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創世する世界のイヴ # Genesis to the world's Eve  作者: 遍駆羽御
本編―――― 第2章 1000キュリアの祈り
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第54話 情勢確認

 第54話 情勢確認


 視点:真田心愛

 場所:クイーン王国 クイーン王国城下街 陸軍司令本部

 日時:2033年 4月4日 午後 5時20分



 陸軍司令本部の屋敷の一室。

 クイーン王国領内の地図に危険種動物達が異常発生している規模が書き込まれてゆく。書き方はこうだ。


 青色:危険種動物が50体程度のギルド依頼で対抗できる規模。

 紫色:危険種動物が500体程度のギルド依頼、貴族が個人的に所有する武力 地方騎士で対抗できる規模。

 緑色:危険種動物が650~1000体程度のギルド依頼、地方騎士、陸軍騎士で対抗できる規模。

 朱色:危険種動物が1000~10000体規模のギルド依頼、地方騎士、陸軍騎士、海軍騎士、民で対抗できる規模。

 黒色:危険種動物氾濫未定ライン。人類がまだ、想定できていない規模。日本、シーリング国との同盟により、クイーン・シーリング・日本連合軍で対応予定。


 さて、実際の現状は……


 一番、危ない地点 紫色はクイーン城下街からほど近い……ブルーム伯爵がイヴ女王様より任されているナナクサ村か。ナナクサ村の国民は主にイクサの森周辺にある複数の湖で漁をすることで生計を立てる者と、勇者が立ち寄った時に広めたたこ焼きをクイーン城下街で露店売りして生計を立てる者が多い。ナナクサ村の国民の子ども達は近くにある徒歩30分のブルーム街にある学校に通っている。リン前女王の時代に勇者と共に考えられた昔の寺子屋のような教育システムとは違う小学校、中学校、高校、大学、大学院という教育システムが採用されている。8年前にクイーン王国内の教育システムは全て、これに移行した報告を聞いている。


 そのナナクサ村の守備は万全だろうと俺は予想していたのだが……


 心愛「やはり。ロザリ・ブルーム。老いて大病を患い、イヴに対する忠誠心で復活した元リン前女王様の専属武装メイド。化け物染みたメイドは日本のアニメだけ、と思ったが……認識を改める必要がありそうだ。俺も飼ってみるか」


 俺は白髪の老人 クロウス・ハウゼンに同意を求めようとした。冗談を言って、この俺 クイーン王国宰相兼クイーン王国文部大臣と軍務大臣殿だけのむさ苦しい空間に一服の清涼剤を、冗談という名の清涼剤を与えてやったのに……軍事畑という真面目騎士道を歩んできた白い髭がチャーミングなクロウスはくすりとも笑いもしない。


 自分で言ってもなんだが……ぜっかく、金髪、碧眼、お尻までの位置まで伸びている長髪にツインテール、そのツインテールを紅いリボンで形成。ぶかぶかの白軍帽、マークがヴァンパイアの使い魔  コウモリ。サイズが合わずにずれ落ちそうな白い軍服、白いフリルスカート。右肩にハーケンクロイツ、左側にクイーン王国 国章 コウモリの紋章。袖が長く手先が見えないといった感じの萌え要素満載のロリ総統閣下様がピリっとした空気を和らげようと努力してるのにな……。


 対面席に座るクロウスはやはり、残念そうに眉を潜める。


 クロウス「心愛様はそんなこと言わないで下され。クイーン王国の品位が疑われるのう」


 心愛「まぁな」


 否定はしない。部下には決して魅せない姿だ。


 心愛「ロザリが現役の頃だったら、このまま、ロザリの率いる地方騎士どもに任せるが……老体には厳しいな」


 クロウス「なんですと! 老人を舐めるでないですぞ。わしは一騎当千の騎士じゃ。イヴ女王様時代を通して、わしはイヴ女王様を支えるのじゃ」


 長テーブルは比較的、力が左右に逃げやすいはずであるが……クロウスの長テーブルを叩く力に耐えきれなかったらしく、激しく、振動する。


 その影響で……俺の大好きなココアが零れた。

 俺はイヴと違って、大好物を何かされたから、と怒ったり、しない。これでも大人だからな。今人生 15歳少女だが……前世を合わせれば、大人だ。


 心愛「できそうな気がしてしまうから、その発言怖いぞ。アリス族はどんなに頑張っても100歳が限度。イヴとアイシャの子がクイーン王国の王となる……イヴの話じゃあ、自分の子が20歳になったら、王位を譲るそうだ。そしたら、温泉でも入ってゆっくりしようぜってな。俺もその頃には中年女性か……」


 想像したら、気持ち悪かった。仕方が無い。気分は未だに総統閣下だ。

 これはなんて言うんだろう……確か、オタク 明日葉の言葉を借りるならば、TSという現象だ。


 心愛「笑えるな。総統閣下が中年だぜ、おい」


 クロウス「誰にでも等しく、時間は流れます。わしも息子にこの地位を譲ろうと考えておりますれば」


 心愛「いつ頃?」


 クロウス「イヴ女王様がお子を産むまで、としておきましょう。さて、わしの判断は連鎖氾濫に対するイクサの森周辺の守備強化が妥当か、と」


 心愛「俺もその一手が無難だと考える」


 ココアを一口、飲む。議論でカラカラになった喉に潤い成分がコーティングされて、一気に俺の喉は元気を取り戻した。

 これならば、演説2時間くらいできそうだ。頬が緩む。


 心愛「ココア、うめぇ。よし、既にイヴを追って飛び出した地方騎士隊 50名がいたから……そうだなぁ」


 俺は顎に指を当てて、しばし、思案する……。

 結論を出す前にゆっくりと扉が開いて、1人の身長 140cmの少女が入室した。何故、身長を事細かに覚えているか、というと……


 イヴ『ついに予はちびっ子の咲良にまで身長を抜かされてしまったのだぁ……。悔しい、予はこれ以上成長しない。駄目神の陰謀なのだぁー』

 そう、去年の今頃、俺の屋敷まで来て、俺の淹れた自慢のココアに目をくれずに人のベッドの上で駄々をこねた立派な立派な女王様からの情報だ。


 140cmの少女――――新羅咲良しんら さくらは工芸品のようだ。

 帽子が大好きで今日はベレー帽を被っている。艶やかな緑色の髪は天然モノで向こうではあり得ない色だ。その緑色の髪は背中まで伸ばしてある。

 華奢な身体を包むのは、忍者が好んで着ていたとされる忍び服。黒い色は夜に溶け込んでしまいそうだ。

 蒼色の神秘的な瞳が俺達を見つめる。その瞳には壮絶な意志を感じる。そこに根拠はない。ある程度の地球の強者ならば、その意志を感じ取り、弱そうに見える咲良という少女を過小評価しない。地球であってもそうなのだから……ロリ少女が強いと認識されている異世界 リンテリアでは無類の強さを誇っているはずだと咲良の眼力のみで看破される。その通り、欠伸を繰り返し、堂々と歩き、長テーブルに座った少女は強い。


 咲良「必要、ない。私、行く」


 小さな口から飛び出した言葉の裏には、異論は認めない口調の強さに帯びていた。


 心愛「いつの間に来たんだ、貧乳神様のクラスメート」


 茶化して、”いつも通り”真意の全く見えない咲良にヘマをさせようとするが……咲良はマイペースだ。


 咲良「数時間前? 就寝、インターネット、通販、良い買い物」


 長テーブルに咲良は高速クリックをする。

 どんくらい、クイーン王城のリン前女王様の部屋にあるPCで散財したんだ、こいつ……。


 心愛「おいおい、守護十家の新羅咲良ちゃん。御守りする御姫様の所有物で遊んで良いのかい?」


 咲良「大丈夫。任務、ついで。うわぁ~あ、眠い。それに凪紗南家情報、取得」


 クロウス「どのような?」


 心愛「良い情報だろうな?」


 咲良「聖地 ローラント。ゲート、クイーン王国、未来様、りりす第2皇女様、アイシャ様到着」


 心愛「あー、未来様来るんじゃあ、いらんか、増援」


 未来様ならば、武器無しでこの辺の危険種動物ならば、圧勝可能だ。この世の地獄と呼ばれた第3次世界大戦の前線で生き残った1人だ。そのくらいの芸当ならば、可能だろう。


 クロウス「十中八九。危険種動物達が可哀相な目に合うか、と」


 先程までの渋い顔をしていたクロウス老の顔も今では明るい。


 咲良「守護十家、戦闘輸送機参戦。テスラ、英、幼子、らら、マリア第2エルフ王女様、ガッツ君、ガッツの妹参戦」


 クロウス「英様が来て下さるのですか!」


 心愛「おいおい、第4次世界大戦にすら対応可能なメンツだろう? 特に英様って800体の危険種動物相手に僕にとっては前菜ですから春、リン様と共に国民をって1人で国民がローテイア街から脱出するまで殿を勤めたんだろう……」


 咲良「りりす、程々、強い」


 心愛「そりゃあ、勇者と……大きな声では言えないが……あれだろう? 昔の俺よりヤバイ方向で現在売り出し中のあれの娘だろう。どんくらいだ?」


 咲良「未来様、戦えた」


 心愛「おいおい、あの人と戦える10代って咲良以外にいたのかよ。んで、氾濫の為の戦力じゃあないんだろう。盗賊抹殺用か?」


 俺の問いに咲良は首を横に振る。


 咲良「未来様、イヴ様お迎え、問題無し。英様、イヴ様救出。巫女、イヴ様危機未来、予見」


 心愛「ちっ! 俺も――――」


 イヴが危ないならば、俺も前線に行って闘いたい! その想いが俺の身体を動かす。それを咄嗟にクロウスが腕を掴んで止める。

 そこで俺は自分が馬鹿だったことに気づいた。


 クロウス「行かせませんぞ。我々は戦力の指揮です。忘れましたか? 勇者様がこの国に伝えた信念」


 心愛「王族は民の為、貴族は民の為、民は子の為、尽くそう」


 咲良は我関せず、と椅子から、お尻を離して、静かに扉へと歩く。眠いのか? その足取りはふらふらだ。

 咲良が柱に頭をぶつけているのをよく見かける。もはや、咲良にとって、それを含めて日常なのだろう。イヴはいつも、心配そうに接しているが……。


 咲良「そろそろ、私、行く」


 もう、出ていきそうなのに今更、咲良は俺達に背を向けたまま、言った。


 心愛「おい、馬は?」


 咲良「必要無し。走る。速い。ちょー速い」


 そう言った時には、もう既にそこには咲良の小柄な姿は何処にもなかった……。


 イデアワードが聞こえなかったことから……魔法や技ではなく、地の強さなのだろう。心理詠唱式も考えられるが……魔力の気配も感じなかった。恐ろしく、上手いのか……。とにかく…・…。


 心愛「消えた……」


 クロウス「あの新羅咲良なる少女、底が知れません。わしは日本とクイーン王国合同の武術試合で咲良殿の戦闘を見ましたが……”一度も本気を出していませんでした”」


 心愛「だろうなぁ。あれ、眠そうにしてるけど……俺には解る。あいつ、曲者だ……。なにか、解らないが途轍もない信念を感じる。憎悪よりも深く、愛情よりも深く、友情よりも深く……」


 俺は総統閣下時代を含めて、あんな鳥肌の立つ眼力を経験したことがない。あれは修羅を越えた修羅の瞳だ。だが、疑問があるのは、そういった狂人の瞳を保ちながら、正常でいられるちぐはぐさ。


 心愛「あいつは本当にイヴの味方なのか……」


 そんな弱気な呟きが飛び出してしまうのは……新羅咲良という異常と正常を兼ねた強者の気に晒されたからだろう。


 この後、俺は一応、危険種動物の氾濫連鎖に備えて、クロウスと共にギルド、軍、貴族所有の地方騎士等の戦力配分に奮闘した。

 その他の食料配給などについても……奮闘した。オーバーワークだ。


 心愛「本当はイヴがやる仕事だが……仕方がない。イヴは純粋な優しさが売りだからな」






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