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創世する世界のイヴ # Genesis to the world's Eve  作者: 遍駆羽御
本編―――― 第3章 眠れる天賦
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第87話 病魔が侵攻する国

 

 第87話 病魔が侵攻する国


 視点 神の視点 ※文法の視点名です。

 場所 ダラーヒム学園王国 実験工場地区

 日時 2033年 4月9日 午前 3時19分



 蒸気機関等の研究を行い、異世界 リンテリアの科学レベルを向上させることに躍起になっている国がある。その国はダラーヒム、トゥーマーン、スユーフ、ジャウカーン、クイーンと5つに分かたれた異世界 リンテリアで1番大きな島にあるうちの一国 ダラーヒム学園王国。


 この国は賢者と呼ばれた男の リトア・ダラーヒムとその賢者を慕う弟子達 7人によって建国された。

 代々、国王が学園長を兼任して、賢者王 リトアを名乗っている。そのリトアを支えるのは7人のブレイン マイスターと呼ばれる役職を担うリトアの弟子 7人を祖先にもつ大貴族達だ。


 そんな建国理由だからこそ、ダラーヒムはあらゆる知恵に貪欲であり、知恵を得る為ならば何でもしても良いと間接的に言っているような奴隷を使用した人体実験や過重労働を酷使してきた。しかし、その状況も凪紗南イヴの父親 勇者 凪紗南春明の奴隷という身分の撤回政策によって、奴隷を公的に使い辛い世の中になってしまった。今では奴隷を代々的に利用しているのは竜族の国 北庄くらいなものだ。


 寸命すんめいアリア「それじゃあ……うちらのイヴお嬢ちゃまはこんなごつい建物が並ぶリトアさん家にいい顔をされへん訳やなぁ……。けったいな事やで、ほんま」


 自分がこの極秘裏のスパイ活動に組み込まれているのが、自分達の護るべき皇女 凪紗南イヴがダラーヒムに誘拐されるからもしれないという想定に基づいてのモノだと思い起こしながら独り言を喋った。


 凪紗南天皇家を守護する十家の一つ 寸命家は古来より空戦を得意とした一家だ。飛行機のない時代には寸命家が空で闘う乗り物として丈夫な鷲を育てていた。今の寸命家がイヴ皇女よりお預かりしている飛行機は人間の身体に装着するフェンリルスーツが主である。だが、そのフェンリルスーツの何世代も上をゆくファクトリー機密開発コードネーム女王の正装 セイブ クイーンの稼働の為の実験機 ロード メイカーを寸命アリアは装着していた。


 アリアの脳波に干渉して、実際には見えないホログラムウィンドウの次世代 ファントムフィールドが立ち上がっている。

 アリアの水色の虹彩が特徴的な左眼の視線 左上にその見えない窓枠には魔科学 ロード メイカーの簡易パラメータが表示されている。


 ――――ロード メイカー


 右腕部武装 エンチャントファイアバスター 本機にエンチャントされたファイアボールを打ち出す銃。消費保有MP15

 左腕部武装 フォースレーザーソード 本機左腕部に収納されたレーザーソード。攻撃 37000

 腹部大砲 フォトンオーラエンド 本機にエンチャントされたフォトンオーラを放つ大砲。消費保有MP135

 保有MP 190000

 エンジン 光圧メタンハイドレートエンジン

 緊急ブースター 空破くうはシステムエンジン

 自動シールド 化学兵器防護シールド ファクトリー 物理防御力 40000 魔法防御力 30000

 第2装甲展開可能臨界点 未実装

 最終装甲展開可能臨界点 未実装

 耐久値 HP120000           ――――



 アリア「これの数倍のスペックのフェンリルスーツか。過保護とちゃうか、ファクトリーの人間は。まぁ、イヴお嬢ちゃまは何かとトラブルに巻き込まれるさかい、うちも情報収集を頑張るで」


 空の悪夢と呼ばれた元日本軍エースパイロット アリアは異世界 リンテリア ダラーヒムの上空を展開した翼から広範囲の自然に発生する霧と同じ成分の霧を放出しながら、曇りの夜空と同化して飛行していた。


 並び立つコンクリートで建造された工場はもはや、20世紀のレベルに達しているのでは? とアリアは思うほどだが……有名な日本建築家 流士優ながしゆうに言わせると耐震性の薄い劣化コンクリートであり、不純物を含んでいる為、未だその域には達していないという見解だ。

 その工場の煙突から、有害なスモークが立ち上がっている。ダラーヒムの学生、研究生や住民には自然に配慮しなければ、自分の生活環境が汚染されてゆくという価値観がまだ、発見されていないのだろう。

 工場水を垂れ流しにするゴムホースがちらほらと……見受けられる。その汚水を一身に浴びた海は濁り、不法投棄された不細工な形のビーカーや試験管が浮いていた。それらの影に隠れるように魚や蟹、イカ、タコなどの海洋生物が浮いていた。

 どれも通常の艶やかな色を保っていないどす黒い色をしていた。生物濃縮が極まった結果だろうとテスラ・リメンバーのダラーヒムで起こっていることの推測をブリーフィングでレクチャーしてもらった。


 薄い膜が身体を覆い、新鮮な空気をアリアは常に吸えているのにそんな身体に悪い景色を見れば、気持ち悪くもなる。

 おえっ! と吐きそうになる……。


 アリア「最悪やで。で、ここに情報提供者がおるちゅうわけか……。クイーンと日本の留学生をダラーヒムからは受け入れてもらえへんで。こういうのは貴重やで」


 ゆっくりと飛行速度を落としながら、シャギーの効いた碧い髪の前髪をきっちり揃えたアリアは情報提供者が指定した実験情報地区の外れにある砂場に降り立つ。

 柔らかい砂の感触に童心を思い出しそうになったが、中空に浮いていた三つ編みの後ろ髪がアリアの首筋を撫でる頃には日本軍人の特有の理性を効かせた顔に修繕されていた。

 迷彩色の軍服の皺を確認し、だらしなくない程度には整っていると判断した後、蒼薔薇が一輪だけデザインされたネクタイを締め直す。


 アリア「このネクタイも明日……いいや、空けているから今日には二輪になるんや。イヴお嬢ちゃまとりりすお嬢ちゃまの。今日はりりす第二皇女のお披露目会やで……。そう考えると、うちは貧乏くじ引いたぁ……」


 ガクリっ……と肩を落とし、大げさに下を向いて首を振ると……アリア自慢の巨乳(推定 Fカップ)がぷるぷると震えた。

 アリアは知らないが……日本国民の男性諸君はその巨乳を保つ寸命アリアの事を”ぷっ〇んプリンちゃん”と呼んでいる。そして、男性諸君はいつも、アリアを思いながらプリンを食べるのであった。………男性はそういう愚かな生き物である。


 しかし、愚かでない男性も存在する。そのカテゴリーに充分、入るであろうダラーヒムの一人の若者がアリアを目指して、静かに緊張を隠さず、脚を小刻みに震わせながら歩んでくる。

 その右手には膨らんだ鞄と、左手には瓶に閉じ込めた小魚の死体を持っている。ダラーヒムの若者――――ブレインマイスターを担う7家の一つ エレル家の御曹司 カムク・エレルの金色の瞳は不安に駆られる身体とは異なり、正義に燃えていた。


 カムク「お願いです、この資料をイヴ女王様にお渡し下さい。この国は重要な事実を握りつぶそうとしています。また、それに辿り着いた人間もあらゆる手で……」


 可愛らしいショタ系に入るであろうカムクの顔が怒りで真っ赤になり、涙をポロポロと流す。

 アリアは用意していたファクトリー用のキャリーケースには膨らんだ鞄と、瓶に閉じ込めた小魚の死体をしまう。


 アリア「解っていると思うけどなぁ、これはダラーヒムに対する裏切り行為と見られるで。幾ら、君がダラーヒムの賢者王の娘 メメ・ダラーヒム第1王女の婚約者であっても……やで」


 カムク「構いません。俺は将来、メメと共にダラーヒムを継ぐ者です。この年々続く……隠蔽体質を改善し、例え、仲の悪いクイーンと日本の力を借りてでも改善したい。俺は民の為ならば、土下座だって知ってみせるよ」


 その迷いのない言葉は誠の王に相応しき器だった。


 思わず、アリアはその言葉に頷いてしまう。


 アリア「任せてや。うちがイヴ皇女様にしっかりと手渡す。どういう方針になるか? それはイヴ皇女様次第やけど、必ず、救ってくれるで」


 カムク「そう……願います。これはメメと共に決断した非公式の国家間の協力要請です」


 さて、うちのお嬢ちゃまはこの要請にどう応えるか? とアリアはしばし、雲と霧に隠れて見えるはずもない星々を眺めながら……そう、考えた。


 遠くから、蒸気機関車の汽笛が聞こえる。







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