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創世する世界のイヴ # Genesis to the world's Eve  作者: 遍駆羽御
本編―――― 第1章 凪紗南イヴ皇女様と、愉快な仲間達
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第0話 イヴ皇女様

 第0話 イヴ皇女様



 幼い子どもには夢を抱く権利がある。

 どんな荒唐無稽な夢でも良い。

 書店員ではなく、紀伊〇屋書店! と答えるのも子どもらしいミスでとても、可愛らしいだろう。

 ゴ〇ラって答えて、将来、日本軍と真っ正面からやり合うのかなって心配できるのもこの時期がピークだろう。

 いずれにしても、子どもの夢は国の宝である。

 お気に入りの幼女は”お父様やお母様と一緒に優しい世界をつくる!”という壮大な夢を抱いている。

 少女神 リンテリアはロリっ子2次元少女のエロ漫画を読むふりをしながら、空に浮かび、そう哲学者のように高尚な事を考えた。

 白銀の髪はおかっぱに切り揃えられており、一見、真面目な神様のように見えるが騙されてはいけない!

 少女神 リンテリアの純銀のような綺麗な瞳に映っているのは……日本の凪紗南なぎさな天皇家 女王の館の近くに併設された”ある幼女”の為の小動物園にて、子犬や子猫と競争しているのは”そのある幼女” 凪紗南イヴ皇女 2歳だ。別名として、イヴ・クイーンという名もイヴ皇女にはある。


 イヴ皇女が転んだところを子犬と子猫に背中の上に乗っかられている。

 お尻の辺りまで伸ばしてある白銀の髪を子犬と子猫が前足で撫でる。

 イヴ皇女は転んだことに驚いて銀色の右眼と金色の左眼のオッドアイから涙をぽろぽろ流し始めた。


 イヴ皇女「えりりん、えりりーん! いたいのだぁ。こねこさんと、こいぬさんがボクの上からどいてくれないのだぁー」

 うわうわんと叫ぶような泣き声は満月まで聞こえるからもしれないと少女神 リンテリアは苦笑した。


 助けてあげても良いが……ここでイヴ皇女と出逢う”未来は存在しない”。

 一つの未来が崩れれば、多くの選択できる未来分岐が増える。それを少女神 リンテリアはよし、とはしなかった。

 何故ならば、今のルートは限りなく、少女神 リンテリアの望みに近しいものだからだ。

 それに泣き喚くイヴ皇女を助ける人物が現れた。若い女性 華井恵里はないえりという名であると記憶している。

 その女性は竹で編まれたお洒落なランチボックスを自然の草クッションの上に置くと、イヴ皇女の上で欠伸をしている子猫とくぅーんと悪いことをしたなぁと鳴く子犬をどうかした。


 華井恵里「さぁ、いーちゃん、立ち上がりなさい。将来、日本の頂点と異世界 リンテリア クイーン王国の頂点に君臨する方がそんな惨めな格好をするものではないわ」


 イヴ「いつも、えりりんはボクにきびしい」


 華井恵里「あら? 私は誰に対してもドSな対応よ。甘さは人を堕落させるのよ。将来、覚えておきなさい。そうね……。そうすれば、私と敵同士になっても私を殺せるでしょう?」


 難しいことを幼女に言うなぁーと思うかもしれないが、イヴ皇女はまだ、2歳という幼さでイヴ皇女のお父様 凪紗南春明なぎさなしゅんめいの妹 凪紗南未来なぎさなみくから英才教育を受けている。

 未来は勇者の娘に相応しい知識をつけさせると張り切りすぎて、既に鬼未来おにみくとイヴ皇女に言われ始めている。その成果もあり、立ち上がって、身につけている黒いワンピースに付着した草を小さな手で払っているイヴ皇女の教育課程は高校卒業のレベルにまで到達している。


 未来『皇女、解らないこと以外は大量に本を読んで自分で考えろ。解らない! と嘆く人間は大抵、自分で何とかする事を忘れた指示待ち人間だ。それでは日本の国民が非常に困る』


 そんな雪の如きツインテールの悪魔 凪紗南未来のみくみくにしてやんよ♪ 教育は少女神 リンテリアでも受けたくないものであった。なるほど、あの理念では駄目神と呼ばれるわけである。

 その教育を受けたイヴ皇女がハキハキと答える。


 イヴ皇女「ボクはえりりんと外交努力で平和条約を結ぶことを目指すのだ! えりりんの事、ボクは大好きなのだぁ」


 華井恵里「まぁ、そんなことにはならないわ。でもね、覚えておいて。世界はいーちゃんの優しさなんて通用しない場面が多いってことを」


 だからこそ、アルビノ特有の透き通る白い肌を月光の光によってより、白く輝かせているイヴ皇女は願うのだろうと少女神 リンテリアは幼すぎる理想に懐かしいストロベリーケーキのような甘ったるさと、無糖の豆を入れすぎた珈琲のような苦さを同時に感じた。

 ああ、このまま、時が止まれば、無邪気な微笑みも永遠になるのかもしれない。

 だが、それは少女神 リンテリアさえ、到達できないデウス エクス マキナの海の彼方の領域だ……。つまりは存在しない夢物語。


 イヴ皇女「それでも、ボクは地球と異世界 リンテリアの全ての民をハッピーエンドに導くのだ」


 華井恵里は黒い白衣のポケットに両手を突っ込んで満月を見上げる。

 カラス色の長い黒髪が微風に揺れる。

 それを気にせずに、華井恵里は満月に向かい……手で形取った銃を撃つ真似をする。


 華井恵里「ふふふっ、そうね。とても、とても、お父様とお母様に喜ばれる回答ね。ああ、今日も作ってきた照り焼きバーガー、いーちゃんのお母様にレシピを教えたわ」


 イヴ皇女「やったぁ! これからは毎日、食べられるのだぁ」


 イヴ皇女はランチボックスを開くと中に入っていた照り焼きバーガーに早速、齧りつく。


 幼女の口では照り焼きバーガーは大きくて、照り焼きバーガーについた歯形は微々たるものだ。


 幾ら、華井恵里がいーちゃんサイズに作ろうか? と言っても、イヴ皇女はそれを良しとはしなかった。聡明なイヴ皇女でもそういう子どもらしい大好物な食べ物は多く食べたいという気持ちもあるのだ。

 そんな優しい風景なのだが……少女神 リンテリアは涙を零していた。

 姿を消している訳なのだから見られる可能性はないが、少女神 リンテリアは咄嗟に開いていた二次元ロリエロ漫画で涙を隠した。

 しばらくして泣き止んだ少女神 リンテリアがしたことはいつものようにお気に入りの幼女 イヴ皇女を空中から気づかれないように盗撮することだった。



 少女神 リンテリアは思う。

 いつか、華井恵里とイヴ皇女が微笑みながら、照り焼きバーガーを食べる写真を、イヴ皇女に渡せたらな、と。



 …

 ……

 ………

 しかし、見えた限りの未来ではそのエピソードは存在しない。



 少女神 リンテリア「さぁ、いーちゃんが産まれてから2年。後1年でいーちゃんは少女神 リンテリアと出逢う。それから………世界は虫の…………いいえ、人間の為の神によって導かれる。それは多くの者が渇望し、多くの者が拒絶する神々が与えた人間が生き残る為の試練。お願いだから虫よ、せっかくの”箱船”を自ら、壊すな」



 少女神リンテリアがそう、危惧してから13年、世界は未だ、神々が与えた人間が生き残る為の試練の只中だった。

 凪紗南イヴは15歳に成長していた。






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