【6八銀】
仕事の傍ら
普及活動にも務められている彼は
指導対局
と言う
読んで字の如く
将棋を教えることを
これも仕事なのでありますが
されておりまして
とある指導対局の場で
相対しましたかたの戦法に
心奪われるのでありました。
『初手6八銀』
将棋に触れる機会があるかたでありましたら
ある意味
当然と言えば当然のことなのでありますが
対局を始める際
まず最初に意識することは
どのようなことであるのか?
と申しますと
長い距離を縦横無尽に睨みを利かせることの出来る大駒であります
飛車ないし角行を活用するべく
その行く手を阻む
歩兵を動かす(退かす)ため
最初の手。
先手の場合ですと
7六歩ないし2六歩
と指すのが
一般的な初手なのでありますが
指導対局の場で
相対しましたかたが
最初に指して来た手は
6八銀
でありました。
次に後手が
後手の角道を拓くべく
3四歩
と指したあと
先手が
7六歩と先手の角道を開いた瞬間に
先手が投了になってしまう。
成った馬を取ることが出来ない
味方の角がタダで獲られてしまうので
(次どうすのかな?)
と彼が3四に歩を進めたところ
対戦相手が次に指して来た手は
7九角
でありました。
その後、先手は
5六歩に5七銀と進めていく中、
ガラ空きとなりました
後手飛車先であります8の縦筋を
先手はどのように対処するのだろうか?
と
8四
8五
8六
と後手の飛車先の歩を進め、
歩の交換が行われ
後手飛車が8六に陣取ったところで
先手であります対戦相手が放った手は
8八歩
と言う
これまた
あまり見ることの出来ない手で
でありました。
もう一度、将棋の常識の話に戻しますと
対局が始まりましてから
意識するモノ。
1つは先程述べました
角と飛車を活かすこと。
これと同時並行に意識するモノがありまして
それは何か?
と申しますと
王様を安全地帯へ持っていくことであります。
将棋は王様が逃げ場を失うと
負け
となるゲームでありますので
少しで相手の攻めから逃れるべく
矢倉や美濃。
穴熊などの囲いが誕生して来たのでありましたが
指導対局の場に訪れました相手は
王様を守る素振りも見せず、
最初に置かれた位置であります
5九に鎮座したまま
ひたすら
奇想天外な手を進めていくのでありました。
こんな挑戦的な手筋を
それも平手で挑んで来た相手に
負けるわけにはいかないと
対局を進めていったのでありましたが
結果を申し上げますと
指導者であります彼は
その対局に敗れてしまいました。
一体全体この戦いかたは何なのか?
とその奇天烈な手筋を進めました対局者を捕まえての研究が始まり
のちに一冊の本として出版されるまでに至るこの戦法。
この研究の傍ら
アマチュア棋戦に参戦する
充実の日々を送っていました彼に
再び災厄が降り掛かって来るのでありました。




