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創世する世界のイヴ # Genesis to the world's Eve  作者: 遍駆羽御
本編―――― 第2章 1000キュリアの祈り
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第45話 ファンタジック ハーフエルフ

 第45話 ファンタジック ハーフエルフ


 視点:セリカ・シーリング

 場所:クイーン王国 イクサの森

 日時:2033年 4月4日 午後 5時20分


 出来損ないのハーフであるわたくしですけど、少しはエルフの特性である自然の声を聞き取ることができる。

 エルフによって個別差があり、凄い方ですと、行った事の無い森の木々の声や花の声を聞き、お話をすることができる。

 そう、その凄い方とはわたくしのお父様 エルフの国シーリングの王 ハヤト・シーリングだ。

 普通のエルフは森に通い詰めて徐々にその森の声を聞いてゆくのが通例だ。


 わたくしは軽やかな足取りで盗賊さん 3人から逃げる。少し遅れてわたくしの通ったルートと同じ道程で真央ちゃんが追いかけてくる。

 体力に秀でている竜族 それも頂点 北庄の血族の真央ちゃんでなければ、わたくしの足取りを追えずにこの広大な森を彷徨うことになっていただろう。


 風の凛菜ちゃん【真央真央、遅いね。セリカちゃん、もっと、スピードを上げてセリカちゃんの凄さを見せつけてあげましょう! ねぇ、ねぇ】


 王族であるわたくしが敵意を持って追いかけられるレアなイベントが興味深いのか、イヴちゃんがお友達になってすぐにお友達になった風の揺らぎである凛菜ちゃんがはしゃいでいる。

 そのはしゃぎ具合が酷くて、わたくしの桃色の髪をぐちゃぐちゃに撫で回してしまっている。尤も、本人にそんな意図はないのだけど……。


 もう、一つ、凛菜ちゃんが楽しげにしてくれているので、わたくしの中には、ぽわぽわした? 暖かい気持ちが胸に宿っている。

 そっと、平坦なイヴちゃんより膨らみのある胸に触れる。この気持ちを何て呼称するのだろうと首を傾げた。


 セリカ「うーん、無理ですわ。ですけど、そうしたいぽわぽわした気持ちがありますわ。わたくしのお胸、おかしくなったのでしょうか?」


 木のウェンディーちゃん【ここ、ここ、この枝なら、真央さんが通っても大丈夫です】


 風の凛菜ちゃん【私が示すわ。揺れた枝に足を!】


 目前の樹木――――ウェンディーちゃんの沢山ある枝の内、3mくらいの高さに位置する太い枝が風で揺れる。

 わたくしは迷わず――――


 セリカ「真央ちゃん、お願い!」


 真央ちゃんはわたくしの身体を抱きしめて、竜族の身体能力を足のバネ、アキレス腱に集約させる。

 力を地面に叩き付けるように――――


 真央「盗賊ども、ここまで追いで!」


 蹴り上げた。


 その瞬間、当たり前のようにわたくしと真央ちゃんの身体は中空に在る。


 風の凛菜ちゃん【他の風には邪魔しないように言っておいた。安心して】


 わたくしは凛菜ちゃんの心遣いに頷く。

 ウェンディーちゃんの太い枝に着地した。


 セリカ「真央ちゃん、ダイエットしないと駄目ですわ」


 真央「何でよ! ってか、あたしは毎日、野菜、お魚、納豆を食べてるわ。太りやすいお肉は週二食よ! それも豚。………お金がないだけだけど」


 セリカ「先程、ウェンディーちゃんが真央ちゃん、お豚さんだって行ってましたわ」


 木のウェンディーちゃん【何でよ!】 真央「ウェンディー! どいつだ! セリカ」


 わたくしはわたくし達が着地した太い枝を指さした。

 真央はわたしくを抱きしめたまま、不穏の言葉を吐く。


 真央「よし、この木をドラゴンブレスで燃やそう」


 セリカ「あの方達にやっちゃって下さい」


 と、わたくしは樹木より遙か下にいる。

 盗賊さん 3人を指さした。


 木のウェンディーちゃん【ちょっと、仲間を殺す気? 木だけに】


 真央ちゃんにウェンディーちゃんの言葉を翻訳する。


 真央「……つまんねぇー、0点」


 セリカ「はい、ですわ。0点」


 そう、くだらないダジャレを処断した後、わたくしは未だ、わたくし達を見つかられないお間抜けな盗賊さん 3人を観察する。


 盗賊1「見つからないぞ、こっちにはハーフエルフの姫様と竜の姫様が入っていったよな」


 盗賊2「ああ、確か……記憶が正しければ」


 盗賊4「オラも、そう記憶していたべ」


 だが、彼らは暗闇になれていないせいもあって……一向にわたくし達を見つけられない。

 さて、わたくし達の目的はルルリちゃんの確保と、盗賊王さんにお仕置きをして女性をレイプし、殺害する……盗賊さん達曰く、命を盗む行為を止めさせること。

 二点をクリアする為に次の手を早急に考えるべきですわ。


 ……風が程よく、頬に吹いてなんだか、眠いですわ。


 セリカ「くぅー」


 真央「寝るなぁ~」


 耳元で真央ちゃんが囁いてくれた。あと少しで妹のマリアちゃんと夢の中で巨大怪獣から街を防衛する肉弾言語しか使わない魔砲少女として活躍するところでしたわ……。


 セリカ「次はどうするんですの」


 真央「決まっている。一呼吸、ずっと真央のターンで終わらせる。雑魚にかけている余裕はない。あいつらが全員、背中を向けたら、竜魔法をお見舞いしてやるわ」


 セリカ「その後、奇襲ですわね」


 そうだと真央が肯定の証として、首を縦に動かした。


 盗賊1「もう、ここにはいないのかも?」


 盗賊4「オラもそう思ったべ。さすがはハーフエルフでも、腐っても、エルフ最高の血 シーリングを継ぐ姫様だべ。何処に隠れているか、まるで解らない」


 真央ちゃんの身体が震える。

 真央ちゃんの性格上、それが恐怖から来るものでないと解る。


 盗賊2「ハーフエルフは……ろくに自然の声を聞くことのできないできそこない。まさに飛べない鳥みたいものだろう」


 その盗賊さんの言葉はいつも、わたくしが純血のエルフの方々から影で言われている事。わたくしは妹のマリアちゃんとは違い、純血のエルフではない。

 解っているといつものように機械的な微笑みが浮かんだ。その微笑みはイヴちゃんしか本質を見破ったことのないわたくしの最強の盾だ。


 盗賊1「気の毒に母親が”アリス族”だったばかりに……」


 盗賊2「親を選べない。そういうもんだろう? 今度、転生したら……」


 と、会話を楽しみながら盗賊さん 3人はわたくし達から見て、背中を向けた。


 わたくしが「今ですわ」と言うより先に待ってましたと叫ぶように、真央ちゃんの口から圧倒的な電力を帯びた竜魔法 サンダードラゴンブレスが放たれる。

 そのブレスは一直線に盗賊2さんの頭を打ち抜いた。


 盗賊2の黒焦げになった頭部に蹴りを入れ、わたくしを抱いた真央ちゃんが地面に着地する。

 蹴りの反動で……棒立ちだった自分が死んだ事実に気づいていないであろう死体は地面と激しく激突した。その衝撃で辛うじてくっついていた黒い顔に似たモノは完全に硝子のように砕け散った。


 盗賊1「こ、これが竜族。北庄の血族の一撃……」


 盗賊4「ば、化け物だべ。こ、これは……」


 無言でわたくしを地面に下ろすと、すぐに真央ちゃんは行動を開始する。どうやら、盗賊4さんにターゲットを決めたようだ。感情のない冷たい眼がお前はもう、死んだと静かに語っているようだ。


 セリカ「……あっ、いけないですわ。わたくしもお役目を!」


 少し、真央ちゃんの行動から遅れてわたくしは盗賊1さんをターゲットに見据えて、冷厳なる雪月花槍を構え、そのまま、突撃する。


 真央「あんたらに安穏とした転生先はない。イヴに頼んで、転生神様に細工してもらうわ。あんた達にお似合いの生き地獄を用意してやるおっさん!」


 デスティニードラグクローを召喚し、自動装備した真央ちゃんはそう叫びなら、駆け出す。盗賊4さんは竜族特有の竜魔法の威力を初めて目にしたようで槍を持った右手が攻撃態勢を取っていない。ただ、携帯しているだけだ。完全に真央ちゃんの竜の睨みに流されている。

 紛争地帯にある北庄で生きてきた真央ちゃんにとって、腰の退けた素人に毛の生えた盗賊を屠るのは簡単だ。


 真央「……おっさん、そんなLevelで武器を振るうなよ」


 そう呟く真央ちゃんの片腕に装備されたデスティニードラグクローの爪先は盗賊4さんの首に食い込んでいた。


 盗賊4「うっ……」


 低い悲鳴を上げて、ただ、盗賊4さんは槍を堕とすことしかできなかった。いや、それはもう、自分の意志ではないのかもしれない。

 イヴちゃんなら、ここで盗賊4さんが謝罪すれば、許したのかもしれない。治癒魔法で回復して牢屋送りにしたことだろう。

 しかし、イヴちゃん以外の普通の人間はそうはいかない。


 そのまま、真央ちゃんは力を込めて、盗賊4さんの首をデスティニードラグクローで貫いた。

 血が吹き出る前に真央ちゃんは召喚器をここではない空間に仕舞って、後ろに跳んで退避した。


 真央「うぜぇー、人のママの悪口言うな。マナーだぞ、おっさん」


 動かなくなった首から鮮血を流し、転がっている死体に真央ちゃんはそう、重さの伴わない声で吐き捨てた。


 セリカ「真央ちゃん、その方は――――」


 盗賊1「死んでたまるか!」


 仲間の死を見て錯乱したのか、剣のようにアイアンランスを盗賊1さんは振り上げた。槍は剣よりもリーチが長い。その為、突きでは長さが有利に働く。しかし、斬撃では長さは対象物到達までのタイムラグを生む。圧倒的に不利。

 わたくしはなんなく、それを避ける。

 盗賊1が錯乱から目覚めたのか、眼を目一杯、開いてこちらを見ている。


 セリカ「――――ただの屍ですわ。返事がないですわ」


 わたくしはその大きく見開いた眼にさよなら、と心にて、新たな旅立ちに不幸あれ、と祈った。

 同時にわたくしの握る冷厳なる雪月花槍は盗賊1さんの腹部中央を容赦なく、貫いた。

 血を滝のように吐いて、盗賊1さんは絶命する。

 その死体からわたくしは冷厳なる雪月花槍を引き抜いた。


 真央「さぁ、イヴに連絡をするわ」


 セリカ「わたくしはレイお兄様に致しますわ」


 わたくし達はイヴちゃんのように蜂蜜たっぷりの甘さを持ち合わせてはいない。通常の人間はこの犯罪者達に決して、安らかに眠れなど言わないだろう。それを言えるのはただの偽善者だ。

 よって、わたくし達は次の行動に移る。


<凪紗南イヴはLevel 9に上がった>

<北庄真央はLevel 23に上がった>

<セリカ・シーリングはLevel 16に上がった>






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