第30話 召喚器制作 Ⅵ キリアナとは?
キリアナ戦線の旗頭になっていたキリアナとは? のお話。あなたの周囲にもキリアナがいるかも。ホラーですね。
第30話 召喚器制作 Ⅵ キリアナとは?
視点:北庄真央
場所:竜族の国 北庄 北庄王城付近
日時:2031年 7月15日 午後 1時07分
砂漠の風景は何もなくて、ここで大規模な戦闘があったなんて事実はなくなってしまいそうだ。
イヴなら、キリアナについて知っている気がした。
あれから北庄の人間がキリアナを探しているのに一向に見つからなかった。
案の定、巨大な石に座って刀を振り回していたイヴはあっけらかんとした表情でキリアナの正体を軽く喋ってくれた。
イヴ『キリアナが見つからない? 当たり前であろう。あれはいないのだ』
真央『どういうこと?』
イヴ『そこが華井恵里の恐ろしいとこだ。異世界 リンテリアは通信網が発達していない。情報の信憑性を証明するのがもの凄く難しいのだ。残念ながら』
真央『そう、そうね。携帯電話は王族や本当に一部の権力者のみ』
イヴ『キリアナの趣味や好きな人物、嫌いなスポーツなどのパーソナル情報を軍の人間や民にばらまき、その上に不自然にならない突出しない行動情報や少しの美談を積み上げてゆく。ああ、この人が言っているんだから確かにキリアナという中級階級の軍人は存在するのだろう』
真央『ふーん、怖い』
イヴ『情報が武器にも防具にもなるが、この場合は人間になったのだ。そして、形のない人気者となったキリアナが国の秘密を知って消されそうになったと陰謀論を匂わせる。この国の識字率は未だ、半分以下なのだ。それは嘘を見破る能力に長けていない証でもある。当然、普段の王の酷さから感情論に走るであろう』
真央『人は理性ではなく、結局、本能で生きる。それを理性で必死に隠している、か。昔、読んだ小説に書いてあったっけ』
イヴ『その時点でキリアナという形の無い華井恵里のマリオネットは完成したのだ。実際に軍の何人かが1ヶ月前の土砂災害で死んでいるし、行方不明にもなっている。それも陰謀論として囁かれていた。国としては末期なのだ』
真央『本来、あたし達が立て直さないといけないのに。良いの、イヴ?』
イヴ『1年後、ピカピカにして北庄竜王家にお返しするのだ! 未来お姉様にも良い勉強になると言われているし、心愛が手伝ってくれるのだ』
真央『暴走した貴族の粛正もしてくれるんでしょ、何でそんなイヴに益の無い』
イヴ『違うのだ。ボクはこの世界を優しい世界にしたいのだ! それがお母様との最期の約束なのだ!』
その純粋なイヴの台詞にあたしは絶対、イヴと結ばれるんだと決意した。
そして、それは意外な形で訪れる。




