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創世する世界のイヴ # Genesis to the world's Eve  作者: 遍駆羽御
本編―――― 第2章 1000キュリアの祈り
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第63話 イヴちゃん、家出するってよ 記憶編

 第63話 イヴちゃん、家出するってよ 記憶編


 視点 凪紗南イヴ

 場所 ????

 日時 2033年 4月4日 時間凍結


 意識が黒く塗りつぶされた後、PCが再起動したみたいに周囲の景色が突然、変化した。


 1度目に見た通り、この都市――――イカロスには人の影が全くない。かと言って、人間の暮らしている素振りはあるのだ。

 イカロスのある心象世界? は時間帯がまだ、太陽が真上にある昼時なのだろう。すると、予の過ごしている世界とは約6時間の時間差がある。

 お昼時だと示すように、家々からは美味しそうな匂いのする煙が上がっている。異世界 リンテリアではかまどが普通に使われており、その煙を逃がす煙突が備え付けられていた。

 白い煙は主にパンの匂いを運んできてくれる。


 米が主流になったのは、勇者であるお父様が日本の主食を食べたいが為に、国々に米の基本的な作り方を伝えてからだ。

 お人好しでビブリオマニアなお父様は米で利益を獲得することには興味がなく、おかげで技術料の中間マージンがパンよりも少なくなっているので平民を中心に爆発的に広がった。今では貴族の間にも広がり、品質の良いSSSランクのペガサスやグリフォンの肉をご飯に乗せて甘辛いドラゴンフルーツソースに漬けて楽しいんでいる。これを一般的にドラゴン丼と呼んでいる。


 イヴ「予はパンではなく、ドラゴン丼が食べたいのだ。やはり、予も日本人、米が食べたい時もある。大抵は照り焼きバーガーだが、な。しかし……人間が見事にいないのだ」


 失われた都市 イカロスのある心象世界? には人間の気配が幾万もある。それらが生きている気配なのか、どうか、予は生者の察知を心理詠唱式で唱えて確認する。

 ……

 …………


 イヴ「一応、あの気配は生きているってことのようだ」


 さて、予が求める過去への扉に向かわなければ、思い出さなければ、と思案した時、目の前に唐突に空色の扉が現れた。

 予はそれが前回と同じ色をしているので、過去を鮮明に思い出す為の扉だろうと理解した。


 予はその扉を迷わず、潜り抜けた。



 視点 凪紗南イヴ

 場所 地球 旧世界 東京都全域、新世界 東京都 凪紗南市 南屋の牛丼店 凪紗南天皇支店

 日時 2032年 8月17日 午後 5時30分


 イヴ「家出に付き合って欲しいのだ!」


 予は南屋の牛丼店の自動扉が開くと同時に、午後6時にバイトが終わる予定の真央に声をかけた。いや、一方的に宣言した。

 真央は予の初めての家出宣言に「はぁ? お前、何言ってるんだ? 頭は大丈夫か?」っていう微妙な微笑みを浮かべた。そして、予の方を向かずにお客さんが食べた牛丼の食器を厨房へと片付ける。


 真央「なんで、あたしが付き合うのよ。あたし、今日はコミ……ううん、夏休みの友っていう全然、夏休みの友じゃない、むしろ、敵を片付けなくちゃいけないから。宿題しなきゃいけないから」


 厨房内から、真央はそう言うが、真央に来てもらった方がなんか、心強い。

 真央は勇気ある姉御肌な感じがする。


 他のお客さんが牛丼を食べる手を止めて、予、アイシャ、セリカの一挙手一投足に注目しているが、そんなにおかしな行動は取らない。

 早速、予は席に座り、パンパンに詰めたリュックサックから、照り焼きバーガーを取り出した。少し潰れてしまっている……。仕方ないなぁーと残念に思いつつ、予は照り焼きバーガーをここまで保護してくれた包みを剥き取った。


 セリカ「あら、わたくしが手伝って差し上げますわ。困っている友人を助けるのは当たり前なことです」


 セリカは予の隣の席に座り、パンパンに詰めたリュックサックから、林檎を取り出した。そして、我が子のように林檎に頬ずりした。


 真央「ってか、宿題ってのは自分で片付けるものよ。そんなのRPGでデータを改竄してチートするみたいなものじゃない外道よ。あたしは地道に努力してRPGも、勉強も、バイトもする派なのよ」


 真央は厨房で皿洗いをしながら、セリカの申し出をきっぱりと断った。

 さすが、真央! 努力する素晴らしさを知っていると予は真央に対する好感値をアップさせた。しかし、既に真央の好感値は結婚したい! くらいの数値にある。カンストだ。


 アイシャ「良いこと言っているように見えますが、イヴ、当たり前ですからそんなに感心しないで」


 アイシャは当たり前のように予を持ち上げて、予の座っていた席に座り、自分の膝の上に予を乗せた。

 これで安心、と予の白銀の髪を一撫でした後、パンパンに詰めたリュックサックから、お握りを取り出した。

 予の背負ったリュックサックにアイシャのCカップの豊満な胸が圧迫されているのにいつものクールな姿勢を崩さず、お握りを包んでいた銀紙を剥がすのに集中する。ちなみにお握りの大きさは普通サイズの4倍だ。


 イヴ「勤勉な勉学に打ち込む姿勢を人間はなかなか、出来ぬのだ。予も真央を見習いたいぞ!」


 真央「あんたの方がクイーン王国の公務や学校の事、マクドファルド、ポーション生成――――」


 真央は私立藍心あいしん学園の制服の上に着けたアニメ調の豚のロゴが中央に位置している緑茶模様のエプロンを翻して、予達の座る席へと持ってゆくのだろうお水 3杯を載せたお盆を両手で持ったまま、固まった。まるで石像みたいだ。


 真央「――――あんたら、普通に飲食店は当店以外の食べ物を食べるの禁止なんだけど、一体、いつになったら覚えるのか……」


 何か、心底呆れて、照り焼きバーガーを口いっぱいに頬張る予や林檎を超高速で食べながらもおっとりとした表情を浮かべるセリカ、実に不味そうにお握りを食べる(表情が顔に出にくい性格なので……)アイシャを順番に指差した。


 いつもの予、アイシャ、セリカ、真央の騒がしいやり取りにお客さん達が拍手を送る。

 予達を代表して、真央がお客さん達にお辞儀をする。


 真央「……若手のコントかよ、これ」


 と、お客さん達に聞こえないような声量で真央が呟いた。


 真央はそれぞれに水を手渡すと、両手でテーブルに手を突いて予の顔を覗き込んだ。


 真央「で、どうして、家出なんてすんのよ? あんた、イヴカードがあるから位置バレバレよ。それ以前に捜索隊がもの凄いことに」


 イヴ「イヴカードか、あれは置いてきたのだ。明日葉から借りた漫画に則り、クイーンリングを外して、代わりにリュックサックに必要な物を詰めてきたのだ」


 真央「それ、見た時、あんた、これから不思議なダンジョンに出向くのかよって思ったわ。クイーンリングがあれば、空腹を100%防げて便利ね。そのクイーンリングも置いてきたってあんた、馬鹿?」


 アイシャ「イヴは馬鹿ではありません」


 予の頬に付着した照り焼きバーガーのかすをハンカチで拭きながら、そう力説した。


 アイシャ「イヴは無邪気なんです。存在そのものが天使なんです」


 セリカ「そうですわ。イヴちゃんは天使さんなんです」


 真央はそんな意見に手を振りながら、半笑いで、

 真央「はいはい、その天使なイヴちゃんは何故、初めての家出をしたんでちゅか? 早く答えてでちゅ、鬱陶しいでちゅー」

 と言った。


 そう、予には家出するに値する正当な理由がある。

 未来お姉様は予の逆鱗に触れたのだ! 未来お姉様が謝罪し、何らかの適切な処置をするまで予は徹底抗戦する!


 怒りで握りしめた照り焼きバーガーからマヨネーズが飛び出てしまった。もったいない。


 イヴ「未来叔母様が予の妹と思うくらい可愛がり、応援しているLilithのプレミアムコンサートチケットをあろう事か、ゴミと間違えて捨てたのだ。気づいて……リイーシャにゴミ箱の中身の行方を聞き出して……ゴミ処理場まで…………神化と基礎魔法 スピード ゲイザー、イデアの魔眼を駆使して辿り着いたら……もう、遅かったのだぁ」


 何だか、その時の悲しみがぶり返してきて、予は両腕に顔を埋めて、テーブルをガンガンと叩いた。


 アイシャ「なんて、可哀相なイヴ」


 セリカ「ええ、徹底抗戦ですわ!」


 真央「ねぇーよ……。こんな皇女様で日本は大丈夫なのだろうか? あたしはこの後、家出に付き合うのだろうか……。あたしが泣きたい。原稿がぁ……」






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