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青春の汗と、欲望乱れる球技大会(蒼白)7

「おーい、大丈夫ですか?」


 倒れている三人に声をかけると、瞑っていた目が薄く開く。

 意識があるようで何より。


「……さっき、とてもいいものを見ていたような」


 上体を起こすが全員フラフラしている。


「裕太達、三人の支えになってくれ」


 すぐに三人を補助につかせ、俺は花田さんのところへ。


「とりあえず花田さんも同じところに座ってくれ」

「うん」


 鼻を抑えながら友人達の隣に座ると、ちょうどいいところに卓也がポケットティッシュ二つと水を持ってきた。


「これでいいか?」

「おう」


 受け取ったポケットティッシュを全て出し、四等分にして冷えた水をかける。


「はい。みんなこれを鼻に当てながら鼻をつまんで。座ったまま下を向いて」


 大人しく指示通りに鼻を押さえて座る四人。

 これで応急処置はいいだろう。


「あ、あんがと。もう支えなくて大丈夫だから」

「ご迷惑おかけしました」

「ご、ごめんなさい」

「ありがとう守谷君、助かったよ。それにしても手際いいね」

「ま、まぁ、スポーツしててよくケガしてたから自然と」


 それぞれが感謝したり申し訳なさそうにしているのだが、全員が一列に並んで体操座りのまま、下を向いて血のついたティッシュを鼻に押さえている姿なのでシュール過ぎる。

 ダメだ笑うな。ただ感謝の言葉。別に変なことは言ってないんだ。笑ったら失礼だ。


「……あ、止まった」


 しばらく押さえていたことで鼻血が止まる花田さん。

 他も止まったらしいが、服に血がついてしまっている。


「うわぁー、これは着替えないとダメだね。私達は予備のに着替えてくるけど、たつきちゃんはどうする?」

「そうだなー」


 おもむろにジャージのファスナーをおろすと、白いシャツについた赤いシミと共に窮屈そうにしまわれていた胸が飛び出す。

 もしかしたら……いや、確実に綾先輩や姫華先輩以上。

 一番近くにいた剛は思わず凝視するが、ハッとなってすぐに視線をそらした。

 他の二人はまだ胸を見ていたので俺が睨みつけると明後日の方向に顔を向ける。


「ダメそう。あたしも着替えないと」

「じゃあ、私達と一緒にーーきゃっ!」


 歩き出そうとした途端に、自分の足に引っかかった地味な彼女は盛大にこけてしまった。


「大丈夫美香?」

「大丈夫だよ真由ちゃん」

「本当? 顔見せて」


 ソバカスの女の子が邪魔な前髪をかき分けると、その奥からは黒い真珠のような瞳を持った美少女が現れる。


「嘘……」

「めちゃくちゃレベル高っ!」


 あまりの可愛さに言葉を失っている隆志をよそに、他の二人が各々の感想を呟く。


「うん、大丈夫みたい。あれ? ……ちょっと君の服」


 裕太に近づくと襟元あたりを摘む。


「これ、私の血だよね。ごめん」

「いや、別に謝らなくても」

「ううん。お詫びにその服洗わせてもらえない?」

「いや、そこまでしなくてーー」

「ダメ?」


 上目遣いで頼まれてしまったら男は断ることは出来ないな。


「……後で脱いで渡します」

「うん! じゃあ、着替えてくるから」

「ごめん三島君、守谷君。荷物見張っててもらっていい?」

「了解」


 卓也が答えると、四人は女子更衣室に向かうのだった。

 一方の俺達なんだが……


「なんだかさ……」

「もう球技大会とか……」

「どうでもいいな……」


 幸せそうに顔を綻ばせている三人。

 とりあえず、こいつらの興奮を冷ますため余った水をぶっかけておこう。



「おまたせ! ごめんね見張っててもらって……運動してたの? あそこの三人凄い汗かいてるけど」


 帰ってくると、三人を横目で見ながら尋ねられた。

 ただ水をかけただけです。


「くっそ、廉の奴」

「かけるなら女子にやるべきだろ!」

「二人共、それ以上はまた廉が何かしそうだからやめておこうぜ」


 聡明な判断だ、剛。


「気にしなくていいよ」

「そう? ところで、そっちは何のスポーツするんだっけ?」

「俺達はバスケだよ。花田さんはテニスなんだよね」

「まぁ、テニスウェア着てるしね。これで他のスポーツやっててたらおかしいと思うよ」


 まったくその通りだな。


「ねぇ、知ってる二人共! テニスって凄いんだよ! 極めれば相手の筋肉や骨がスケスケになるんだから!」

「興奮してるところ悪いけど花田さん、その人達はテニスと言う名の皮を被った死合をしてるんです」


 だって、普通のテニスで死にかけることなんてないから。


「結局のところ、花田さんは漫画に影響されたってことなんだね」


 花田さんは少し眉を垂らしながら卓也の答えに首を横に振る。


「うーん、それもあるけど、ダブルスには前々から興味があったのもあるかな」


『特に男子の』と言うのがボソッと聞こえてしまった。

 もう嫌な予感しかしない。


「だってパートナーの後ろに立ってラケットを握りながらボールをいじってるんだよ!? 文字だけ起こしたらいろんな妄想が捗っちゃう!」

「ただのサーブの動作をなんちゅう目線で見てるんだよ!」


 これにはたまらず大声を出してしまい周りに注目されてしまった。


「もう、守谷君。喋るなとは言わないけど大声を出しちゃダメだよ」


 誰のせいだと思ってるんだ。

 もういい。さっさとここから離れて練習にいーーきたいところだが、あいつらのやる気をまずは引き出す必要がある。


「花田さん。お願いがあるんだけど」

「何かな?」


 小首を傾げる花田さん。

 俺は三人に聞こえないように伝えると、二つ返事で引き受けてくれる。


「それぐらいならお安い御用だよ。守谷君と三島君には色々妄想の材料提供してもらってるし」


 快く提供した覚えがないのだが、協力してくれるのならその辺はいい。

 花田さんは友人達の元へ駆け寄ると三人にある提案をする。

 その提案にのったのか、同時に友人達が首を縦に振ると、俺達の元へやってくる。


「お前ら、バスケするんだってな」

「当日は時間が空いたら、応援に行くね」

「だから、負けたらダメだよ?」


 どうやら頼んだ通り、花田さんプラス友人三人組が応援に来てくれる手はずとなった。

 これに対し、三人は……


「「「もちろんさ!」」」


 予想通りやる気に満ちた顔をするのだった。

 この後練習をするのだが、あまりのやる気に無理なプレイをしてケガをしそうになったり、筋肉痛を考えない練習内容をしたりと、俺がまたあいつらにキレるのはまた別の話。

読んでくださり、ありがとうございます。

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