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紅茶と供に福音を  作者: 水鬼鮫男
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プロローグ

 黒い雲が空を埋め、雨の降る昼下がり。

 少し湿気ている制服を整える。深く息を吐いて、大きな扉をノックした。

「入ってもよろしいでしょうか?」

「どうぞ」

 扉をゆっくりと開き、部屋に足を踏み入れる。

 薄暗い部屋で窓から外を眺めていたのは、まるでビスクドールのような少女だった。

 ガラスのような碧眼、人間離れした真っ白な髪、そして白い肌。四肢は簡単に折れてしまいそうだ。

 美しい少女の表現に良く使かわれる描写だが、目の前の少女の容姿はまさにそれだった。

 若干違う部分があるとすれば、明らかな不機嫌オーラを漂わせている、と付け加えなければならない点だろう。

 生唾を飲みこんだ。聞きしに勝るとはこういう事か。

 世界に名をはせる大企業、九条グループの御令嬢、というのがこの少女の肩書きである。今日からは自分の主でもある事を付け加えなければならないのも、忘れてはならない。

 本来正しい血筋の人が立つべきであろうこの場所に、専門教育もほとんど受けていない自分が立っている。

 自分自身、こんな事になるなんて予想すらしていなかった。

 だが、彼女の父親には大きな恩があった。頼まれたら断れない。それに、別に嫌々承諾したわけでもない。役に立てるのはむしろ嬉しい事だった。

「いい天気ね。雨は好き?」

「どちらかと言えば嫌いです」

「そう」

 少女はこちらへと歩み寄る。新人の使用人を、おそらく品定めをしているのだろう。頭から足の先まで一通り眺める。

 拳一つ分ほどの空間を開けて、目が合った。

 別に眼力が強いわけではないが、何かに威圧されて、自分よりも小さな少女に萎縮する。身長は平均よりも低く思えた。見た目は中学生ほどにも見えるが、実際は高校生のはずだ。

 眺め終えると目を瞑って唸った。そして、一言。

「まぁ、いいでしょう」

 苦笑して答える事しかできなかったが、どうせ彼女はこちらの反応なんて気にしていないだろう。

 案の定、何の反応もなく、彼女は続けた。

「……貴方、私の言う事ならどこまで聞ける?」

「どこまで、とは?」

 少女は薄く笑って言った。

「私が殺してと言ったら、殺してくれる?」


以前別サイトで使った作品で、大筋は代わりませんが、続編も今の所予定しています。ただし更新はまちまちかと思います……。

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