夏だ! 海だ! ラブコメだ!?(驚愕)2
白い砂浜。青い海。照りつける太陽。
海は多くの海水浴客で賑わっていた。
「よいっしょっと」
「守谷、もう少しパラソルは深く刺さないと倒れてきて危ないぞ」
「了解アニキ」
「アニキさん。飲み物買ってきましたよ」
「そこのクーラーボックスに全部入れておいてくれ」
着替えを早々に済ませた男性陣は、女性陣が着替え終わるまでの間、テキパキと作業を進める。
「よし! 完成!」
「意外と早く終わったな」
「お疲れ。ほら、これでも飲め」
缶ジュースをアニキから受け取り、俺たちは一気にあおる。
「準備を任せて済まない。少々手間取ってしまった」
着替えを終えた女性陣が俺たちの前に現れると、俺は視線を奪われた。
水色を基調としたハイビスカスの柄があしらわれたパレオ付きの水着の綾先輩。
黒いビキニにホットパンツの水原先輩。
胸元を隠すようなクリーム色のハイネックビキニの姫華先輩。
キャミソールのような水着の雫。
スポーティな印象のある水着の花田さん。
フリル付きのビキニの沙耶未。
そして、シンプルなビキニタイプの美鶴さん。
こうして並ばれると、全員顔面偏差値が高いし、スタイルも抜群だから水着姿がとても映える。
なんだか、照れ臭い。
「廉、水着、どう?」
みんなの影からひょっこり現れた小毬先輩はワンピースの水着。
可愛らしい見た目にはピッタリだ。
「とても可愛らしいですよ」
「……なんか他の人達と対応違う気がするんだけど、気のせいだよね? ……なんで目を逸らすの?」
俺は目を合わせないように明後日の方へ顔を向ける。
「待たせたな」
「あ、松本先生。パラソルの準備は出来━━」
ちょうどよく戻ってきた松本先生に声をかけたが、その姿に言葉が詰まる。
「ん? どうした?」
「ど、どどどどっ! どうしたって、なんですかその格好!?」
「何って、水着だぞ?」
平然と答える松本先生の水着はいわゆるスリングショット。
とても水着の役割を果たしているとは思えない。
「教師がそんな格好でいいんですか!?」
「今日はプライベートみたいなもんだ。どんな格好をしようが私の勝手だ。それに……」
「それに?」
尋ね返すが、答えは戻ってこない。
ふと、その場に一人いない人物がいることに気がついた。
「そういえば、大家さんは?」
……なんでみんな俺から顔をそらすの?
「私達もスタイルには少しばかり自信があったんだがな」
「所詮私達はただ若いってだけだったんだよ綾ちゃん」
え、本当にどうしたの? 俺達が見てないところで何があったの?
「すいません! 遅れちゃって」
大家さんの声が聞こえ、そちらに振り向くと、目が飛び出しそうなほど驚いた。
麦わら帽子と上着を羽織ってはいるが、その下につけている水着は松本先生と引けを取らないほどの露出度の高いビキニ。
しかも、いつもは体のラインがはっきりとしない服でありながら、その存在感を隠しきれていなかったスタイルが露わとなっている。
当然、男達の視線は大家さんにくぎつけだ。
本当にこの人三十代なのか?
「大家さん、その格好」
「あ、もしかして変? そうよね。久々の海で昔の水着を引っ張り出してきたんだけど、やっぱりおばさんの私にはキツイかしら」
別の意味で水着がキツそうですけど。
他の人達が辛いような顔をしているのは大家さんのせいだったのか。
確かにこれは勝てる気がしない。
「どうしたのみんな? ほら、せっかくの海なんだから、思いっきり遊んできてね。荷物の番は私と先生でするから」
「いいんですか!? なら早速泳ぎに行こうぜ廉!」
「そうだな。アニキはどうします?」
「俺は少しここで休んでるよ。気にせず行ってこい」
せっかくだからアニキと遊びたかったが、仕方ないか。
「よし! いくぞ卓也!」
「おうよ!」
「あっ、こら二人共! 抜け駆けしないの!」
「そうだよ! イチャイチャするなら私の目の前で!」
「廉待ってよ〜」
子供のようにはしゃいで砂浜を駆ける俺達を雫、花田さん、沙耶未の同学年組が追いかけてくる。
しかし、俺達は高ぶるテンションを抑えきれず、そのまま海へと飛び込んだ。
「しょっぺ!」
「でも冷たくて気持ちいい!」
後からぞろぞろとやってきたみんなは、俺達の姿に笑ったり、少し呆れたような顔をしたが、海に来た喜びは同じなようで、次々と海へと飛び込んだ。
「ビーチボール持ってきたから遊ぼー!」
沙耶未が持参したビーチボールで他の人達は遊び始める。
俺はというと、まだ海の冷たさを味わっていたいので、遠くから様子を伺がうことにする。
「れっちゃんは混ざらないの」
「俺は少し泳いでいたので。美鶴さんはいいんですか?」
「私は後で合流するつもり。一応、私も監視役でもあるから。ところで、この水着どう?」
そう言って、水着を見せつけてくる。
まじまじみるわけにもいかないので、少し視線をそらしながら答えた。
「似合ってると思いますよ」
「よかった。舞ちゃんの水着はどう?」
「……まぁ、正直に言いますと、めちゃくちゃ似合ってますね。当然他の人達もです。ですけど、俺が驚いてることは、ちゃんとした水着を着てきたことですかね」
かつて心の底から可愛いと言って、クマチャンジャーTシャツを買っていた水原先輩が、ここまでお洒落な水着を着てくるとは思ってもいなかった。
せいぜいシンプルなもので終わるものだと思っていた。
「やっぱり、知ってたんだね。舞ちゃんの絶望的なまでのファッションセンスを」
幼馴染の美鶴さんも、やはり知っていたのか。
「私に感謝してねれっちゃん」
「感謝? まぁ、たしかに男としては眼福とは思いますけど」
正直に答える。
がしかし、美鶴さんは首を横に振った。
「私が舞ちゃんのを誘って、水着を買いに行かなかったらどうなってたと思う?」
「そんなの、昔の水着を着るんじゃないですか?」
当然のことだと確信して言ったものの、ふと、あることが頭をよぎる。
たしか水原先輩があんなギャルっぽい格好をし始めたのは、去年からって聞いた気がする。
しかも、初めのうちは地味なおさげ美少女だった。
その時はどちらかといえば内向的だった水原先輩が、ちゃんとした水着を持っていたのだろうか。
「……もしかして」
「舞ちゃんスク水で海に行こうとしてたの。もう少しで全方位の性癖に刺さる兵器が爆誕するところだった」
「言いたいことはわかりますが、言い方もう少しおさえましょうよ」
でも美鶴さんの言いたいこともわかる。
ギャルの格好でスク水。しかもあんなにも無邪気な子供のようにはしゃがれたら、いろんな性癖にぶっ刺さっていただろう。
「おーい、美鶴ねぇ! こっちにきて遊ぼうよ!」
「うん、今行く」
水原先輩に呼ばれ、すぐさま駆け寄っていく。
本当にあの人は水原先輩が大好きなんだな。
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