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創世する世界のイヴ # Genesis to the world's Eve  作者: 遍駆羽御
本編―――― 第2章 1000キュリアの祈り
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第82話 イヴちゃんの婚約者 4人の語らい

 

 第82話 イヴちゃんの婚約者 4人の語らい



 視点 アイシャ・ローラント

 場所 クイーン王国 ナナクサ村 名も無き公園

 日時 2033年 4月4日 午後 7時15分



 雌豚3匹と私 アイシャ・ローラントはナナクサ村の中心部にある公園に着陸した高速戦闘輸送機 三日月の前で1卓のテーブルを囲む。

 どの雌豚も私同様に高速戦闘輸送機に運ばれた婚約者であるイヴが気になるようだ。そのイヴは今、輸送機内に備え付けられた手術室でルルリという虫豚にミスリルナイフで刺された腹部を治療しているところだ。尤も、イヴの目が覚めたら、自分で治癒魔法を唱えて完治させてしまうだろう。


 しかし、それはたった今、竜系の雌豚(北庄真央)、ハーフエルフ系の雌豚セリカ・シーリング、厨二病近親相姦希望雌豚(凪紗南りりす)から聞いた限りの盗賊王 マーク・リバー戦では可能性が薄いだろう。

 結局、酒飲み雌豚(美麗幼子)の医者としての腕に掛かっている。


 さて、お互いが今日、何処で何をしていたのかの情報を交換し合った後は、イヴも雌豚達と私が仲良くする事を望んでいる。※イヴの気持ちを解らない私ではない。

 早速、私が先頭を切って話題提供をしなければ、あまり、イヴと姉上、妹以外の生き物とコミュニケーションをとったことはないが……大丈夫! 3人ともアイシャは優秀だと褒めてくれている。主にイヴに近寄るゴミ豚の処理の素早さに関して。


 アイシャ「では、雌豚の皆さん……」


 緊張して雌豚と私は言ってしまった。どうも、嘘をつけない真実を探求する善なる性格が仇になっているようだ。

 気をつけなければ……。


 呆れて竜系の雌豚……違う、これだと咄嗟に雌豚と呼んでしまう。心の中も欺くのです、自分自身を。


 仕切り直し。


 呆れてサラサラな苺色のセミロングヘアをつまらなそうに弄んでいる真央がいつもの「勘違いしないでよね。あ、あんた達の為に会話の進行を引き受けたわけじゃないからね!」スキルを発動しようとしている。セリカ曰く、「ツンデレですわ」らしい。よく解らないがツンデレは、恥ずかしさのあまり自分の思っている事とは正反対の事を言ってしまう性格のことを言うらしい。


 真央は世話を焼きたそうに背中の羽根をぱたぱたと動かしている。しかし、ここは私のターンだ。

 真央が口を開く前に……私が再度、口を開く。


 アイシャ「では、同じイヴの婚約者の皆さん。特に近親相姦希望厨二病皇女は皆さんの事をよく知らないでしょう。近親相姦希望厨二病皇女を構って友好を深めましょう」


 そう言うと、りりすは黒猫 リルを抱いて撫でながら、無表情&棒読みで私の言葉に対して回答を寄越す。………さすが、ラスボスこと華井恵里の娘だけあって、ペルシャ猫ならぬ黒猫が似合う。


 りりす「聖剣使い。我のプリンセスネームに悪意を感じるのだが……気のせいか?」


 我ながら良い渾名だと思うのですが……りりすには気にくわなかったようだ。だが、そんな態度を表情にも、口調にも出していない。

 ただ、リン前女王様の元専属メイド兼料理人 ナリスが用意してくれた珈琲に口をつける。


 真央「だいたい、合ってると思うわよ。あんた、お姉ちゃん大好きでしょ。厨二病キャラの妹は古来よりそういう宿命にあるのよ。はいはい、テンプレ、テンプレ」


 真央がいつものように絶好調といった口調で喋った。


 セリカ「はい! イヴちゃんの事を嫌いな妹はいません」


 セリカは必死な形相で賛同する。考えてみれば、私、セリカは妹を溺愛している。この反応は当然か。


 アイシャ「では、呼び名は近親相姦希望厨二皇女でいいですか?」


 りりす「待て、待て……我のプリンセスネームが何故、眼が悪魔契約の行使をし過ぎたように死んでいる聖剣使いなんぞの一存で決まる?」


 黒猫 リルがりりすの飲んでいた珈琲を猫パンチで倒そうとするのを、りりすは黒猫 リルの身体を持ち上げて阻止する。


 セリカ「あら? 近親相姦希望厨二皇女ちゃん。質問を質問で返すのはお行儀が悪いですわ。それではイヴお姉ちゃんみたいに立派なボランティア精神は育ちませんわ」


 りりす「我のプリンセスネームがぁ」


 まさか、ほんわかとしているセリカにまで、その渾名で呼ぶとは思わなかったのだろうりりすは頭を抱えて、「おのれ……我の自尊心が」と西洋人形のように動かない表情で呟く。


 黒猫 リル「にゃん、にゃんにゃんー」


 と、りりすの黒猫 リルを持ち上げた手からするりと逃げて、りりすの肩に昇る。


 セリカはりりすの前に書類をすっーとさも、自然に置いた。当然、顔を下げているりりすの視界にはそれは入らない。


 りりすは顔を上げて、私達に宣言する。


 りりす「事実だと? 我は厨二病ではない! 真なる闇の漆黒のプリンセスぞ。それにイヴお姉様の事は様々な実績を調査して……なんだ? ほのぼのエルフ姫? これは……」


 やっと、自分の前に置いてある書類に気づいたりりすは素早く、銀色の色彩を忙しなく、動かして書類の内容を確認する。


 りりす「ボランティア団体 猫のしっぽ 入団書類? 入らんぞ」


 セリカ「わたくしと契約してボランティア少女になってよ」


 りりす「……我は入らんぞ。そんな魔女の会には」


 セリカが何やら、りりすの耳元で良からぬ事を吹き込む。


 そして、りりすが「イヴお姉様、目当てではない」と呟きながら、古代魔法? を発動させて書類をここではない、別の空間にしまいこむ。


 アイシャ「ちゃっかり、猫のしっぽの書類を仕舞ってますね」


 真央「あー、もう、近親相姦希望厨二皇女が本当にその渾名で合っているか? クイズで決めるよ。題してイヴクイズよ」


 りりす「面白い受けて立とう」


 セリカ「わたくし、りりすちゃんは全問正解すると思いますわ。お姉ちゃん大好きオーラに溢れていますわ。マリアちゃんと同じです」


 真央「第一問 イヴの大好物は何でしょう?」


 りりす「マクドファルドの照り焼きバーガー」


 アイシャ「本当にそれでいいのか、本当にそれでいいのか、近親相姦希望厨二皇女」


 私はわざとらしく、時間をたっぷり掛けてりりすの瞳を覗き込む。しかし、りりすは微動だにしない。


 りりす「くどい」


 と一言、ドSな笑いを浮かべるだけだった。どうやら、得意の無表情も人の心を折ったり、嫌がらせる一言を言う際には悦に入るようだ。

 なかなかの変態性を秘めたイヴの妹、凪紗南天皇家がするであろう未来様による再教育はこのドSをどう変えるのだろうか。せめて、イヴには従順な雌豚になって欲しいものです。


 真央「正解ね。まぁ、これは初級問題だからね」


 セリカ「第二問 イヴちゃんの特技は何でしょう?」


 その質問に対して、1秒も立たないうちにりりすは回答を寄越す。


 りりす「速読、速記。そう、週刊女性誌 サンウィザー 去年 4月の第二週号に書いてあった」


 真央「………詳しいじゃねぇーか。少なくともマニアだよ、これ。正解、と」


 *


 真央「うげ、結局、公開されているイヴの情報を全て、りりす第二皇女! 正解した。あんた、シスコンだわ、本当に」


 アイシャ「では、近親相姦希望厨二皇女に決定します」


 セリカ「わぁーぱちぱち」


 悪意のない天然ハーフエルフ セリカの拍手が公園内に響き渡る。


 そのりりすに親しみを婚約者達が保つ為の渾名に待ったをかけた人がいた。私達 4人が席に着くテーブルの周囲を護衛していた眠そうな新羅咲良、真面目な雨雲英さんのうち、英さんが気まずそうに言う。


 英「大変すいませんが、日本の皇女様をそのように言うと……各国の印象が悪くなります。りりす様の渾名はなしの方向でお願いします」


 りりす「実にくだらなく、無駄だな時間だったな、イヴお姉様と結ばれし運命の乙女達よ」


 うわぁーと思わざるを得ないとても、ドSな笑みと人を蔑むを通り越して氷のような銀の瞳が爛々と輝いている。


 アイシャ「雌豚、一つ、言っておこう。真央以外の雌豚達はお前より年上です。敬いなさい、雌豚」


 りりす「ふっ、我は人間の常識には収まらない闇のプリンセス。我は能力の高いモノを敬う。この世は弱肉強食」


 セリカ「焼き肉定食! 美味しそうですわ! ぜひ、わたくしもその際はお供しますわ」


 真央「ベタなボケを入れるな……、収集がつかないしー」


 セリカ、真央の言葉をBGMに私とりりすは、私はいつもの豚撃退用視線、りりすは感情の表れていない銀の視線で睨み合う……。


 私は思った。


 イヴの妹とはどうやら、相性があまり、よろしくない、と…………。

 すっーとりりすの手が私の前に差し出される。

 私はその手を握り締めた。

 両者共に互いの手に力を込めてゆく。

 ……

 ………

 …………

 先に根を上げたのは……私だった。


 アイシャ「雌豚、Level、いったい幾つ?」


 りりす「我を含め、我の下僕達は皆、出生届けを提出しておらん。無論、役所で出生届けを出した時に発行される身分証明書を含んだステータスカードを所持していない」


 英「それは早急に手配しなければなりませんね」


 りりす「少なくとも我よりアイシャ、真央、セリカは弱い。これからのお母様のドSないたずらにとても、耐えられぬ」


 りりすの言葉を聞き、私、真央、セリカは口を噤んだ。

 目の前で華井恵里という存在の化け物ぶりを見てきた実の娘が言うのだから事実だろう。

 事実だからこそ、これからどうなるのだろうと不安が広がる。


 その不安に対して、華井恵里の強さを承知である英さんが朗らかに微笑み、言う。


 英「大丈夫ですよ。僕が護りますから、少しは信用して下さい。これでも元勇者パーティーの一員ですよ」



 *


 10分後、イヴが眼を覚ましたという連絡が、私達がりりすの使える魔法の確認をしている時に入った。

 痛み止めを打ち、これから本格的な手術の開始という時に起きたようだ。

 すぐに自力で治癒魔法を唱えて回復したイヴは今、高速戦闘輸送機内のバスルームで汗を流している。


 その連絡を受けて私達 4人はそれぞれに喜んだ。


 アイシャ「これで今回の事件の山場は越え、イヴも無事。ですが、私がいれば、盗賊王なる豚を聖剣で滅多斬りにしたのに……不覚」


 真央「よっしゃああ、あたしのイヴが復活したぁああ!」


 セリカ「これでイヴちゃんといつものように復興ボランティアができますわ」


 りりす「………あれだけの戦闘でもう……。ポテンシャルが我の想像よりも……。いや、今は我もイヴお姉様の無事を喜ぼう」







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