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創世する世界のイヴ # Genesis to the world's Eve  作者: 遍駆羽御
本編―――― 第2章 1000キュリアの祈り
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第71話 HP1の死闘 イヴとりりすの出逢い編

 第71話 HP1の死闘 イヴとりりすの出逢い編


 視点 神の視点  ※文法の視点名です。

 場所 クイーン王国 イクサの森 洞窟内部

 日時 2033年 4月4日 午後 6時53分



 マーク・リバーは神の威圧に触れて、慄然としていた。しかし、それを追うように怒りがこみ上げてきた。今、木の化けものと化した彼を動かすのは……目の前の銀髪の女王様に対する怒りと、妹 クイナに対する愛しみである。

 先程、ステータスカードで確認したステータスはやはり、Levelが低下していた。


 Level 77→22

 HP 570000→110000 素質 devil

 MP 800000→33000 素質 devil

 SOUL 679000→220000 素質 devil

 STRENGTH 28900→8900 素質 devil

 SPEED 45000→20000 素質 devil

 MAGIC ATTACK 22870→10500 素質 devil

 CONCENTRATION 32900→22000 素質 devil

 DEFENCE 12000→4500 素質 devil

 MAGIC DEFENCE 10000→4400 素質 devil

 INTELLIGENCE 9000→2777 素質 devil

 属性適正 風・闇

 常識外魔法 ――――

 武術 人間系


 装備

 人の魂を喰らい育つ名も無き触手 攻撃 24900 魔法性能力 12000 レア度 goddess 自由自在に伸縮、刃先を変える事で剣、大剣、槍、拳、盾にもなる。盾の場合は物理防御・魔法防御 2倍。

 トランクス 物理防御 0 魔法防御 0 レア度 N



 だが、まだ、勝てる! と自分に言いきかせた。

 妖精魔法 クリアにより、消えた凪紗南イヴが何処にいるのか、精神を集中させて探そうとする。


 マーク・リバーは元々、技や魔法の才に恵まれていなかった為、それらを取得する学科では無く、商業学科に進んでいた。

 幾ら、彼が精神集中した処で習っていないのだから、魔力やSOULの流れを感じ取る事は不可能だ。


 もし、マーク・リバーが戦いの才がなくても、戦いを主目的にした学科に進んでいたら、この戦いの結末は違っていただろう。



 視点 凪紗南イヴ

 場所 クイーン王国 イクサの森 洞窟内部

 日時 2033年 4月4日 午後 6時54分



 予は妖精魔法で姿を消して、魔王の魔眼で決定した戦略通りに動こうとした。


 一歩、進んだ瞬間、右脚が折れた。

 治癒魔法 ヒールを心理詠唱式で唱えて回復させる。


 一歩、進んだ瞬間、左脚が折れた。

 治癒魔法 ヒールを心理詠唱式で唱えて回復させた。


 それを何十回と繰り返す。

 息は上がり、体力は何十回とピークを過ぎ、その度に精神力は削られてゆくが、まだ、魔法や技を使用する精神力は残っている。


 予はお母様と約束した。

 ”優しい世界を創るまで”、負けるわけにはいかない。

 激痛に歯を食い縛って、見えない予の姿を探しているマーク・リバーの腹部に両手で触れる。その両手から伝わってくる感触は人間の身体ではあり得ない堅さだった。もはや、木そのもの特性を保っているのだろう。

 そこに予は同情はしない。


 殺しすぎた。

 その一言のみである。だからこそ、マーク・リバーにとっての救いは転生宮で兄の姿を眺めているであろう妹 クイナにこれ以上、無様な姿を見せないことだ。

 だからこそ、全力でやる! そこには慈悲はない。救いのみ、存在する。


 魔力を両手の平に集中させて、銀色の光が両手の平を輝かせた。

 心理詠唱で唱えられたAランク光魔法 フォトンオーラがマーク・リバーの腹部に炸裂する。

 それを成した瞬間、予は妖精魔法 クリアを維持できなくなり、クリアの効果は自然消滅した。


 イヴ「かはぁ……」


 低い呻きと共に地に両手を突いて……吐いた鮮血が地面を汚した。


 しかし、闘う意志は失わずに、

 マーク「この化け物めっ!」

 と、マークが叫びながら、銀色の光の粒子の束に押されるようにして、真央が竜魔法で大穴を開けた箇所からイクサの森へと吹っ飛んでゆく姿をじっと、眺める。


 まだ、まだ、とどめを刺さないといけないと、立ち上がろうとする。

 脚がよろめき、再び、地面に伏しそうになるが、セリカが肩を貸してくれた。

 直ぐさま、心理詠唱式の治癒魔法 ヒールを唱える。


 セリカ「イヴちゃん、独りで闘っちゃ駄目ですわ。わたくし達は親友であり、恋人であり、婚約者であり、家族ですわ」


 イヴ「すまないのだ」


 そのやり取りの傍を真央がハイパーポーションの空瓶を握り締めて走り抜ける。

 真央は口から竜魔法 ウォータードラゴンブレスを放つ。

 強烈な水圧の奔流が吹き飛んで中空に浮いているマークの削られた腹部に命中する。

 傷口に染みるのか、森の中に響く程の悲鳴を上げて、木々を何本も背で押し倒した。


 マークが昏倒して倒れかけている処を真央がハイパーポーションの瓶を投擲する!


 真央「いい加減、ウザイのよ。あんた、雑魚キャラが不相応な力で強くなった癖に!」


 その怒り心頭の真央が投げたハイパーポーションの瓶はマークの生い茂った葉の頭部にぶつかり、硝子の欠片になってマークの頭部に降り注いだ。

 セリカが予の背中を押す。


 セリカ「イヴちゃん、これで決着! 次はドラゴンと盗賊残党退治にlet's goですわ!」


 真央「行きなさいイヴ! 決着よ!」


 るーちゃん「ヴァンパイア族の姫らしく、邪神の手下を屠るのじゃ!」


 エレノア「イヴ様。悲しき魂のしらべに最後を」


 イヴ「マーク・リバー、覚悟! セイントランス、セイントランス」


 と、予は光魔法 セイントランスを神と古代魔法にしか成せない同じ魔法を同時に唱えた。

 左手と右手にセイントランスを握り締める。


 まだ、セイントランスが足りないと予は考えて、洞窟からイクサの森へと走り抜けた時に予の上空にセイントランスを10本、浮かべる。


 マークは残りの力を使って、枝と化した右腕を伸ばすが……1㎜伸びた時に予の魔王の魔眼が未来を予測し、予の脇腹に突き刺さるコースだと算出する。


 マーク「妹 クイナを失った恨み!」


 と叫び、マークの右腕が伸びた。

 枝の一直線上の攻撃を予は辛うじて避けるが……少し脇腹を傷つける。

 この少しがHP1にする。

 ヴァンパイア王族の血の構築された紅いコート プリンセススペル インフィニティコートがHP1に留めてくれた。


 身体が崩壊し続けるので全身にかけられた治癒魔法 エンジェルヒールが脇腹の傷とHPを全回復させる。


 白銀の雪が揺らめく世界で予は右手に握り締めたセイントランスを腰のバネを溜めて、マークの右腕に突き刺した。突き刺した勢いでマークの身体は岩壁に縫い付けられる。

 さらに左手に握り締めたセイントランスをマークの左腕に突き刺す。

 外れないように中空のセイントランス 10本のうち、2本を引き寄せて、マークの両腕にそれぞれ一本ずつ縫い付けて、右脚、左脚にそれぞれ2本ずつ、突き刺した。

 その一連の動きはわずか、数秒で成した。


 残り4本のセイントランスの中から、一本引き寄せて、予は容赦なく、マーク・リバーの首を切り落とす為に振るう。

 マークは藻掻きもせずに……予の金と銀のオッドアイを睨み続ける。


 マークの怒りに燃える瞳が予に無言で言っている。

 ”魂のしらべすら、消滅してもイヴ女王を憎み続ける”、と。


 全ての人間がわかり合える。そんな理想を予は信じていない。

 予にできる限界は多くの人間がわかり合える世界。

 そこが人間であっても、神であっても、限界なのだと強い意志を保って、予はセイントランス――――光の槍でマークの首を斬り薙いだ。


 マークの首だけが木の形から、元の人間の金髪の男性に戻った。実に悲しい表情を浮かべたまま、草むらに転がった。


 1時間後、マーク・リバーの濁った魂のしらべが身体からすり抜けて、すぐに消滅するだろう。それが己に過ぎた力を宿した者の末路だ。


 予はセイントランスを解除して、歩いてくるルルリの姿を見た。

 猫ちゃんポーチから予のお母様 リン・クイーンが描かれている1000キュリア星を取り出し、手のひらに載せてルルリに示す。それはルルリから自分のママを助けてくれと言われた依頼料だった。


 ルルリ『ルルリ・ミカサギです。お願いです、女王様! ママを探して! 女王様は勇者様の娘様なんでしょ。勇者様の娘様なら、きっと………』


 予は数時間前に耳にしたルルリの言葉を思い出して、涙を流した。

 蘇生魔法 リヴァイヴには限界が存在している。それは死ぬ原因となった事柄が精神を強く傷つけた場合に濁った魂のしらべからは人間を蘇らせられない。

 その例がルルリのママにはおそらく当てはまる。

 詳細は転生神 ローナに聴いて見なければはっきりとしていないが経験上、解るのだ。


 蘇生魔法は予も過去、お母様を蘇らせたくて…………テスラ・リメンバーと長年、研究を続けた魔法の分野なのだから。


 もう一度、犬耳としっぽをぴんと逆立てて、予を傷つけそうな勢いのある瞳で睨み付けているルルリに言う。


 イヴ「予はルルリのママを生き返すことはできないのだ。それは――――」


 ルルリ「そんなのどうでもいいです! 生き返せ! 化け物!」


 イヴ「え…………」


 優しくてちょっと、臆病な幼いルルリの口から”化け物”と発せられたのが信じられなかった。予は思わず、呆然としてしまう。

 ルルリは予が見ているのに構わず、鼻水を啜りながら嗚咽の中にか細い声を混じらせて予を責める。


 ルルリ「あんだけ、強いのです! それに”あんた”は神様なんでしょ。ルルリのママを生き返らせるはずなのです! 生き返らせろ、この化け物!」


 ルルリは予の胸を何度も叩いた。

 その度に予の心が削れてゆく…………。

 今のルルリは昔の予と同じだ。


 予は予自身の蘇生魔法を憎んだ。

 そして、ルルリは予を憎んだ。

 そうしなければ、何処へぶつけたらいいのか? わからない嘆きの居場所が無くなってしまうから。そうなれば、心が壊れてしまうから。

 だから、予は優しく微笑んで、ルルリの長い黒髪を撫でた。


 イヴ「できないのだ、ルルリ。予の蘇生魔法では濁った魂のしらべに効果を及ぼすことはできない」


 ルルリ「そんなの…………」


 かつて、予は蘇生魔法 エデンが予の望んだ効果に達していないと知ったとき、みんなを傷つけて全てに怒りをぶつけた。

 愛する者に二度と会えないルルリの悲しみが地面に雨を降らせる。とても、悲しい、悲しい雨だ。


 ぽつん、ぽつんと降り注ぐ嘆きの雨に予の心は耐えきれず、神化とプリンセススペル インフィニティコートが自然に解けた。

 一挙に押し寄せる疲れと共に鋭い痛みを感じた。


 驚いた。

 その感想、一言だ。

 予の腹部に鋭く磨かれたナイフが突き刺さっていた…………。


 真央「嘘!? ルルリ、あんた!」


 セリカ「ルルリちゃん………」


 エレノア「無礼な!」


 るーちゃん「なんと……」


 煌めくミスリルナイフを握り締めたルルリはさらに予にダメージを与えようと、ミスリルナイフを掲げる。

 月夜に照らされたナイフの刃がきらりと一瞬、煌めいた。


 ルルリ「そんなの……そんなの……嘘に決まっているのです! さっさと! ママをこの世界に戻して! ルルリは幸せに生きるのです!」


 ああ……予は間違えた。

 何処で間違えたのだろう。きっと、人間の感情を計算に入れてないからだ。

 計算なんてできるのだろうか?


 痛みと寒さの中で腹部を押さえた手のひらを腹部から離した。そして、眠たいくらいに疲れた身体を老木に預け、座り込んだ。

 腹部を押さえていた手のひらを見ると……べっとりと血が付着していた。

 乾いた笑いが零れた。

 無様だ。


 イヴ「エレノア副妖精女王! 真央! セリカ! ルルリが予を傷つけたことをなかったことに………」


 腹部の力を振り絞る。腹部から血が吹き出た。

 悲鳴を上げそうな痛みを堪える………。


 イヴ「………するのだ!」


 エレノア副妖精女王様やセリカ、真央に伝わっただろうか……と考えた瞬間、ルルリと予の間にこの場に使える者がいないはずの古代魔法 アーク シャイニング ブレイクという古代魔法で構築された光の聖剣が深く、地面に突き刺さっていた。

 その聖剣に費やされた魔力の威に予はぞっとした。

 この魔法の使い手が予達の敵ならば、余裕で1000回以上は殺される。


 ルルリの背後に予達では感知できない速度でその魔法の使い手は回り込んだ。

 予は手のひらの中にあるルルリからの依頼料である1000キュリア星を無意識により強く握り締めた。


 夜の闇よりも尚、深き闇を具現化した腰まで伸びた黒髪が美しかった。

 黒髪に合ったゴシックロリータ風のドレスがこの戦場に場違いな程に可憐だ。

 予の背と体型がうり二つの小学4年生体型。

 凪紗南天皇家の者しか保たない血族だと示す白銀の瞳。

 そして、指にはまった予のクイーンリングと、凪紗南天皇家の宝剣を帯剣していた。


 予の他に日本の皇女は………

 未来『お前の父親 凪紗南春明とお前の仇 華井恵里の娘。私の、いや、私達、凪紗南天皇家の間では”ベリティリ”と呼称している』

 そうか………予の妹。


 どことなく、歌手のGarden of the GodsのLilithに似ている。

 いや、瞳の色だけ違う。


 その黒髪の少女は無表情のまま、棒読みで話し始める。


 ???「我は凪紗南りりす。日本の頂点 凪紗南天皇家の第二皇女。イヴお姉様、脆弱すぎるのによく、倒したぞよ。さすがは白銀の魔力の雪を振りまきし姫、我がお姉様」


 どうやら、褒めてくれているようだ。


 イヴ「………嬉しいのだ。妹に褒められたのだ…………」


 そんな感情を残して、予は意識を手放した。



<盗賊王 マーク・リバーを倒した>

<凪紗南イヴがLevel 37になった>

<セリカ・シーリングがLevel 41になった>

<北庄真央がLevel 43になった>

<ルルリ・ミカサギがLevel 17になった>





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