青春の汗と、欲望乱れる球技大会(蒼白)6
公園の入り口前には裕太達がすでに待っていた。
「遅いぞお前ら!」
とは言ってるが、集合時間十分前なんだけど。
「お前らは早いな」
「当たり前だ! な、隆志!」
「おう! 勝つためだ! な、剛!」
「その通り! 優勝するためだ!」
若干暑苦しい気がしなくもないが、ここまでやる気を見せてくれるなんて。俺は嬉しいぞ。
「もうそろそろコートに向かわないか。ここで騒いだら迷惑だろうし」
卓也の言う通りだな。
さっさとバスケットのコートがある場所へ向かおう。
設置された公園内の地図で確認すると、どうやらテニスコートの近くにあるらしい。
地図の通り道を歩いていく。
広い芝生の上を無邪気な子供達が走り回り、シートを広げて座る夫婦がそれを優しく見守る姿や親子でキャッチボールする姿が目につくと、なんだかほっこりした。
やがてコートが並ぶエリアへと足を踏み入れる。
のんびりと過ごす家族達とは違い、スポーツに励む老若男女の姿はエネルギッシュだった。
さらに奥へと進み、ようやくバスケットのゴールが見えてきたので、走り気味にコートへ。
ドリブルする音がいくつも聞こえ、コートが空いてるか不安を覚えながら、すぐさま確認。
4コートある内の1コートが空いていた。
さっそく荷物を置いて練習をーー
「あれ?」
しようとしたが、卓也以外の姿がない。さっきまでいたはずなのに。
「廉、あっち」
苦笑気味に向かいのテニスコートを指差す卓也。
そこにはフェンスに張り付き、テニスに励む女子達に釘付けなアホ三人組がいた。
「おお! 小耳に挟んだ通りだ!」
「他のクラスの女子もここで練習してたな」
「しかも体操着じゃなくてテニスウェア!」
「あ・い・つ・ら!」
通りでノリ気だと思ったよ!
「何してんだお前ら!」
「やべ、守谷が来た」
「心なしか少しキレてるような」
少しどころじゃねぇよ。
「いやー、ついテニスに夢中になって」
夢中になってたのはテニスじゃなくて、テニスウェアだろ。
「お前ら、これが見たいがために俺を誘導したんじゃないだろうな?」
「そんなわけないだろ!」
「俺たちがそんな邪な気持ちだとでも!」
「そうだそうだ!」
ならせめて目を泳がせず、俺の目をまっすぐ見ろ。
「あれって……」
おいおい、卓也までフェンスに張り付くなよ。お前は二次元専門だろ。
「卓也、お前もか」
「そうじゃなくて、あれってさ」
卓也の視線の先にいる女子に注目する。
見覚えのある眼鏡女子だな。
「あれって……花田さんか?」
「そうみたい」
向こうもこちらに気がつき、手を振って小走りに寄ってきた。
「三島君! 守谷君! 球技大会に向けて練習?」
花田さんは他の三人も見ながら、何かを期待したように目を輝かせている。
「うん。そうだよ」
「そうなんだ。なら先に教えといた方がいいね。あそこら辺の建物の陰、あまり人が来ないよ!」
「その情報を教えて、花田さんは何を期待してるのかなー?」
「こと細かくシチュエーションから台詞まで全部答えていいの?」
ダメです。絶対にやめてください。
今後のこいつらとの絡み方が分からなくなるんで。
「花田さんも球技大会の練習?」
俺の心の内を知ってか、あるいはただの偶然か。卓也が花田さんに尋ねたことで、ようやく目を輝かせるのをやめてくれた。
「そうだよ。あんまり上手くないから友達に協力してもらってるの。どう? このテニスウェア。可愛いでしょ」
そう言ってその場でくるっと回ると、スカートがヒラリと舞う。
その瞬間を三人は凝視していた。
「花田さん。あんまり動くと見えるよ」
「心配する必要はないよ守谷君。下着じゃないんだし」
そう言われればそうだな。スカートって言ってもスポーツするための服装なんだし、スカートがめくれても問題ないか。
「スカートがめくれた!?」
「でも、下着じゃないだろ?」
「バカッ! 下着か下着じゃないかなんて些細なことだろ! 問題は女子のスカートがめくれたってことだ!」
でも残念ながら、妄想力豊かなこいつらにはそれだけで十分なんだ。
「薫。その人達って、もしかして」
一緒にいた三人の女子グループがおずおずと近寄ってくる。
花田さんが言ってた友人達なのだろう。
しかしなんというか、花田さんと同じタイプには見えないな。別にそれが悪いとは言わないが。
中央のソバカスの子はなんとなく花田さんと雰囲気が似ているが、左のジャージを着た金髪の女の子は不良ぽく。逆に右は目元を隠したかなり地味系な女子だ。
この四人が同じ話で盛り上がる姿が浮かばない。
「こっちが同じ部活の三島君。三島君の友達の守谷君」
軽く会釈すると、花田さんの友人達は目を丸くし、しばらく俺と卓也をジッと観察。かと思えば、口元から「腐へ」と嫌な鳴き声が聞こえてしまった。
「や、やばいよ」
「薫ちゃんの言う通り。絵になるいい組み合わせ」
「確かに……おっと、よだれが」
なるほど、類は友を呼ぶと言うやつか。
囲って話しながらチラチラと俺達を窺う三人の目が、BLに反応した時の花田さんと同じ目をしている。
「問題は攻めと受けよね。やっぱり、三島君が攻めで、守谷君が受けよね」
とソバカスの子が意見を出すと、待ったと声をかけられる。
「いいや。ここは三島が誘い受けの、守谷がヘタレ攻めだろ」
金髪の子が強く言うと、今度は地味な子がニヤリと笑った。
「腐フ。それもいいけど、あそこにまだ三人いるじゃろ?」
指差して、未だにスカートがめくれたことに対しての議論が白熱しているアホ達を指差している。
「三島君とあそこの三人を混ぜた守谷君総受け」
「「それだ!」」
花田さんの友人達が話しで盛り上がってる姿を、俺はただ呆然と眺めることしか出来なかった。
「廉、顔色が悪いぞ」
「目の前の現実に耐え切れなくて」
「受け入れれば全部丸く収まるよ」
俺も犬井先輩の同族になれと言っているのであれば、全力で拒否します。
「出来ればあの会話止めてくれない?」
…………いや、そんな「えー……本当は私も混ざりたいのにー」と言いたそうに不本意な顔を浮かべるのはやめて。
「仕方ないなー。じゃあ三島君、守谷君と肩組んで」
え、それと止めるのと何か関係がーー
「よし、分かった」
卓也は言われた通りのことを即実行。
俺の首に腕を回して、力強く寄せてくる。
「ぐへっ! おまっ! 力強すぎんだよ!」
「悪い悪い。勢い余って」
その勢い余ってで落とされかけたぞ!
「それで、こんなことさせて意味はあるの?」
ジト目を花田さんに向けると、自信ありげに友人達を指差す。
さっきまで盛り上がっていた会話がピタリと止まり、肩を組んでいる(首を絞めている?)卓也と俺から目を離そうとしない。
時間にして十秒の間、微動だにしていなかった彼女達は突然鼻血を引き出し、幸せそうな顔でその場に倒れた。
「だから! ヘソチラが最こーーえ? ……ちょっ! 倒れてるぞ!?」
「でも、なんだか幸せそうな顔をしてるような」
「そんなのどうでもいいだろ! ああ、どうすれば」
異常な光景に流石の裕太達も話をやめてアタフタし始める。
「ありゃー。ちょっとあの子達には刺激が強すぎたね。妄想が捗りすぎてオーバヒートしちゃってる。まぁ、私は三島君と守谷君の絡みは何度も見てるから欲望は抑えられるけどね!」
キメ顔で言ってるところ悪いんですが、あなたも鼻から赤い欲望垂れ流しですよ。
「れ、れれ、廉! 人が倒れた!」
「分かってるから落ち着け。卓也俺の鞄からティッシュ持ってきてくれ。あと水持ってる奴いるか?」
隆志だけが手をあげる。
「分かった。とりあえず飲み物は俺が一本やるからその水をくれ。卓也以外の三人は倒れてる奴の介抱。間違っても変なところ触るなよ」
「人が倒れたのに、流石にそんなことしねぇよ」
だろうな。もしやったら助走つけて全力でグーで殴る。
「ならいい。ほら、さっさと動くぞ」
練習を始めるどころか介抱することになるなんて。
一体いつになったら練習が始められるのだろうか。
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