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創世する世界のイヴ # Genesis to the world's Eve  作者: 遍駆羽御
本編―――― 第2章 1000キュリアの祈り
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第34話 ふわりハンバーガー講座 中編

 第34話 ふわりハンバーガー講座 中編


 視点:凪紗南イヴ

 場所:クイーン王国 マクドファルド

 日時:2033年 4月4日 午後 1時50分



 明日葉がテーブルに置かれた銀色のベルを鳴らすと、凄まじいスピードで小さいな少女が「ふわわー」とロリ声をマクドファルド店内に響かせながら、オープンテラスへとやってきた。

 黒ゴスロリ衣装に身を包み、和紙と筆を持つ自分の金髪で緑色のぱっちりお目々の隠れた偽名 薔薇乃城ばらのじょうふわりは、ハニーシロップたっぷりの笑顔で予らに言った。


 ふわり「ご注文聞くわん」


 イヴ「ふわわー」


 ふわり「ふわわー」


 と、互いに挨拶を交わす。

 今日も元気にしてるかな? と気になり、予はふわりの前髪を掻き揚げる。隠れていた碧眼の透き通った瞳は希望に満ちていた。うん、元気なようだ。


 イヴ「さぁ、注文を述べるのだ! 予は照り焼きハンバーガー 10個所望す―――」


 レイ「妹君。未来様にお仕置きされるぞ。はしたないと」


 イヴ「むぅー、仕方が無いのだぁ。照り焼きダブルバーガー 5個所望す――――」


 レイ「妹君。未来様にお仕置きされるぞ。はしたないと」


 パンズの間に照り焼きソースに包まれたポークが2枚。これは照り焼きバーガー×2個に相当する作戦がレイお兄様には筒抜けだった。

 おのれ、レイお兄様!

 悔しそうに予はメニューを今一度、眺め直す。


 真央「イヴ、早く決めなさいよ」


 イヴ「うーむ、予は後で良いのだ。先に真央達が決めよ」


 真央「どれだけ、真剣に悩んでいるのよ、ドン引きよ、ドン引き。あー、あたしは一番安い野菜バーガーで。これ、マヨネーズはついてるんでしょ?」


 ふわり「ついてるわん」


 ふわりの表情は全く変わらず、笑顔で真央の質問に答えた。

 ふわりは表情を変えられない。それは目の前で母親が自分を護り、死んだことが原因だった。幼かったフワリ・ローリン姫は自分が悪い子だったから、と悲嘆に暮れて……一度、自殺未遂をして、予が治癒魔法でなんとか、助けた後、ふわりの表情は楽以外全て欠落してしまっていた。

 改めて、思い知らされた。予の治癒魔法は心まで救えない。心の変わり様は自然なものであると治癒魔法は判断しているのだ。脳の欠陥による欠落ならば……治癒できたのであろう。

 予は両膝の上に置いていた手の平で堅く拳を作った。

 悔しいな、親友すら救えないなんて。

 その拳をレイお兄様の大きな堅い男性の手が包みこむ。


 レイ「全て、救える人間なんていない。人はトライ&エラーを繰り返してより高みに辿り着く。明日を考えろ、妹君」


 まるで予が何を気にしたのか、を知っている発言だった。


 イヴ「それでも予は………救いたかった。女王達も」


 きっと、ニーテ・ローリン女王の首は北庄源の下にあった為、生き返らせれば、予が蘇生魔法ができると世間にばれてしまう。まだ、予の蘇生魔法が世に出る場面じゃない。

 他のローリンの民達も惨たらしい殺され方をされた者が多く、生き返らせた場合、発狂して心を無くしてしまうだろうと予想されて………ふわりと相談の上でクイーン王国内に慰霊碑とローリンの女王と民達を祭る神殿を作るのみとした。

 それを気に入らない北庄源は予がローリン神殿に参拝する度に、正しい戦争を否定するような命日にわざわざ参拝しに行くなと毎年、言っている。

 北庄国の民達も、北庄とローリンの戦争は正しいルールに則ったものであり、弱者であったから滅びたのだと予の行為を偽善と判断し、真央の婚約者として相応しくない行動だとバッシングをしている。


 それに予が屈するはずはない。

 あれは、北庄の民達には情報が伏せられているが……夜、宣戦布告無しに不意打ちに有力貴族の子達を人質にローリンの優しい人間達を殺害していった卑怯な侵略戦だ。

 しかし、北庄の民達は教育により、正しい戦争であったと洗脳されている。

 真央ですら、そう洗脳されていたが……世界中の歴史の教科書を比較して、愕然としていた。


 真央『………こんなの許されるはずがない。肥沃なローリンの土地が欲しかっただけじゃない。あたし達はローリンの人々にどう償えば』


 と泣きながら、何処に怒りを、空しさをぶつけて良いのか、解らずに……広大な凪紗南天皇家の所有する凪紗南市の土地にある巨木を何度も拳でぶん殴って……心を整理しようとしていた。

 こんな理不尽は何処にでもあるのだ。

 こんな………。


 ふわり「イヴ、ふわり、決めたことがあるにゃん。後で言うわん」


 予の暗い顔を見て、ふわりは笑顔とはかみ合わない真剣さを帯びた堅い口調で予に言った。


 真央「あんたが何を思っているのかはあたし、痛いほど、解るけど。今はご飯よ、ご飯。ということであたしは野菜バーガーと、無料のお水おかわりね」


 ルルリ「ルルリは、チーズバーガーとチキン、オレンジジュースのお子様セットメニューでお願いします」


 セリカ「わたくしは……あ、これ面白そうですわ。キャビアとんかつバーガーをお願いしますわ」


 真央「はぁー! キャビア!」


 真央が驚いて、セリカの持っていたメニューを引ったくると、そこにキャビアとんかつバーガー 時価 60万キュリアという記述を見つけて……化石になった。


 真央「あ、あたしの見ているのは平民の憩いのお店にブルジョアの象徴が出てくる世界? これはパラレルワールド」


 イヴ「おーい、真央、真央、帰ってきて!」


 予が真央の耳元でそうやって囁くと………


 真央「はっ、一瞬、思考の海に沈んでいた」


 セリカ「書いてね、ふわりちゃん。キャビアとんかつバーガーよ。それと青汁ね」


 学院生1「あ、あたしはハンバーガー、アップルパイ、コーラで」


 学院生2「私、カルボナーラ卵バーガー、ポテト、レモンティー」


 学院生3「んー、和風フィッシュバーガー、チョコパフェ、ナタデココソーダ。学園長は?」


 レイ「そうだな、俺は……ハーブティーはないな……珈琲。と、大トロ盛りだくさんバーガー」


 明日葉「食べ合わせ悪いですよ、レイさん」


 レイ「常識の範囲内だ、充分に。そういうお前は何をオーダーする?」


 明日葉「俺は! これだ!」


 と、広げたメニューを指さす。

 その指さした先には、照り焼きバーガーだった。


 明日葉「イヴは必ず、これを頼む自称 お兄ちゃんの俺が言うんだから間違いない。これでイヴとお揃いだな」


 店にいる全員「「「気持ち悪い………」」」


 今、明日葉の発言でマクドファルド店内とオープンテラスにいる人間達の心は一つになった。


 明日葉「ぐはっ、な、何」



<新刀寺明日葉は心に99999のダメージを受けた。>

<しかし、新刀寺明日葉は残念ながら生きている!>


 イヴ「この気持ち悪い物体は水のみで言いのだ」


 予は予の照り焼きバーガー道を塞ぐ者に対してはもの凄く冷たい態度をとることが可能だ。

 ふわりがそっと、水の入ったコップを出してくれたので、そこにタバスコを紅い色になるまで入れる。

 瓶を一本、空けてしまった。それをそっと、明日葉の目の前に置いた。


 イヴ「飲め」


 明日葉「無理じゃない、かな」


 イヴ「飲め」


 明日葉「……ゆ、許して?」


 イヴ「飲めば、許す」


 そう、照り焼きバーガー道の邪魔をした者には制裁が必要だ!

 明日葉は一気に飲み干した。

 瞬間、椅子から飛び上がり、両手を口で覆いながら、お手洗いの方向へと走っていった。


 真央「むごいけど……自業自得ね」


 セリカ「はい、イヴちゃんを照り焼きバーガーでからかってはいけません。邪神と闘うレベルくらい危険な行為ですわ」


 ふわり「明日葉の注文、どうするめぇー」


 ふわりが一生懸命、注文を書いていた手を休めて、そう聞いた。


 イヴ「仕方が無い。ハンバーガー、目玉焼きバーガー、唐揚げバーガー、日本茶を明日葉の注文としよう。予が選んだものなら、喜んで食べるだろう」


 ふわり「はいにゃん!」


 イヴ「予は照り焼きバーガー 10個とシソジュース」


 ふわり「はいにゃー」


 レイ「いいや、駄目だ。さり気なく、流れでいけると思うのは子供じみているぞ。さぁ、選び直しだ」


 イヴ「今日は負けを認めるのだ。照り焼きバーガーとシソジュースなのだ」


 ふわり「書き終えたわん。超特急で持ってくるわん!」


 イヴ「頼むのだ!」


 小さな弾丸と化したふわりが全力でマクドファルド店内を駆け抜けて……転けた。

 痛いはずなのに、ふわりは振り返って、いつもと変わらない笑顔で予に手を振る。


 ルルリ「先程のふわわーって何ですか?」


 レイ「挨拶らしいローリン国の。今はもう、滅亡してしまったが、な。布の買い付けによくイヴと一緒に出掛けたものだ」


 そう言った後、ゆっくりとセルフサービスの水を飲んで咳き込んだ。

 気管に水が少し入ったようだ。


 学院生2「ローリン布の生産法がクイーン王国に受け継がれてよかったわ。希に魔法効果が発現する希有な布ですもの」


 学院生3「希有と言えば……イヴ女王様の着ているプリンセスドレス級の素材でいつか、ドレスを創りたいなぁ」


 レイ「そうなると良いな」





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