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創世する世界のイヴ # Genesis to the world's Eve  作者: 遍駆羽御
本編―――― 第2章 1000キュリアの祈り
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第38話 人の命を盗む盗賊はイクサの森

 第38話 人の命を盗む盗賊はイクサの森


 視点:凪紗南イヴ

 場所:クイーン王国 地方騎士局 クイーン城下街支部

 日時:2033年 4月4日 午後 2時50分



 地方騎士に連れられて、1階の応接室にて、地方騎士 クイーン城下街支部長と状況を確認する。

 とは言っても今はイクサの森付近に武装した地方騎士を何十人か、派遣して捜索をしている段階であり、まだめぼしい報告を受けていないと、お茶を啜りながら、頭髪に白髪交じりの初老の支部長が予に教えてくれた。

 何度も緊張しなくても良いと言ったのだが……やはり、動揺しているようだ。仕方が無い。予の身分は女王なのだから。


 イヴ「うーむ、それではその現場の騎士の報告待ちか」


 支部長「ええ、ですが、ルミミ村の人間が不審な男達がイクサの森の方へと軽装で入っていたと複数、情報がありますから可能性が高いですね」


 真央「高いどころか、70%の確率でビンゴだろう、それ」


 真央は支部長が提供してくれたチョコレートを囓りつつ、そう言った。

 そのチョコレートスティックは地球産日本の秋葉原で売っている萌え絵パッケージのチョコレートだった。予が日本の皇女である事から、これならば喜ばれると考えたのであろう。

 その意図に乗ろう。

 オペラグローブを脱ごうと生地を引っ張るが、セリカの細い指先が止める。


 セリカ「わたくしが食べさせてあげますわ」


 お皿からチョコレートスティックを一本、取り、予の口に運んでくれた。

 カリッと、スティックが折れて、セリカの指に残りのチョコレートスティックが留まる。それ以外のスティックは予の口内へと運ばれ、砕かれてゆく。

 ほろ苦い甘さで出されている日本茶に合う。普通は紅茶に合うのだが、このチョコレートを創ったメーカーは日本で売るのだと意識して、日本茶に合う味にしたのだろう。グローバルな視点で予も見習わなければ、とうんうんと頭を縦に動かしつつ、御菓子を嚥下する。


 セリカ「はーい、イヴちゃん」


 イヴ「うん、おいしいのだぁー」


 支部長「光栄です、イヴ女王様。日本に嫁いだ娘が送ってくれたものなんですよ。皇女様がお召し上がりになったと知ったら、感激で気絶してしまいます」


 イヴ「日本の民は皇族を神として崇めているのだ。原爆を乗せた飛行機が忽然と姿を消して、それを日本の皇族の神力だと宣伝し、第2次世界大戦において敗戦国でも、勝戦国でもない対等な終戦条約を結ぶことができたのだ」


 セリカ「うーん、それって……リンテリア神様ですわねー」


 と言ってセリカが隣でチョコレートスティックを食べ貯めしているハムスター頬な真央に耳打ちする。


 真央「あのロリ神、そんなに強くは思えなかったけど。案外食えない変態ね……」


 イヴ「変態の話はしたくないのだぁ。せっかくのチョコが……」


 レイ「駄目だ、妹君。昼を食べたばかりだろう、はしたない」


 ならば、あれはなんなのだ、と予は一人だけわんこそばのようにチョコレートスティックを食べまくる真央を眺める。


 レイ「竜族は1日のエネルギー消費量がアリス族の3倍だ。それくらい、食べる必要があるだろう。しかし、いや、かなり見苦しいが」


 真央「へぇ? どうかしたの?」


 竜族の姫とは思えない口の周囲にチョコレートスティックの欠片をくっつけた真央に予はただ、呆れた。

 が、そういう飾らない処が真央らしさでもあり、身分問わず、人々に好かれている理由なのだ。予もそんな真央が大好きだ。


 イヴ「ゆっくりと食べないと消化に悪いぞ」


 真央「ごめんごめん。うちは紛争地域だから、食べられる時に食べておけみたいな癖がね」


 セリカ「真央ちゃんらしくて良いと思いますわ。お淑やかに食べる真央ちゃんがわたくしには浮かびませんわ」


 真央「そうね、あたし、貴族どもの立食パーティーの類いが嫌いだし。お世辞言いつつ、裏では何、考えているか。それでいて音を立てずに食事すんのよ。背筋が……」


 イヴ「うん? 騒がしいのだ」


 予の耳元に数人の怒号が聞こえて、こちらへと駆けてくる足音が聞こえる。入り口を護衛している女性地方騎士とその足音の主が何やら揉めている。


 イヴ「入れ!」


 支部長「しかし、イヴ女王様」


 イヴ「非礼とか、そういう場合はないようだ。さぁ、入室して予に報告するのだ」


 数人の浅い切り傷を負った地方騎士が息を切らせながら入室した。

 予やセリカ、真央、レイお兄様がいることに驚き戸惑った顔をする。


 イヴ「治癒魔法 ヒールマルチ」


<凪紗南イヴは治癒魔法 ヒールマルチを唱えた>

<地方騎士達のHPが回復した>


 イヴ「呆けている場合か! 予に、クイーン国女王に報告せよ」


 予の叱咤によって、地方騎士達の背筋が定規を背中に入れたように真っ直ぐになる。顔つきが闘う騎士の精悍な顔に変わる。


 地方騎士1「イクサの森にて、数十名の盗賊団を発見。我が騎士隊と交戦。くっ……」


 若い騎士が無念そうに拳を握りしめる。

 どうやら、交戦の結果は芳しくない。


 地方騎士2「盗賊を15名捕縛。10名殺害。こちらは盗賊に11名殺害され、7名が重傷。巨大なドラゴンに19名の騎士が殺害されました」


 支部長「なんという……しかし、何故、竜族が」


 真央「大方、はぐれなんでしょう。あたしがひねり潰す。真っ当な竜族の誇りは弱い者虐めをしないことよ!」


 竜族の生まれは基本、北庄である。その北庄の姫である真央は同胞の暴挙に怒りのあまり、テーブルをぶん殴る。

 テーブルは紙のように真央の拳を受け入れて、大穴を形成した。

 それを横目で観察して、予は女性地方騎士を手招きする。予の意図を理解してくれたのか、言う前に予に和紙を渡してくれた。

 筆で和紙に字を書き込む。えーと、相場は……。


 地方騎士2「俺達……弱いのか?」


 地方騎士3「えーと、どうだろうなぁ……」


 和紙に字を書き終えた予は顔を上げて、セリカ、真央、レイお兄様、地方騎士達、支部長に宣言する。


 イヴ「ルルリが来ないうちに出発して、予が盗賊を成敗する」


 支部長「女王様、御身が!」


 イヴ「許してなるものか……殺されていたのであろう、誘拐された女性達は?」


 地方騎士1「はい、無惨にも犯された後、殺害され、バラされたようです……。盗賊の一人を尋問して、あいつらの拠点の洞窟を割り出しました、ここです」


 テーブルの大穴が隠れるように丈夫な布で記載された地図が広がられる。

 すぐにセリカは腕時計型携帯電話を作動させて、ホログラム ウィンドウ表示し、地図を撮影した。

 盗撮防止の音が鳴らずにそれは成功する。王族や防衛関係者の携帯は音が鳴らないようになっていた。


 セリカ「地図を撮りましたわ」


 真央「行くんでしょ、イヴ。あんた、ルルリから頼まれたもんね」


 イヴ「まだ、ルルリのお母様が亡くなったわけではないのだ。行こう、イクサの森へ」


 そう言って、予は先程、作製した”賠償金請求書”を真央に手渡す。



 賠償金請求書

 北庄真央様、地方騎士局 クイーン支部の応接室 テーブル 28900キュリアを請求します。わたし、見ました。北庄に請求してもいいんだぞ☆



 真央「あ、あたしをオチにつかうなぁ! ………いや、悪かったわ、ついカッとなって」


 イヴ「許すのだ。治癒魔法 ヒール」


<凪紗南イヴは治癒魔法 ヒールを唱えた>

<テーブルは修復された>


 大穴が逆再生するように修復されてゆく。

 数秒で新品に生まれ変わった。


 地方騎士1「さすが、イヴ様」


 地方騎士2「これが……治癒魔法凄すぎだ」


 支部長「これから忙しくなるぞ! 俺達もイヴ女王様と共にイクサの森へと行って、馬鹿共を成敗するぞ」





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