第33話 ふわりハンバーガー講座 前編
第33話 ふわりハンバーガー講座 前編
視点:凪紗南イヴ
場所:クイーン王国 マクドファルド
日時:2033年 4月4日 午後 1時40分
ピエロの衣装を着た小学生女児の人形が店舗付近に置いてある。その女児はもの凄い邪悪な笑顔をして、右手にハンバーガーを持っている。その何処か腹黒そうなマスコットキャラだ。
裏腹に植木が店の周囲を囲んで、異世界 リンテリアはまだ、透明な硝子窓は開発されておらず、曇り硝子しか再現されない為、予や貴族達が来店する都合上、防犯の為に窓枠には硝子がはめこまれていない。有事の際はそこから弓矢や魔法でテロリストに対して反撃する。また、各店舗に必ず、丈夫な地下施設があり、有事の際はそこに避難する事も念頭に置かれている。
塵一つないオープンテラスには、ローリン国の国花 ルテリイルの花(黄色い小さな花びらで、その花びらは食用に用いられて、主にアイスクリーム等に使われて、味は角砂糖のような花)が所狭しと咲き乱れ、心がすっきりする香りを周辺に提供していた。
オープンテラスの客層は主にクイーンファッション学院に通うデザイナーの卵や東京イラストレータースクール リウスのイラストレーターの卵、クイーン大学の大学生等の若い男性女性がそれぞれグループを形成して、ハンバーガーを片手に様々な事柄を話していた。予が昔、みんなに宣言したとおり、貴族や平民を職として考え、職業に貴賎はなく、それぞれ共存するのだに基づいてみんな、滞りのないコミュニケーションを行っている。
今日の衣装は黒を基調としたゴスロリ衣装の日らしく、店員はみんな、ゴスロリ衣装を纏っている。
ゴスロリ店員1「いらっしゃいませ、イヴ女王様。今日は視察ですか?」
お昼ごはんラッシュが過ぎて、ピアニストが演奏するピアノの穏やかな曲に包まれた店内をお客様の邪魔になることなく、さり気ないお水のお代わりをサービスとして提供しつつ、働いていた店員の一人が予に気づいた。
すると、店内のお客さん、店員達が予に気が付いてみんながお辞儀をした。
クイーン王国の城下街では両親に連れられて幼い頃から民の生活に密着した王族として過ごしていたので、他の国に行った時のような土に膝をついて頭を下げて王族に敬意を表するみたいな行為を向けられたことはない。
そういった効果なのか、気さくにみんな、予に話しかけてくれる。
威厳がない女王がいたものだ、と未来お姉様が予に愚痴るのだが、お姉様の表情が柔らかかったのでこれが正解なのだろう。正解であって良かった。
今日も予はみんなに笑顔で手をゆっくりと振る。
イヴ「今日は予の愛人 ふわりに会いに来たのだ! それと、ご飯を食しに来た」
ゴスロリ店員1「ふふっ、イヴ様は本当にふわちゃんが好きなんですね♪」
真央&セリカ「「ふわわー」」
ふわりの挨拶の物真似をして、真央とセリカがそれぞれ予の右足、左足を踏みつけた。ちくっとした痛みを感じた。
イヴ「痛いのだ。何故、足を踏んだのだぁー」
ルルリ「えー、何で解らないんですか……。ヒントは愛人ですよ、イヴ女王様」
イヴ「うむ、解ったのだ。嫉妬しているのだな。大丈夫、真央とセリカも愛しているのだ。予の愛は地球規模なのだ」
真央「あんた、友愛とか言い出さないでよね、地球市民とか、言っちゃ駄目よ」
イヴ「そんなお花畑な左翼にはならないのだ。予はポーションで命を握りつつ、武力をちらつかせないけど……半分くらいメディアに公開しちらりズムをさせつつ、慈善活動で異国の民の心を魅了しつつ、メディア活動で王族っぽくない平民感を出して怖くないんぞフレンドリーなんだぞとアピールし、予とお友達になれば、予と共に人々の幸福発展に勤めようと握手し」
と、予は真央に語りながら、店員達が席に案内するのを待たずに予はどんどん、ある席を目指して、進む。
心なしか、真央がぶわーと汗を掻いている。
イヴ「そうして、予とお友達関係を築いた国は安泰であろう? しかし、予の敵になる国。傍観している国は良いが……敵になる国はあらゆる手段を用いてひねり潰す。それが民を護る王族のお仕事であろう? レイお兄様」
青い長髪の男性 レイ・リクの背後に狙いを定めて、思いっきり、ジャンプして抱きついた。
タバコの匂いから、甘い飴の香りと無臭の香水をつけているので幾ら、肩にすりすりと頬を擦りつけても苦にはならない。
むしろ、頼りになる真面目な商売に公平な大商人であるレイお兄様を予は慕っている。異性的な意味ではなく、幼い頃には両親の仕事の関係でクイーン王国の分家 リク家に預けられていたこともあり、実の兄のように思えるのだ。
22歳という若い年であるのに未だ、結婚していないのが心配ではあるが、今日も元気なようだ。
レイ「妹君、俺に抱きつくのは良いが周囲の眼を気にしろ。ほら、笑われているぞ」
レイお兄様と同じ長いテーブルに座っているクイーンファッション学院の生徒達がみんな、両手でにやつく頬を覆って、予と視線が合わないようにあらぬ方向を向いた。
レイはそれを見て、口元が緩む程度に微笑む。
それに周囲のお客さんや学生達は驚いた表情をする。
レイ「おいおい、俺が笑うのはそんなにおかしいか。ふぅー」
と息を吐いた後、缶を取り出してテーブルに置くと、その缶の中に幾つもあるペロペロキャンディーから、赤い苺味を取り出して、しゃぶろうとしたところを予がそのペロペロキャンディーを口に含む。
レイ「妹君、後で金を払うんだ」
イヴ「予の元気な顔を見られた料金として」
レイ「納得だ」
真央「えー、納得するの、それ!」
真央は学院生に席を引いて貰い、その席に座りつつ、反論をした。
同じように真央の隣に腰をかけたセリカがさっそく、メニューを開きながら、真央の言葉に反応する。
セリカ「イヴちゃんとレイお兄様の関係って借りたら、返す的な等価交換が多いですわ。不思議なことではないでしょ。あ、お子様メニューセットを選択するとクマーちゃんのキーホルダーが………」
真央「レイさんを知って約1年経つけど、クールなのか? イヴに甘いのか? 解らないですよ、本当。おい、セリカ、あたしはお子様は頼まないわよ、イヴ、イヴにいきなさい」
レイ「俺は妹君には甘くない。いつも、女王である妹君に分家のリク家 当主として敬う精神と商売人の正直であれの精神で接している。真央、妹君は15歳だ、適用外だ」
予はペロペロキャンディーを加えつつ、レイお兄様と同席の時はレイお兄様の膝の上が予の専用席だ。なので……今日も遠慮せずに座る。
座った時に、両親の親友の息子である17歳の自称 予のお兄ちゃん 新刀寺明日葉が「あー、俺もイヴのお尻の感触を膝で味わいたい」と変態の悲鳴を上げていたが……いつもの冴えない黒髪秋葉原系少年の戯言なので気にしない。
そう、明日葉にとって変態発言は日常茶飯事なので誰も気にしない。”まだ”、予が不快な事以外、被害は無いので。
レイお兄様の隣に王族の次に偉い分家の人間にびびっているルルリが座ろうとしていた。ルルリの足が生まれ立ての子鹿のように震えている。なんだか、可哀想だ。罪悪感を感じる……。
イヴ「今日は予がルルリのお代金を持つのだ。安心して食べるのだ」
ルルリ「あ、ありがとうございます、イヴ女王さ、様」
震える手で椅子を引こうとする。
ルルリ「わ、私もご一緒していいんですね」
そんな確認を取ったルルリを急かすように一人の学院生がルルリの座ろうとしている椅子を引いてあげた。
そして、手振りで早く座りなさいな、とルルリを急かす。
ぱっと向日葵が咲いたような笑顔でそれに応えながら、ルルリは着席する。もう、両足は子鹿のように震えることなく、地にしっかりと足をついている。
学院生1「良いわよ、こんな可愛い犬耳っ子ちゃんなら、大歓迎。ガールズトークをしよっ。よしよし」
頭を撫でられるルルリ。犬耳がぴこぴこと嬉しそうに揺れている。
学院生2「よしよし」
また、頭を撫でられるルルリ。犬耳がぴこぴこと嬉しそうに揺れている。
学院生3「よしよし」
また、また、頭を撫でられるルルリ。犬耳がぴこぴこと嬉しそうに揺れている。
明日葉「よし――――」
また――――
させるか、と予はメニューをブーメランにして明日葉に投げつける!
イヴ「ふむ!」
真央「変態!」
勇ましい真央の叫びと共に真央の手からメニューが放たれる!
セリカ「あらあら。えいっ♪」
穏やかな声とは比較にならない速さでブーメランと化したセリカの持っていたメニューが明日葉を目指す!
予、真央、セリカの三者が放ったメニューは希望通りの効果を見せる。
明日葉「うぎゃああ、メニューの角が眉間と、右頬、左頬に」
何処を押さえて良いのか、解らない明日葉はとりあえず、顔全面を両手で覆って、首を激しく上下に振る。
なんか、アホみたいなのだ………。
真央「あんた、声優の有栖川澪のネットラジオ 【澪と一緒】に深夜アニメ 絶望騎士 レイルナイトの感想の次にところでイヴ婚できますか? って意味不明な気持ち悪い文章送ったでしょ! 澪があたしのとこで愚痴って言ったわよ。牛丼 特盛り食べながら」
よく分からないが真央は何故か、漫画家や声優、小説家等のクリエーターさんの友達が沢山居る。
予は一度、有栖川澪さんと真央とでお食事をしたことがある。とても、清楚な優しい女性だと記憶している。
レイ「明日葉、世間様に迷惑を掛けずに変態行動をしろ。お前の習性なので……逮捕されない範囲内ならば、注意で済ませよう。あまり、酷いと聖女 アイシャをけしかける」
明日葉「げー、止めてよ、レイさん。ただのオタクに聖剣使いとバトルなんて、無理ゲー過ぎますよ」
さすがに訓練を欠かさないアイシャと、新刀寺銀行御曹司であるオタクとでは力の差がありすぎる。
しかし、ある一点では化け物じみている。
ルルリ「無理ゲーなんですか? あ、セリカ様、ルルリがお子様頼みますから、キーホルダーは差し上げます」
セリカ「ありがとうですわ。よしよし」
犬耳を中心に撫でられたルルリはご機嫌そうにはにかんだ。
ルルリ「わふっ」
セリカ「無理ゲーではないのが不気味です……」
明日葉「セリカちゃん、あれ、必死で急所を逸らしてるんだよ!」
真央「あんた、本当に人間? 新種の竜族でしょ、とか、毎回、思うわ」
学院生1「そんなにですか?」
イヴ「聖剣 ローラントで斬りつけられているのにHPが半分しか減らないのだ」
明日葉「注文は決まったか? ふわりんを呼ぶぜ。小動物界のプリンセスを呼ぶ」
真央「良いから、早く呼べ」
明日葉の肩を真央は容赦なく、竜の力を込めて叩く。
しかし、明日葉は顔をしかめるだけだった。
何故、無駄に頑丈なのだ………。
描いてくれたイラストレーターはトシさん。
レイ・リクという男性でクイーン王家の分家 リク家の若き当主です。
変態ではない方の大商人なクール系お兄様。
様々な面から、イヴを助けてくれる頼りになるお兄様だ。




