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創世する世界のイヴ # Genesis to the world's Eve  作者: 遍駆羽御
本編―――― 第2章 1000キュリアの祈り
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第21話 あなたに居場所はありますか?

 第21話 あなたに居場所はありますか?


 視点:凪紗南イヴ

 場所:クイーン王国 クイーン王城ポーション生成工場

 日時:2033年 4月4日 午前 11時47分


 予らは階段口から通路へと出て、予が治癒魔法を行使する一室へと入る。

 窓硝子のない窓が幅広く、とられている涼しげな一室だ。

 予は窓枠に手を付く。

 窓枠から下を見た光景はしっかりと職員達が無数の長机に多くのミネラルウォーターの入った300㎖瓶を置いてゆく光景だった。流れ作業中の男女職員ともに給食着のような白い服、髪を中に入れた白い帽子、分厚い黒いブーツを履いていた。みんな、楽しそうに世間話をしながら働いている。勿論、誰もが手足を止めることがない。

 予はその光景を見て、うん、OKと肯定し、頷いた。そして、予は満面の笑みでセリカ、真央、ルルリ、ジョーカーに注意する。


 イヴ「皆、絶対に落下しないよう気をつけるのだ!」


 真央「いや、お前が言うなよ」


 尻尾で予のお尻を叩いた。お尻は予の身体の中で防御力が尤も、高い!

 効かないぞ! と言うように予は真央の朱い髪を撫で撫でした。


 イヴ「経験者が語るのだ!」


 セリカがわたくしも、と頭を差し出していたので撫で撫でしてあげた。


 セリカ「ありがとうですわ、イヴちゃん」


 予は石壁に打たれたフックに掛かっているメガホンを手に取り、口付近に持ってくると、窓を覗き込む。


 イヴ「みんーな、イヴ・クイーンなのだ! こんにちはぁ!」


 ポーション生成職員達「「「こんにちは! イヴ・クイーン女王様!!!!」」」


 予の声に工場全体が揺れるんじゃないのか、というくらいの大きな声が返ってくる。

 それに耳を傾けて聞いた後、予は話しを続ける。


 イヴ「さて、みんーな、ご苦労なのだ! 予が今からいつも通り、ミネラルウォーターに治癒魔法をかけるのだぁ!」


 その声にLilithのコンサートのファンみたいな「おうー!」という声が聞こえてきた。今日もやる気ばっちり。この時期は季節の変わり目のせいもあり、体調を崩してしまう人が多々いる。

 真央に源北庄王に報告しても、良いと言った手前、反応が気になる。


 案の定、真央はその端から見れば、簡単な手法にあんぐりと口を開けたまま、固まっていた。

 真央の尻尾をちょんと人差し指で触れてやると動き出した。真央人形みたいなのだ! と考えていると、真央がぼそりと予が簡単に告げ口しても良いよと言った理由を知り、魂が抜けたような小さな声で呟いた。


 真央「………ボロ儲け商売かよ。元手ほぼ0。これ、知ったら、ジョーカーが殺しにくるって噂だけど。知ってもできねぇー」


 なんか、石壁に手を突いて、俯き加減の姿を晒している。

 真央、疲れさせてごめん。

 他の人のポーションへの反応は、るーちゃんはコウモリさんでいつも、予を観察しているので知っている。これは無反応。

 セリカはルルリの口を無邪気に塞ぐ。なんか、息がしにくそうだ。


 セリカ「まぁ、ルルリちゃん、お口チェック♪」


 ルルリ「がく、がく……ぶるぶる」


 欠伸を先程から何度もしている壁に寄りかかるジョーカーに対して、ルルリはチワワのように震えていた。もはや、ルルリにとっての天敵なのだろう。


 ジョーカー「ジョーカー、怖く、ない、正義の味方」


 黒のローブと目深に被ったフードはとても、正義の味方には見えず、さらにローブから覗く聖剣 エクスカリバーの神秘性が只者ではないに拍車をかけてしまっている。

 事実、鬼未来と対等に戦える数少ない人材だ。


 ルルリ「あわわわぁ……」


 ジョーカーに声を掛けられただけで、ルルリは腰が抜け、失禁した。

 だが、ルルリは床に広がる世界地図に対して、何も発言できない。何故なら、気絶してしまっているからだ。それも正座で。実に器用だ。


 ジョーカー「なんか、気絶した」


 イヴ「責任をもって、医務室に連れてゆくのだ」


 ジョーカー「イヴ神様の命、命代えても………」


 ジョーカーは敬礼してかっこつけようとするのだが、やはり、眠かったらしく、足下がふらついている。

 それでも、簡単にルルリをお姫様だっこしてしまった。


 真央「マフィアかよ………」


 そんな真央のツッコミに見送られ、ジョーカーとルルリは医務室を目指す。ルルリは気絶しているけど、目覚めたら、今の状態を見てまた、気絶しそうだ。

 さて、こちらも用事を済ませつつ、回復アイテムを手に入れなければ!

 気合いを入れて、いつもの言葉を紡ぐ。


 イヴ「神化」


 銀色の翼が石壁を突き抜けて、おそらくはポーション生成工場や山の向こう側にあるクイーン王城を包み込むような透明なドームを構築する。これにて、固有結界 ヴァルキュリアが成り立った。SOUL中毒、ノエシス中毒、プリミティブイデア中毒はこれで起きないだろう。

 それが完了したのか、銀色の翼はすっと消え、代わりに……天井をすり抜けて、銀色に輝く雪が人々に降り注ぐ。

 その雪はいつも通り、触れた人物のMPを強制的に回復させる。


<イヴのステータスが変動します…………>


 Level 5

 HP 556→1668 素質 D

 MP 24200→∞ 素質 goddess

 SOUL 6540→∞ 素質 legend

 STRENGTH 1097→3291 素質 C

 SPEED 2610→7830 素質 A

 MAGIC ATTACK 4820→14460 素質 SSS

 CONCENTRATION 1970→5910 素質 B

 DEFENCE 440→1320 素質 D

 MAGIC DEFENCE 3760→11280 素質 SS

 INTELLIGENCE 4820→14460 素質 SSS

 little girl ∞(一生涯、ロリの呪い) 素質 impossibility

 属性適正 炎・水・地・風・氷・雷・光・闇・毒・無・古代・蘇生・治癒・妖精・竜・魔王 complete!!!

 常識外魔法 融合

 武術 凪紗南流


<神化が解除されるまで維持されます…………>


 そして、神化のプロセスが終了したのと同時に腕時計型携帯電話のホログラム ウィンドウが自動に目の前に表示される。


 神化維持限界時間 45分。


 るーちゃん「うむ、やはり……神の力でヴァンパイアプリンセスとしての力が阻害されているようじゃ。惜しいのお。なんとかできれば、歴代最強のヴァンパイアプリンセスなのに」


 イヴ「予は皆を救える治癒の力だけで今は良いのだ! 治癒魔法 エンジェル フィールド」


 神化だけでも、予の息は上がるが、さらに身体が重くなる。治癒魔法のgoddess クラス エンジェル フィールドの銀色の光が一瞬、ポーション生成工場内を包み込んだ。

 そして、多くの瓶内のミネラルウォーターが銀色に輝き、すぐにその光を失い、外見はただのミネラルウォーターに見えるのだが………。


<凪紗南イヴは治癒魔法 エンジェルフィールドをコントロール マジック エフェクトし、57890瓶のミネラルウォーター 300㎖に限定し、治癒の効果を及ぼさせた>

<57890瓶のミネラルウォーター 300㎖は57890瓶のポーション 300㎖に変化した>


 真央「うわ、これで中身がポーション! すげー、すげー、あんた!」


 眼下に広がる多くのポーションを指さして、真央は興奮してそう言った。

 そんな真央とは対照的にセリカは眼下を覗き込んでうーんと唸っている。


 セリカ「ねぇ、イヴちゃん、治癒魔法 エンジェル フィールドってHP全回復の範囲魔法ですわね。とすると………うーん、おかしいですわ。HP10%回復?」


 イヴ「エンジェル フィールドは効果を限定させる魔法操作の技法 コントロール マジック エフェクトさせやすいのだ。次!」


 させやすいとは言っても、本来大学生で習う技法だ。かなり高度である為、予の体力はさらに削られ、少し目眩を覚えたが………予さえ我慢すれば、救える命だってある回復アイテムで。

 予の言葉を受けて、職員達がせっせとコルクを閉めてからポーションをワゴンに乗せて運び出す。

 それと交互に多くのポーションがあった場所に多くのミネラルウォーターが置かれる。その作業が粛々と行われる中、予は息を整える。


 るーちゃん「神化はあまり、多用するな、イヴ。おそらく、限界まで使用すれば、数日間は眠りから覚めないであろう。さらにおそらく、その上があるのじゃろ?」


 椅子に座り、ふぅーと息を吐いた後、るーちゃんに予は応える。


 イヴ「永続神化の事、よく解ったのだ、るーちゃん。駄目神と協力すれば、予は固有結界 ヴァルキュリアを張らず、魔力も周囲に撒き散らさずに、時間無制限で神の力を行使できるのだ。反動はなく、ただ………」


 るーちゃん「ただ?」


 イヴ「駄目神に乳首をペロペロされるのだぁ。見返りに………」


 昔、治癒永続の陣にて、予は治癒魔法を時間無制限に効果を永続させる為に………恥辱を受けた。しかも、ロリNTRが最高♪ という駄目神の言葉に従い、アイシャ、真央、セリカ、未来お姉様、プリムラ、テスラ、心愛の前で予の乳首ペロペロされた。それはもう、激しく乳首に駄目神の唾液がべったりでなんか、シャンデリアの灯りを受けてテカっていた。

 その光景が思い出されて、予は頭をごつんと机にぶつけた。


 るーちゃん「とことん、駄目な神じゃな。我の予想だが、その永続神化が本来、神の普通の状態なのじゃ。本質からして、人間とは違うのじゃ。そこにイヴの場合、ヴァンパイア族の血の力を行使できるようになれば………」


 イヴ「なれば?」


 るーちゃん「Level次第で華井恵里や邪神とも戦えるだろう。その時は勿論、魔剣 レーヴァティンも扱えるし、魔王魔法のほとんども使用可じゃ」


 イヴ「それ、いつ頃?」


 るーちゃん「2年先?」


 気まずそうにるーちゃんが言った。

 修行込みの計算なのだろう。


 イヴ「長い………」

 と、予は呟いた。


 真央「それでも、華井恵里に勝つ可能性大でしょ、ドンマイ」


 セリカ「はい、そうです。マリアがイヴちゃんを蹴る前に叫んだアルティメットフォームですね!」


 イヴ「予はラ〇ダーじゃないのだぁ。ちなみに予はク〇ガ派よりもカ〇ト派なのだ!」


 セリカの妹 マリア・シーリングはク〇ガが好きでいつも、予を未確認生物に見立てて、ラ〇ダーの放映が終わった後、蹴ってくる。

 予は憧れているのだ。光速で動けば、あの地味に痛い蹴りを避けられるだろうと。家族を大切にする主人公にも好感がもてる。


 イヴ「見習わなければ! と。そろそろ、終わったかな、交換」


 予は眼下を確認して、瓶の配置が終わっているのを確認すると……さっそく、治癒魔法を唱える。


 イヴ「治癒魔法 エンジェル フィールド!」


 銀色の光が一瞬、工場内を包み込み、多くの瓶内のミネラルウォーターも銀色に輝いた。しばらくして、ミネラルウォーターは元の水色を取り戻した。


 真央「今度はハイパー ポーション」


<凪紗南イヴは治癒魔法 エンジェルフィールドをコントロール マジック エフェクトし、37890瓶のミネラルウォーター 300㎖に限定し、治癒の効果を及ぼさせた>

<37890瓶のミネラルウォーター 300㎖は37890瓶のハイパー ポーション 300㎖に変化した>


 イヴ「まだまだ、次!」


 息を荒げながら、予は瓶の交換作業を進める職員に命じた。

 石壁におでこを押しつけて、疲労の熱を冷ます………。


 交換の待機時間を無言で過ごす。


 もう、良いだろうと眼下を眺め、その通りだと確認した。

 間を置くことなく、予は治癒魔法を唱える。


 イヴ「治癒魔法 エンジェル フィールド」


 銀色の光が前のように一瞬、工場内を包み、瓶内のミネラルウォーターに変化をもたらせた。


 セリカ「ミドル ポーションですね」


<凪紗南イヴは治癒魔法 エンジェルフィールドをコントロール マジック エフェクトし、15000瓶のミネラルウォーター 300㎖に限定し、治癒の効果を及ぼさせた>

<15000瓶のミネラルウォーター 300㎖は15000瓶のミドル ポーション 300㎖に変化した>


 イヴ「さて、と。職員に挨拶しに行くのだ!」



 視点 凪紗南イヴ

 場所:クイーン王国 クイーン王城ポーション生成工場

 日時:2033年 4月4日 午後 0時10分


 職員の休憩するカフェテリアはとても、広く一気に30000人がここで昼ご飯を食べることができる。

 職員が癒やされるように観葉植物が通行の邪魔にならない程度に配置されている。また、職員のデスクには仕事に潤いをもたらせる目的で職員に一鉢ずつ、華が配られている。種類はランダムだ。

 めいめい、仕事の手が空いた者から仲の良い者達と一緒に食事を取っている。


 王族であるセリカ、真央は表情を隠すのがとても、上手い。予も上手い方だ。それは、それは、鬼未来様に小さな頃からしつけられている。両親とは違いスパルタな方なのだ。

 誰もが身体の一部が欠損している。右手であったり、左手であったり、右足であったり、左足であったり、あるいは瞳だったり、耳だったり、と様々な欠損が見られる。

 ここの職員のほとんどが身体障害者だ。勿論、健全者もいるが少数だ。


 ポーション生成工場職員「イヴ女王様、こんにちはです」


 予に挨拶をしてくれた女性は右足が無く、木の杖を突いて移動していた。


 イヴ「こんにちは」


 真央「ねぇ、イヴ。この人達の欠損部位を治癒してあげないの」


 その言葉に予は苦い記憶を思い出す。

 予には身体障害者の、産まれながらにして両足が欠損した同年代のロロイ・ヒクという友達がいた。

 もう、7年前の話だ。


 *


 パン屋の娘だったロロイは介護に疲れた両親と無理心中した。遺書には……これからもこの子の傍について介護していかなければならない苦しみと娘の将来に対する悲観が綴られていた。

 予がそのパン屋の名物 あんパンを購入しに来た時、リンテリア教のシスター達がロロイの両親の遺体を教会へと運んでいる場面に出くわした。


 シスター『イヴ様、悲しいことです。無理心中です、介護疲れでしょう……。勇者様が身体障害者の差別や処分をやめるように法律の整備をしました。それ自体は良いのですが……それだけでは人は救われないのでしょう。身体は五体満足にはならず、彼らの苦しみは消えないのです。ただ、私達はリンテリア神様に来世での彼らの幸福を祈るのみです』


 イヴ『ロロイ! ロロイ!』


 シスター『治癒魔法で回復させるのはお止め下さい』


 イヴ『何故、なのだ!』


 シスター『心は誰にも癒やせないからですよ』


 イヴ『それでも、予は!』


 シスター『駄目です! 絶対に………』


 今、思えば、シスターの言葉は正しかった。ただ、ただ、予は傲慢だった。なんとか、なると漠然と考えていた。幼い、昔も、今も………。


 イヴ『邪魔だ。どけ! ロロイ!』


 パン屋の扉を急いで開けた。


 ロロイ『いーちゃん。あ、あ、あたし、いらない子だっ……。ねぇ、転生宮ってどんなとこ?』


 イヴ『それよりも……』


 予は包丁の突き刺さったままのロロイの腹部を見て、右手を少し動かした。

 ロロイは必死に両親の攻撃を防御した生々しい傷のある手で、予の右手の動きを受け止めた。

 ロロイは息と一緒に血を吐きながら、予を睨み付けた。


 ロロイ『いーちゃん。傷を治したら、もう絶交よ。やっと、死ねるんだから』


 イヴ『死なんて救いに、するな!』


 ロロイ『それは全てを保っているイヴ女王様だから言える言葉だよ。普通すら手に……』


 苦しそうに、息を整えて、予を諭すように優しくロロイは微笑む。


 イヴ『………』


 ロロイ『手に入れられない。相談できないよ。少し前からパパに背中を殴られていたなんて。相談できないよ。少し前からママにご飯をもらえ……助かってたよ、いーちゃんが持ってきてくれた王城の御菓子』


 イヴ『日本に! 日本に来ないか! ファクトリーなら、義足を! 機械の両足を!』


 ロロイ『その足は、大地を踏み締める感触を味わえるの? いーちゃんと同じなの? 走れるの?』


 イヴ『それは………』


 ロロイ『いーちゃん、そのなんでも……できるって姿勢を直さないと大事なとこで……後悔するよ、きっと』


 イヴ『ロ、ロロイ! ロ、ロロイ! 予は、予の力は友達の一人さえ、救えない! 一体、何の為にこんな力が予に、あるのだぁ』


 そう、叫びながら、予は学んだ。

 予の治癒魔法、蘇生魔法では産まれながらの宿命を治癒できない!

 予は学んだ。


 シスター『さぁ、イヴ様。その子を眠らせてあげましょう』


 イヴ『心は癒やせないのか?』


 ロロイの長い黒髪を梳いてやる。いつもは予の銀色の髪をロロイが梳いてくれた。横でアイシャが何やら、頬を膨らませて「雌豚……雌豚、雌豚」と決まって独り言を言っていたが………。

 そんな幸せな光景にロロイはもう、いないのだと思うと、涙が溢れた。


 シスター『深すぎる心は誰にも癒やせませんよ。元々、身体障害者に生きる場所がないんですよ。日本から渡ってきた私は両世界の常識を知ってます。ショックでした。勇者様がどうにか、しなければ、身体障害者は今も産まれてすぐに間引きされるか、それとも、家族に匿われて一生隠れ暮らすか。その二択だけだったのです』


 イヴ『お父様は……』


 シスター『作ろうとしました。彼らの居場所を。道半ばで倒れました』


 イヴ『予は……創ろう。救えないのなら、せめて居場所を』


 シスター『イヴ様、それも救いなのです、きっと』


 *


 真央の疑問に予は治してみせる! と答えたかった。しかし、それはロロイの遺言がそう言うのに疑問を予の脳内に投げかけた。

 口内に溜まった唾を飲み込む。


 イヴ「………治せないのだ」


 予にその言葉は重かった。


 セリカ「元からない部位は生み出せない。DNAの地図に表記されていないからですね」


 イヴ「その通りなのだ。それはもはや、治癒魔法ではなく、別のなにかなのだ」


 るーちゃん「魔法は一応、魔力という言霊で該当魔法にアクセスし、デウス エクス マキナの海から運命粒子の変質を呼び込むデウス エクス マキナの力の一部を借りる形式のことを言うのじゃ。決して奇跡の力ではない」


 セリカ「奇跡を起こせる人っていないんですね。なんか救いがないですわ」


 イヴ「全能神が魔法を管理しているが、それを無視して、デウス エクス マキナそのものから直接、運命粒子変質の力を自分に取り込めれば、自分の判断で力を行使できると駄目神が裏技を教えてくれたのだ。同時にそんな化け物いないと」


 るーちゃん「当たり前じゃ。デウス エクス マキナの海とは森羅万象が生じた始まりの地にして、0と1の螺旋が無限に生じる力の極致」


 真央「人間の間ではデウス エクス マキナの海って名自体知らない。魔法は奇跡の力だと思われているわ、これは公にしない方が良さそうね、貧乳神様」


 真央はそう言って、予に自分の持っていた食料 レモン飴を手渡す。

 早速、予は飴を口の中に放り込んだ。


 イヴ「ボクは貧乳神ではないのだ! 幼女神なのだ」


 と、飴の位置を口内で変えて真央に抗議した。

 後は。


 イヴ「ありがとう、真央」


 真央「どういたしまして。この工場の人々の勇者様」


 その言葉は今の予には重すぎると、首を横に振った。

 勇者様はお父様のようなロリっ子好きでないとなれないのだ。

 真央がセリカにもレモン飴を配る。


 セリカ「皆さん、笑顔で働いていますわ」

 と、周囲を見渡して言った後、セリカはレモン飴を口に放り込んだ。


 イヴ「皆、やっと、静かに暮らせる安住の地を手に入れられたのだ。嬉しいことだ」


 本当はロロイにもここに。いや、予の傍で笑ってほしかった。

 予がロロイの居場所になるには……あの頃も、今も、幼すぎたのだ。

 こんな予でもいつかは母に、居場所になれるだろうか?


 イヴ「ちょっと、へんなこと聞くのだ」


 真央「なによ、言ってごらんなさいよ」


 セリカ「はい、どんとこーい苺さんですわ」


 イヴ「予はちゃんとした居場所、お母様になれるのだろうか?」


 真央「子どもにどうして、お母様は小さい子と同じなの? って聞かれそうだけど」


 セリカ「子どもにどうして、お母様っていちいちロリ声の偉そうな口調なのって言われそうだけど」


 真央&セリカ「「なれるよ、素敵なお母様に」」


 イヴ「ありがとうなのだ!」





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