺の視線に気がつくと微笑み、バツが悪くなった俺はそそくさと視線を外す。
そしてその先にいたのは、鋭い目つきの男性。
黒髪は必要以上に伸ばさず、髭も綺麗に剃っている。ほうれい線が現れているが、おそらく実年齢よりも俺の目では若々しく見えているはずだ。
一瞬だけ目が合い、すぐさま明後日の方向に顔を背ける。
「お父さん。お母さん。この子が守谷廉君だ。そして……私の彼氏になる予定だ!」
なんでなんだ。せっかくの土曜日になんでこんな腹痛に襲われなきゃならんのだ。
どこで……どこでこうなったんだ!
球技大会後、すぐに期末テストに入り、中々詰まったスケジュールに困惑しながらも無事にテストを終えた俺。
今ちょうど点数と順位がかかれた紙を受け取るところだ。
「次は守谷」
席を立ち、教団に立つ松本先生の前に。
「ほれ。前よりはいいが、もう少し努力しろよ」
そう言われて渡された細い紙に書かれている順位は、全体の半分くらいの順位が印字されていた。
「はぁ……手ごたえはあったんだけどな」
肩を落としながら席に戻る。
「その様子だとご愁傷さまって感じか」
「赤点はねぇよ」
卓也が手を合わせていたので少し語尾を強めた。
「これで全員に渡したな」
最後の一枚を渡し、その生徒が席に戻るのを確認してから松本先生が口を開く。
「これで夏休み前のテストは終了した。待ちに待った夏休みが目の前で浮かれていると思うが、まだ気を抜くな。来週はまだ授業があるからな。休んだら……分かってるな?」
松本先生の睨みに全員の背筋がピンと伸びる。
「以上だ。帰っていいぞ」
それを聞き、全員が帰り支度を始めていく中、球技大会の戦友達がぞろぞろと集まってきた。
「成績どうだった?」
躊躇うことなく俺の成績を尋ねる隆志。
「……そう言うお前らは」
「七十二位だけど」
「六十五位」
隆志も剛も俺より上か。
「祐太はどう――なんだあいつ」
なぜか魂が抜けたように肩を落としている祐太。
「ああ……球技大会終わってからすぐにテスト週間に入ったせいでみんなテスト勉強始めただろ? そのせいであまりちやほやされなくて、テストが終わたら一人ぐらい女子からの告白があるだろうと信じてたらしい」
テストから数日経ってるのに今日まで信じてたのかよ。
「くそ……なんで誰も来ないんだよ!」
まだ何かぶつぶつ言ってるな。
「それよりもテストの結果どうだったんだよ。赤点があると補習だぞ」
「テストの結果より女子が俺に言い寄ってこないことの方が問題だろ!」
全く思わんな。
「そもそもテスト何て普通にやってれば赤点取らないだろ! 少し集中して勉強すれば二十位以内なんて簡単だし!」
「それは俺に喧嘩を売ってるんだな?」
最初こいつは俺と同じだと思っていたのに、結果を聞いてみれば普通に勉強が出来るやつで殺意を覚えたものだ。それ今もだけど。
「ちなみに卓也は?」
「俺は二位」
ですよねー。
そしてトップは……容易に想像出来る。
「結局俺が一番成績悪いのかよ」
「でも赤点はないだろ? そんなに気を落とすなって」
と言って剛がポンと肩を叩いてくれるけど、生徒会室だとなんだか肩身が狭い気がするんだよ。
「ところで生徒会の集まりはないのか?」
卓也に尋ねられ、俺はチラッと時計を見る。
「いや、ある。そろそろ行かないと。じゃあな」
俺は早歩きで生徒会室に向かう。
生徒達を避け、廊下を進み、階段を上っていく。そしてそのまま慣れた手つきで生徒会室の扉を開けた。
「お待たせしました」
全員がそれぞれの役職の席につき、指定された席を持たない水原先輩や松本先生はソファに座っている。
「遅いぞ百二十位の守谷」
いきなり俺の個人情報を暴露しないでください。
「廉、あなたもう少し勉強しなさいよ」
学年一位の雫には俺の苦労が分からないでしょうね!
「守谷、百二十位なんだ」
「……そういう水原先輩は?」
「あたし? 二十七位だけど」
水原先輩はバカではないけど、普通ぐらいの成績だと思ってたのに……。
「水原先輩の裏切り者!」
「うらっ!? なんでよ!」
だって頭いいんですもん!
「守谷いい加減にしろ。さもないとそこの掃除道具入れに綾と一緒に閉じ込めるぞ」
「ウェルカーム!」
立ち上がって俺に両手を広げる綾先輩。
それは絶対に嫌!
そそくさと庶務の席に座った。
「なんだ、しないのか」
ガッカリした様子で座り、すぐさまキリッとした表情の生徒会長モードに切り替わる。
「全員集まったし、会議を……と言っても確認みたいなものだからすぐに終わる。夏休みの活動だが」
「あの、生徒会って夏休みも登校するんですか?」
「当たり前でしょ。九月には体育祭があるから話し合いをしないと」
呆れた様子で雫に首を振られてしまった。
「そ、そんな……」
せっかくの夏休みを謳歌出来ないなんて。宿題だって多いだろうし
「そんなに落ち込まないで。別に夏休み全部使うわけじゃないから」
「うん。そこまで、鬼じゃないし、去年は、少し会議して、後は宿題、してた」
そうなのか。なら宿題は心配いらないな。
「予定日は後日紙で渡す。学校に来る際は原則制服だ。購買も食堂もやっていないから昼は持参してもらう。それから以前から話していた目安箱の件だが、早くても来週には設置しようと思う」
以前からちょくちょくそんな話があったな。目安箱って……確か生徒達が普段思ってることとか、要望を提出する箱だよな。
「来週なの? 夏休み明けからでもいいと思うわよ」
姫華先輩が意見を申すが、綾先輩は頑なに首を横に振る。
「早いにこしたことはない。それに夏休みでも投函する者もいるだろう。少しでも生徒達の力になれるならそれが良い」
「……綾ちゃんは言い出したら止まらないものね」
綾先輩の性格をよく知っている姫華先輩は引き下がる。ただ、その表情には不満などは一切ない。
「決まりだな」
「なら目安箱のための箱を買いに行く必要があるよね」
「なら明日買いに行けばいい。ちょうど消耗品が減っていることだしな」
雫の言葉に松本先生が提案を出すと、みんな賛成の意思表示で一度頷く。
「……ねぇ」
今まで黙っていた水原先輩が突然口を開く。
「どうしたんだ舞?」
「あたしもやっぱり夏休み来た方がいいよね? 役職はないけど、一応は生徒会で働いてるし」
そういえばこの人はあの一件で監視って名目で生徒会に置かれてたんだっけ。
なんかもうほとんどメンバーみたいなもんだと思ってた。
「そうだな。一応来てくれるとありがたい」
「やっぱ休みでも登校か。でも仕方ないわよね! じゃあ、夏休みも━━」
「そのことなんだが」
話の流れを松本先生の言葉が遮る。
「水原。お前は夏休み入ったと同時に私の監視下から外れる」
「……え?」
「前の職員会議でお前は充分に反省し、態度を改めていると判断された」
ということは……水原先輩は許されたのか!
「つまりお前はもう自由だ」
「よかったですね!」
「う、うん。そうだね」
嬉しいことだと思うのに、水原先輩はなぜか苦笑いを浮かべている。
「よかったな舞。だが明日の買い物には付き合ってもらうぞ」
「……うん」
俯いてしまった。どうしたのだろう?
「では明日は全員で備品を買いに行く。おそらく電車を利用することになる。時刻表は確認しておけ」
「あ、あのさ! 明日せっかく電車で出かけるんだから、遊びに行かない? 買い物だけなんてもったいないよ!」
手を挙げて俺達の注目を集めると、早口でそう言う。
「ふむ、たしかに備品の買い物だけでは味気ないな」
「でしょ!」
「いいわね。私も一度は生徒会で遊びに行きたかったの。小鞠ちゃんはどう?」
「……スイーツ、食べられる、なら」
「雫ちゃんは?」
「わ、私ですか? まぁ、たまにはいいかとは思いますけど、教師のお姉ちゃん的にはどうなの?」
「別に休日まで縛らん。勝手にしろ」
どうやら決まったようだ。
今度は俺に視線が集まっている。
「もちろん行きますよ」
「では先程言った通り備品の買い出し。そして向こうで存分に遊ぶとしよう。駅から歩いていけるショッピングモールだと、ユオンだな。時間は十時。集合場所は後で全員に送信しておく」
ユオンは以前水原先輩と一緒に行ったショッピングモールだな。
とりあえずは話し合いが終わったということで、各々が自分の作業や課題に取り掛かり時間を潰す。
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