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創世する世界のイヴ # Genesis to the world's Eve  作者: 遍駆羽御
本編―――― 第2章 1000キュリアの祈り
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第62話 おとまりDays 魔法の基礎 記憶編

 第62話 おとまりDays 魔法の基礎 記憶編


 視点 凪紗南イヴ

 場所 シーリング王国 特設訓練地区

 日時 2032年 12月28日 午前 6時25分



 暖かい気候に恵まれている土地柄、シーリングの景色は常に緑に満ちあふれている。今日も寒いとはいっても、気温が11度だ。そんな気温でも少し、寒く感じてしまうのだから、予はひ弱と皆に認識されるのだろう。

 暑さに強く、寒さにも強いエルフの国の代名詞とも人々から言われている木々が元気よく、伸び始めている。この木――――ニクイムの木は朝 6時~8時に成長する性質を備えている。その成長速度は1時間で7mも成長する。

 ニクイムの木々の成長した部分を剪定するのはエルフ達の朝の日課だ。


 郷に入っては郷に従う。

 予にもそんな言葉を今日まで実行してきた勤勉な日本人の血が流れている。勿論、参戦する。

 自分の魔法で飛ぼうと思ったのだが、ハヤトシーリング王に、「何かの間違えでイヴちゃんが墜ちたら……僕のシーリング王国に絶対、クイーン王国軍が攻めてくるから止めてね。イヴちゃんのお母さんの時代からあの人達、何かに取り憑かれたように忠臣に厚いからね」と半泣きで止められた。


 ならば、予はどうするか?

 答えは簡単。真央に乗せてもらえば良いのだ。

 真央の背中には予、アイシャ、セリカが乗っている。アイシャが予の身体に覆い被さり、ほんわかとした暖かさに包まれている。


 アイシャ「これなら、上空でもぽかぽかです、イヴ」


 イヴ「あのー、アイシャ。それだと予の威厳がマイナスになるのだ……」


 セリカ「まぁ、仲良しさんですね。わたくし、も!」


 弾んだセリカの声と共に少しの揺れが。

 どうやら、セリカがアイシャにぴったりとくっついたようだ。

 確かに……暖かくて良いのだが、大勢の人間にちらっ、ちらっと、見られている。その見てくれちゃっている人達は今回のクイーン、シーリング、北庄、リンテリア教会、4勢力合同の軍事訓練の参加者だ。


 話し合いでこの配置に決まったクイーン王国の陸軍騎士や海軍騎士、王族守護騎士がペガサスに騎乗し、予達や未来お姉様や今回の訓練に軍務大臣 クロウス・ハウゼンが国の防衛の為、離れられないので、その責任者としてクイーン王国の宰相、文部大臣を兼務している真田心愛を護るようにして、円形のように陣を整えている。さらに北庄源に真央が「イヴを籠絡させるにはご近所付き合い的なモノも大切なんだよ」と懇切丁寧に未来お姉様を初めとするお強いイヴ派に属する力をちらつかせて連れてきた北庄軍が竜変身をして、クイーン王国の陣を強化している。ちなみにまだ、子どもの真央と違って、大人の竜族の竜変身はHP減少や極端な疲労がない。一日中、自由に飛び回れば、大人の証だそうだ。どの竜変身もがたいが大きくて、人間ではあり得ない足や腕の筋肉や強大な力を秘めている爪は脅威だろう。


 その竜族の雄々しさを横目で真央竜が眺めて溜息を吐く。


 真央「竜族ってアリス族よりも遙かに強いのに……イヴと仲良くしないとジョーカーさん、未来お姉様、英さんを筆頭にした十家にボコボコにされるわよって事前に注意しただけであそこにいる竜、びびって震えてるのよ。古来より、竜はあらゆる生物を絶滅させてきた破壊の権化だと歴史が伝えているのに……ごらんの通り、この有様」


 真央の言葉を裏付けるように、竜族全員がペガサスに騎乗している銀色ツインテールの悪魔 凪紗南未来お姉様の様子を窺っている。


 未来「何か用か? 竜族の方々?」


 そう、未来お姉様が声を掛けただけで……竜族の羽ばたきが乱れる。動揺しすぎて、ニクイムの木を材料に建築された家屋に接触事故を起こしそうになる。その度にクイーン王国、竜族の外側で板状のエルフボードに乗ったエルフが注意を促している。


 エルフ女性魔法騎士1「竜族さん、危ない。ああああ……温泉がぁ」


 エルフ男性魔法騎士1「おい、ちゃんと飛んでくれよ。また、民家にぃいい」


 エルフ男性魔法騎士2「酔っぱらってるんじゃないですかね……」


 エルフの乗るエルフボードはエルフの森の自然の声とコミュニケーションを取る技術を応用して、風に頼んでエルフボードを浮かせてもらっているらしい。最初の浮くができれば、後は自分の魔力で操縦可能だ。しかし、これには弱点があり、多くのコミュニケーションを数百年と続けたエルフの地でしか、エルフボードを浮かせる程の力を発揮できない。


 エルフの魔法騎士達を観察すれば解るのだが、随分と器用に空中で一回転したり、前を向いたまま後退したり、と曲芸師みたいだ。その曲芸師の極致にいるのが、予達の騎乗する真央竜の傍で観覧車のようにぐるぐる、回っているエルフの国 シーリング第二王女 マリア・シーリングだ。7歳児らしく元気である。


 マリア「今日は調子が良いですわ。もっと、くるくる回りますわ! 世界がぐにゃぐにゃにふやけて見えますわ」


 そんな娘を止めようと、ハヤト シーリング王が声を掛け続けている。


 ハヤト「や、やめてぇー! 危ないよ、マリアちゃん。本当に危ないんだから。毎年、調子に乗っちゃった困ったさんが大怪我してるんだよ!」


 マリア「へ、平気ですわ! 大怪我してもイヴお姉様が治癒してくれるもん。へっちゃらですわ!」


 怪我しても治癒してくれる。そう無邪気に大口を開いて笑うマリアの言葉が予の背筋を凍らせた。

 確かに今まで、予はちょっとしたかすり傷でも、マリアを治癒してきた。


 マリア『ありがとうですわ。イヴお姉様。わたくし、お姉様、大好きですわ。ですから、セリカお姉様と早く、結婚して本当のお様になって下さいね』


 そう言ってマリアはよく腕にしがみついて、自分の桃色のショートカットヘアを予の腕に擦り付けてきた。

 嬉しかった。予の本当の妹みたいだと思ったから、過保護に扱った。

 そのせいで――――


 マリア「イヴお姉様、セリカお姉様、見ていて下さいね! マリアの新しい技です!」


 そうマリアが少し興奮したように言うと、高く跳んだ。


 ハヤト「マリア!」


 未来「馬鹿者!」


 心愛「イヴ、魔力球を吸収材みたいに利用。急げ!」


 心愛が素早く、これから起こるであろう事を予測して、予に指示を与える。まだ、起こっていない数秒後の話だが、心愛の言葉は信頼できる。

 絶対にマリアを助けなければならない。


 予は両手をマリアが落下する地点であろう牧場へと翳す。

 アナムネーシスの器内にある魔力を両手に集中させてゆく。


 その間にもマリアの身体は離れていたエルフボードを目指してゆく……。

 そこでようやく、ハヤトシーリング王や未来お姉様、心愛が叫んだ意味がクイーン王国側、北庄側、シーリング側に正しく伝わる。

 周囲がざわめく。


 マリアのお姉様 セリカの悲鳴と同じくして、マリアの両足はエルフボードの端を掠った。


 マリア「え、なんで!」


 そんな戸惑いの言葉を残して、マリアはビル程の高さから落下してゆく。


 真央「急降下!」


 真央は空から地上へと墜ちるマリアを掴まえるべく、大きな巨体に似合わない速度で潜るように真下に飛んでゆく。その姿は赤い一筋の閃光のようだ。だが、間に合わない。

 それ以外に弊害が……。


 真央竜にシートベルトの類い無しで騎乗していた予、アイシャ、セリカは当然、真央竜から振り落とされる。


 セリカ「ま、ま、真央ちゃん! シートベルトないのに。うきゃぁああああ!」


 セリカは咄嗟に何かに掴まろうとキョロキョロしたが、結局、掴まる箇所がなく、そのまま、落下した。


 アイシャ「イヴ!」


 イヴ「アイシャ!」


 アイシャは魔力球を縄の形に変化させて、自分の腕と真央の尻尾とを巻き付けて、投げ出されるのを回避すると、落ちそうになっていた予の身体を片腕でぎゅっと抱き寄せた。普段、クイーン王国の騎士やリンテリア教の聖騎士に混じって鍛錬をしているアイシャの腕は力強かった。


 イヴ「セリカ、マリア、2人を助ける! 魔力球全力解放!」


 魔法の基礎であり、弾力性のある魔力の塊。ただ、それだけの魔法の基礎でも心愛の言っていた奇想天外な方法次第で助けとなる!

 両手の平が銀色に輝き、巨大な魔力球を生みだし、放つ。


 魔力球はセリカやマリアよりも早く地上に到達し、牧場を覆い、魔力球が固定される。


<凪紗南イヴのMPが7000消費した>

<MP 15000/22000>


 イヴ「これを基点に階段の要領で魔力球を生み出す!」


 セリカとマリアの叫声が聞こえてくる。

 その度に予はあの2人を必ず、助けなければ! と心を静めて、けれど、芯は熱く、再び、両手の平に魔力を集め始める。


 最初の魔力球にセリカ、マリアが到達する前に次弾を撃たなければ、せっかくの心愛の指示が無駄になる。心愛が予にできると信じてくれた。だから、やれるんだ!


 男性竜族軍人1「なんだ、あの途轍もない魔力球。見たことがないぞ! あれがイヴ女王様の才能」


 女性竜族軍人1「魔力球は才あるモノが形成すれば、するほど、とんでもない大きさになると魔法の師に教わったが異常だ、あれ」


 女性エルフ魔法騎士2「リン前女王様でさえ、普通の宿屋くらいの大きさが魔力球の限界だった」


 男性エルフ魔法騎士3「魔法に優れたエルフを越える? リン前女王様に続いて2人目」


 クイーン王国男性王族守護騎士1「続くなんて……。もう、そんな次元じゃない。もう一発、イヴ女王様が!」


 イヴ「セリカ、マリアを助けられるなら、何発だって撃てるのだ!」


 予の2度目の魔力球はⅠ度目の傍に固定された。今度は1度目よりもやや、小さい。


<凪紗南イヴのMPが3000消費した>

<MP 12000/.22000>


 イヴ「これを繰り返すのだ!」


 真央「あのー、イヴ、どや顔のとこ、ごめん。くっ、竜変身が解けそうなんですけど……。竜族の尻尾って一応、竜族の弱点なの……」


 アイシャ「イヴが宙づり状態なのは脳筋雌竜のせいです。それを忘れずに」


 真央「そ、それについてごめん。なんか、アニメやラノベだとドラゴン、助けに行くじゃない!」


 アイシャ「現実と空想を区別しろ。そうしないと、他の者と同じ呼び方を心の内でします」


 真央「や、やめて、その呼び方って人間以下ってことでしょ。大人しく、高度を落としていきますから」


 アイシャ「よし。これからもイヴに忠誠を誓え、め……真央」


 真央「ふぅー、高度を落とすよ……」


 そう言って、真央は高度を落とし始める。宙づりになっている予とアイシャになるべく、振動が伝わらないように……。

 その間にも予は何発も魔力球を放ち、地上に固定させる。


<凪紗南イヴのMPが2000消費した>

<MP 10000/.22000>


<凪紗南イヴのMPが1000消費した>

<MP 9000/.22000>


<凪紗南イヴのMPが1000消費した>

<MP 8000/.22000>


 合計 5発の魔力球が地上に固定され、その魔力球をクッションにして、セリカとマリアは見事、地上に無傷で生還した。


 *


 イヴ「魔力球が……小学1年生で習うイデアワード無しの魔法の基礎がこんなに応用が利くなんて」


 心愛「何事も使いようだ。戦争では物資がないなんて事は良くある。そんな時、ある物を利用して組み合わせて危機を脱する。それができなければ、死ぬ。馬鹿みたいな力を保っているだけで、この世を渡れるほど、世界は甘くない。覚えておけよ、貧乳女王様」


 魔法の基礎か……全て、応用できれば、素晴らしい成果を上げられる。


 魔法や技の基礎は、

 魔力球:小学1年生で習う。弾力性のある攻撃力皆無の魔力の塊。また、優秀な使い手ならば、形を変えることも可能。MP1~MP∞

 魔力探査:小学3年生で習う。見知った人間の魔力を探知できる。精度は使い手によって異なる。

 SOUL探査:小学3年生で習う。見知った人間のSOULを探知できる。精度は使い手によって異なる。


 魔法や技の基礎応用

 コントロール マジック:中学2年生で習う。対象の魔法の威力範囲内で威力を手加減できる。

 コントロール ソウル:中学2年生で習う。対象の技の威力範囲内で威力を手加減できる。

 高魔力探査:見知らぬ人間の魔力を探知できる。精度は使い手によって異なる。

 高SOUL探査:見知らぬ人間のSOULを探知できる。精度は使い手によって異なる。

 魔法剣:魔法騎士等が魔法を武器や防具に宿すこと。対象物のHPがそれに耐えきれなければならないので、基本、低ランクの魔法と組み合わされる。魔法剣の度に対象物は劣化してゆく。


 魔法や技の基礎の極致

 エンチャント:詩卯うたう学園長、予、リンが習得している。対象物のHPがエンチャントの魔力と付与する魔法の魔力に耐えきれば、魔法効果をほぼ、永久に留められる。このレベルのモノはアーティファクトと呼ばれている。

 アンチ エンチャント:自分のエンチャントを解除する。

 ノエシス探査:ノエシスを探知できる。

 魔力遮断:自身の魔力の気配をある程度、消す。

 SOUL遮断:自身のSOULの気配をある程度、消す。

 ノエシス遮断:自身のノエシスの気配をある程度、消す。


 魔法や技の基礎融合

 コントロール マジック エフェクト:コントロール マジックとエンチャントを同時に1人で行う。

 コントロール ソウル エフェクト:コントロール ソウルとエンチャントを同時に1人で行う。


 こんなにも多くの種類があるのだから、組み合わせ次第か。

 ただ、予は全ての魔法の基礎を習得しているが……他の者はそうではない。せいぜい、魔法や技の応用までだろう。


 予と心愛が地上に到着してまったりとしていると……地上を進んでいたリンテリア教会の聖騎士団に保護されていたマリアが予の胸にいつものように飛び込んでこようとするが……予は心を鬼未来にして、マリアの頬を平手打ちした。


 マリア「なんでよ! なんで叩くの! 痛いですわ! お父様にも叩かれたことないのに!」


 烈火の如く、怒り、頬を赤く染めるマリアに予は背を向けて叫ぶ。


 イヴ「命を、命を軽々しく、治るから大丈夫なんて言うな! 軽率に命を危険に晒すな! もう、戻ってこない命だってあるのだ! 予は万能ではない……」


 マリア「…………イヴお姉様?」


 イヴ「マリアは予の蘇生魔法をしているだろう? 予は、予は! お母様を生き返らせたかった。それで努力して習得できたのが……リヴァイヴ。これは1ヶ月の間に散った命を現世に蘇らせる。さらに努力して融合魔法であり、蘇生魔法の上位魔法 エデン。これは1年なのだ……」


 マリア「それじゃあ、期限が……」


 イヴ「傲慢だった。予の魔法ならば、大切な人をどんな状態からでも救えると思っていた。けど……マリア? そんな奇跡みたいな真央に言わせれば、チート? 世界には存在しないのだ」


 マリア「わたくしが軽率でした。イヴお姉様の治癒魔法ならって考えてそこまで……深く考えていませんでした。決してもう、命を粗末に致しませんわ」


 イヴ「よし、お説教、おしまい。マリアのお父様に顔を見せにゆくのだ」


 マリア「はい、イヴお姉様」


 マリアの足音が遠ざかってゆく。


 予は貯めていた涙を流し始めた。

 心愛がそっと、予にハンカチを渡してくれた。


 心愛「なぁ、命を護る為にお互い、俺は前世の戦争の経験、お前は神の力を使おうぜ」


 イヴ「当たり前なのだ、総統閣下」


 心愛「おう、幼女神」



 視点 凪紗南イヴ

 場所 クイーン王国 イクサの森 洞窟内部

 日時 2033年 4月4日 午後 6時25分



 イヴ「それと、あれを合わせるのだ!」


 セリカ「あれ?」


 真央「あれ?」


 イヴ「去年の夏。恐怖の鬼未来ごっこなのだ」


 真央「なるほど、そういう組み合わせね」


 セリカ「穴掘り役は?」


 イヴ「STRENGTHのある真央」


 セリカ「わたくしはイヴちゃんと」


 イヴ「頼むのだ」


 再び、予は記憶の扉を開くべく、無属性魔法 インテレクト オーバーを心理詠唱式で唱える。

 普段の並列思考から、8列思考に脳内構造がシフトしてゆく……。

 そう理解した瞬間、心象世界? へと移行した。


 予の腕には四つ葉のクローバーの腕輪がはまっていた。



挿絵(By みてみん)


描いてくれたイラストレーターはトシさん。イラストはハヤト・シーリングです。エルフの国 シーリングの王様です。料理が好きでよく、イヴちゃんのところに娘のセリカを見に行くがてら調理しています。料理の腕前は抜群。性格は気弱な優しい王様ですよ。

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