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創世する世界のイヴ # Genesis to the world's Eve  作者: 遍駆羽御
本編―――― 第2章 1000キュリアの祈り
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第20話 神のはかりごと

 第20話 神のはかりごと


 視点:北庄真央

 場所:クイーン王国 クイーン王城ポーション生成工場

 日時:2033年 4月4日 午前 11時30分



 あたし、セリカ、ルルリがイヴの執務室で往生するまでゲーム 異世界リンテリア版の2週目をプレイしていた(当然、あたしは職業 イヴ。めちゃ有利!)途中でイヴが魔剣 レーヴァティンを帯剣させて戻ってきた。

 銀色の髪を揺らし、堂々と歩く姿は勇者様の娘に相応しい威風堂堂たる態度だ。世にも美しい金と銀の瞳があたし達を捉え、形の良い唇からロリ声の尊大な口調が飛び出す。


 イヴ「今から、ルルリのママを探すのだが、その前に回復アイテムの補給、お昼ご飯、武器防具の調達、それから、地方騎士本局なのだ。何かしら、地方騎士本局が情報を掴んでいるはずなのだ。焦らず行こう、ルルリ」


 ルルリはクイーン王国の宝剣にして最強の魔剣 レーヴァティンのオーラに飲まれてしまったのか、簡単に頷いて、只今、あたし達はクイーン王城の裏手の滝に隠されていた洞窟を抜けて、山と山に囲まれ、空は白い雲に覆われた発見されにくい場所に建つクイーン王城ポーション生成工場内にいる。


 真央「なんで、こんな解りにくい場所に建設したのよ?」


 イヴ「理由は特にないのだ。強いて言えば、近場で広大な土地だったからなのだ。昔は王族の避暑地だったようなのだが、見ての通り何もない土地なのだ。それも眉唾物だ」


 るーちゃん「本当のことじゃ。昔はここに綺麗な湖があった。しかし、5000年前の魔王と勇者の戦で湖は埋まった。本当に恐ろしいのは人間ということじゃ。自然を変えてしまうのだから」


 真央「どんな魔法が飛び交っていたのよ」


 セリカ「古代魔法ではないでしょうか。わたくし、見てみたかったですわ」


 ルルリ「そ、そんなの灰も残らないから怖いよぉ」


 震えるルルリの背をイヴが後ろから押して、無理矢理歩を進めさせる。そうしてやらないといつまでも、売店前に突っ立っていそうだ。もうすぐ、職員の昼休憩だろうから、雇い主であるイヴが傍にいたのではなかなか、うるさくできず、お通夜のようなしーんとしたお昼の買い物になるだろう。


 さすがはイヴ。職員が利用する売店にもカウンター付近、一番買い物客の目がつく場所にマクドファルドの出来たて、照り焼きバーガーやツインチーズバーガー、焼き鳥バーガー、フルーツバーガー等が置いてある。

 勿論、イヴのお父様が異世界 リンテリアに持ち込んだ和紙を何枚も紐で結んだもはや、異世界リンテリアでは常識なノート 一冊155キュリアが何冊も置いてあり、隣には筆 一本 2190キュリア、硯 4200キュリア、墨汁 900キュリア等の文房具も完備してある。御菓子は全て、売店の裏で作られているらしく、甘い香りが漂ってくる。

 ガラスケースの中には、イヴの好きなマクドファルドのシェイクが全種類、完備され、コーラやオレンジジュース、アイスココア、日本茶などのお馴染みさんも完備してある。


 労働者に優しい環境らしく、蒸したタオルが無料で貸し出されている。

 蒸したタオルの水分はヒール リフレッシュの効果が追加されていると、イヴ直筆の丸っこい小学生のような一生懸命さが伝わる字で看板に書いてあった。

 あたしよりも先に行っているイヴ、セリカ、ルルリの背に声をかける。


 真央「おーい、なんか飲みもん買おう」


 イヴは振り返り、スキップしてこちらへやってきて、あたしの肩に両腕を回した。

 なんか、良い香りがする。高貴な華の香り。


 イヴ「んー、ボクは………」


 真央「あんた、どうせ、シェイクでしょ?」


 イヴ「マクドファルドのシェイクは今月、買うと……クマさんキーホルダーがついてくるのだ。ボクの魔剣 レーヴァティンにつけるのだ!」


 るーちゃん「止めてくれなのじゃ。とんでもないメルヘンと硬派なファンタジーの化学反応で我は泣くぞ」


 真央「えーと、あんた、今日は………ミ〇にしなさい。〇ロにね」


 イヴ「仕方ない野菜ジュースにするのだ」


 セリカ「健康的ですね。ルルリちゃんの飲みものの代金はわたくしが出しますわ。わたくし、ミルクティーにしますわ」


 ルルリ「本当に良いんですか? セリカエルフ姫様」


 不安そうな目でセリカを仰ぎ見ている。そうよね、ルルリの身分 平民では雲の上だもの。王族なんてブルジョアは。あたしは………例外?

 セリカは人の良い笑みを浮かべて、ルルリの頭を撫でる。


 セリカ「子どもは遠慮無しです! 中には真央ちゃん 9歳児みたくお金に真剣な子もいるけど、小学生はそんなの考えずに無邪気に野を走っていた方が良いですわ」


 失礼だとは思ったが全く、その通りだ。平民には王族のような自分の意とは反するような重大な使命を持つことはあまり、ない。

 あたしはイヴの銀糸がふわりと風に揺れるのをじっと眺める。

 イヴがあたしの視線に気が付き、鋭い目線を送ってくる。先程までふにゃりとした笑顔で飲みものを選んでいた顔はない。凜とした女王の顔だ。


 イヴ「ポーションの製作法を源に、真央のお父様に伝える役を真央のお父様から命じられたのであろう?」


 真央「イヴ、知って…………」


 イヴ「解るのだ。ポーションは使いようによっては世界を破滅させも、支配させもする経済リーサルウェポンなのだ。教えるから伝えるが良い。どれ真似して見せよ? と源北庄王に一筆書こうか?」


 あたしはその言葉に戸惑い、声を出せずにいると、ふと、先程の高貴な華の香りが近づいてきた。

 おでこに唇の感触が、柔らかなマシュマロの感触が伝わる。そこだけ、妙に温かい熱が加わる。嬉しかった。


 イヴ「ボクはどんな北庄真央でも好きなのだ。それが偽りのない真央ならば」


 そう言って、あたしの選んだメロンジュースをあたしの手から抜き去る。


 イヴ「今日はボクのおごりなのだ」


 そう言うと、みんなの分の飲みものをレジに置いた。


 ポーション生成工場職員「いらっしゃいませ、イヴ女王様。こちら、全部で4点で合計 400キュリアのお支払いになります」


 イヴ「では、これで頼むのだ」


 イヴは職員の手の平にドラゴンが描かれた星型の100キュリア星を4枚、乗せる。

 自分の手の平を職員が熱い視線で向けていた。

 なんか、好きな声優の握手会に来た俺は今日、手を洗わないと握手後に言っているオタクの顔だ。


 真央「随分、安いわね」


 その言葉に石化が溶けたように素早く、職員は口を動かす。


 ポーション生成工場職員「イヴ女王様のお計らいで、飲みものに限り、一部を会社が負担し、安く提供させていただいております」


 イヴ「飲みものくらい、安くでも良いのだ。それに仕事の途中で休憩に何杯も飲むこともあろう。そういう場合はまとめて同じのを購入するとさらに安くなるのだ」


 真央「あー、その、ここは世界有数のイヴ個人の経営会社の一つ ポーション生成工場だもんね。それくらい恩賞に当てる財力はありますよってことね。スケールでかっ」


 飲みものを飲みがてら、聞いたがこの工場だけで職員が7800人いるらしい。

 給料は基本給 1ヶ月 30万~45万キュリア。ボーナスは夏、冬の二回で基本給の3ヶ月分。社内旅行にはセリカのお国 シーリング。

 退職金は勤続年数×200万キュリア。まだ、誰も辞めたことがないので……予定金額とイヴはもっと、多くして老後をより良い生活にできるようにした方がいいか? と聞いてきたので……。


 真央「いや、ねぇーよ、そんな超優良会社。なに、それ、勝ち組。時給 750円のあたしに謝れ」


 イヴ「おやつは疲れたら、休憩室で食べて良いのだ。勿論、無償。日替わりなのだぁ。みんなのアンケート結果を受けて決まるのだ。今日はマカロンなのだ」


 真央「………ひ、ひぎぃー」


 なんか、心が陵辱もののエロゲのメインヒロインになった気分だ。

 世界よ、これがロリなイヴ女王の理不尽な優しさだ!


 *


 エレベータを作る技術はまだ、異世界 リンテリアには発展していない。何処の国も頑張って日夜、研究に励んでいる。

 であるから、あたし達は必然的に階段を黙って昇るしかない。

 しかし、そこは若い女の子。そんなに黙っていられない。

 案の定、一番若いルルリがイヴのオペラグローブを引っ張る。


 イヴ「うん? なんなのだ、ルルリ?」


 ルルリ「私、勇者様についてよく知りません。教えて下さい、イヴ女王様」


 イヴはルルリと手を繋いで、階段をゆっくりと昇り始める。


 イヴ「勇者は異世界 リンテリアの常識では、その世界に幸福をもたらす為に神様から選ばれた神の巫女に古代魔法 ディスティニーゲートによって異世界に呼ばれる。これを異邦人召喚というのだ。異邦人とは別の世界の人間のことなのだ」


 ルルリ「じゃあ、イヴ女王様のお父様は?」


 イヴは陰鬱な表情を隠さずに周囲を見渡す。

 薄暗い階段には蝋燭の炎の小さな灯りしかなかった。


 イヴ「2016年 7月7日 日本地下都市 第四都市 芙蓉ふようで予の祖母 凪紗南朝顔なぎさなあさがおが反凪紗南天皇家勢力 雛菊の会に暗殺されてな。その現場にいたお父様 凪紗南春明なぎさなしゅんめいとお父様の友人であり、護衛役 雨雲英あまぐもすぐるさんがディスティニーゲート 30分後消滅する異世界への道に強制的に渡らされて……ま、古代魔法 テレポートのようなものだな。本当はお父様も殺されるはずだったのだが、英さんと一緒に難を逃れた。異邦人の中には特に優れた者、成績を残した者を勇者と呼ぶのだ。お母様は初めからお父様を勇者と呼んでいたのだがな」


 あたしは知らなかった。

 いや、教科書で読んだ文章――――2016年 7月7日 地球にて、第三次世界大戦の功労者 凪紗南朝顔が反凪紗南天皇家勢力 雛菊の会に暗殺。同時にその場にいた凪紗南春明も姿を消す。凪紗南春明が行方不明となり、その日から天皇代理として、春明の妹 凪紗南未来が日本を指揮する。

 2016年 7月7日 異世界リンテリアの種の大量突然死の謎を解き、解決する為にクイーン王国女王 リン・クイーンにより異邦人が召喚される。召喚された異邦人であり、その後の歴史的勇者の名は………凪紗南春明。

 より詳細な話しを聞くと、すぐに勇者様が違う世界の為に闘う選択を強いられたのが解る。大切な家族が死んだのに、大切な祖国がピンチなのに………。


 真央「さぞ、無念でしたでしょうね。当時の日本は多くの国に国土を狙われていたんでしょ。土建技術力が高いのもあるけど、地下都市の建築法 流士式建築法の建築家 流士優ながしゆうが日本にいたんですもの。それに各国のトップは知っていた凪紗南天皇家単体でも多くの国と渡り合う兵器を多く保有していた、と」


 イヴ「当時の凪紗南天皇家は日本の大砲なのだ」


 その言葉が階段と蝋燭の明かりしかない空間に響く。


 しばらく、その言葉にセリカ、あたしは黙った。やはり、という思いもあったが、その直系から聞くと真実味がある。

 ルルリはうわーうわーと唸っている。どうやら、勇者様の話を聞けて興奮しているようだ。


 真央「アメリカ大統領 ネリス・エトールと日本の首相 永松栄介ながまつえいすけが凪紗南朝顔に相談して、生身の人間でも機械兵に対応できるパワースーツなんてものを凪紗南天皇家が用意しちゃうくらいですものね。あんたの家、おかしいわ。まぁ、それがなくてもどうせ、あいつと繋がっていたんでしょ?」


 ルルリ「あいつですか?」


 ルルリは当然、推測できる材料がないので首を傾げる。

 それに対して、イヴは唇に小指を押し当てて、くすっと一笑いする。


 イヴ「それは秘密なのだ。しぃー」


 セリカ「あ、あいつって、リンテリア神様ですね、はい。そこまでわたくし、頭は鈍くありません」


 セリカは相変わらず、要領の悪い発言をする。

 あたしはやれやれと両手を広げて下から上へと少し動かす。それにイヴは苦笑した。


 真央「あんた、あたし達は側室候補の人間だから、このままいけば、凪紗南天皇家の一応、関係者になるわ。けど、ルルリは!」


 ルルリ「あー、ルルリ、聞いていませんでしたぁ。あーの、ジョーカーさんは来ませんか? ルルリを消しに」


 確かに両世界で、悪い子はイヴ様のジョーカーさんに連れて行ってもらいますよ、としつけに使われる謳い文句がある。

 イヴは何処かで大抵、イヴをストーキングしているであろうジョーカーの位置を探ろうと挙動不審に頭を動かす。


 イヴ「多分……平気なのだ。駄目神と予が繋がっていることは両世界の王族や有力者の態度を見れば、解る」


 ルルリ「皆さん、イヴ女王様に懇意にしてもらうように努力するか、イヴ女王様の逆鱗に触れないように大人しくしてますよね」


 その言葉にあたしは正直、驚いた。

 比較的、身長の低い胸の小さなロリっ子は優秀だ。

 それは古来より、勇者と呼ばれた者がイヴのお父様を含めてロリ好きであり、その年とは比べものにならないロリっ子と子を成すので……成長してもロリっ子のリンテリア人の場合は勇者の能力を受け継いでいる可能性があるのだ。とはいっても何代も重ねれば、他の血も混じり、かなり薄くなり、能力も平凡に近くなっているのだが……。

 将来、ルルリはロリっ子のままの可能性がある。


 真央「その年でよく人間観察してるわね。この情報は別にバレても、あっやっぱり、って思われる程度なので言ってもいいでしょう」


 セリカ「はい、イヴちゃんはなんと、神様になる為に……類い希なる頭脳とノエシス値が高いであろう凪紗南春明と、」


 真央「ちょ、待、すげー待つ。それは色々、旧世界の宗教家に余計な刺激に! おい」


 急いであたしはセリカの腰に右腕でしがみつき、左手でセリカのよく天然発言をする口を塞いだ。


 セリカ「むぐぐ」


 と、セリカが口を動かすが、こいつの天然発言破壊力はヤバイので……少し冷却期間を置かせるべく、未だ、左手はセリカの口を塞いだままに。


 ルルリ「わくわくわく」


 そりゃあ、今話題のイヴ様の機密なのだから、わくわくするだろうに。

 こちらはこいつら、情報の重要性を知らんのか、とツッコミたい。


 るーちゃん「我に任せろ。魔力の高いクイーン王国女王 リン・クイーンの種を意図的に出逢わせたのじゃ。これくらいは良いじゃろ。そろそろ、”今代のヴァンパイア族の女王”として自覚して、魔王魔法の極致 支配魔法系を覚えてもらわんとならんからな」


 ……

 …………

 なんか、魔剣のるーちゃんがとんでもない誰も知らない。え、ツチノコいるよ? 的なレベルの暴露をした。

 ……………

 ………………


 ルルリ&セリカ&真央「「「えー、ヴァンパイア族ってずっと、前、絶滅した……」」」


 イヴだけ、深呼吸してから、息をゆっくりと吐いて落ち着いていた。

 あんた、ヴァンパイアなのよ! と言いたい。


 イヴ「………やはり、なのだ。大方、5000年前の異邦人召喚は勇者によって自分の都合の良い状況を作り出す……いわば、神の奴隷仕事なのだ。お父様の時も予にこの世界を管理してもらう為に、自分が管理するのはやめーたをしたいが為に利用したのだ」


 ルルリ「神様って……そんな人間の為に!」


 ルルリの眼球が飛び出そうだ。いくら何でも驚きすぎだ。


 セリカ「よくわたくし達を虫と呼称しますわ」


 素早く、セリカがルルリに言葉の槍でトドメを刺す。


 ルルリ「あ、あぅー」

 と、いっぱいいっぱいな呻き声を発した。


 るーちゃん「5000年、いや、我が知っている範囲での時だがの。”5000年のそれ”も、”イヴのお父様のそれ”も、”神の因子と、人間最強のヴァンパイア族両方を兼ね備えた異端の存在 イヴ誕生”………他にも色々、あるのじゃが、それらは明らかにイヴ生誕がゴールではなく、始まりじゃ」


 セリカ「あら、まぁ」


 真央「な、何、さすが、最期の魔王 ルリアの魂。でも、なんで今、その話?」


 るーちゃん「何をさせたいのかは知らんが……人間を舐めすぎだろう、特級神層世界に住まう――――」


 その言葉を制止する為にカラス色のローブの顔が解らない少女が天井から床へと降りる。どうやら、天井に張り付いていた? のかは解らないが………素早く、魔剣に対して、殺気の籠もった声を発する。まるで普段の眠そうなグダグダの声とは違うやる気の籠もった声だ。


 ジョーカー「それ、駄目。それはリンテリア神様が許さない。イヴ神様の準備が」


 イヴ「ボクが?」


 るーちゃん「なにかをさせたい。これ以上は禁句と言葉が動揺して普通になったジョーカーよ。それでは哀れな事にあれは雑魚ボスか。可哀想に」


 と、言葉を発する度に、魔剣 レーヴァティンの鍔中央に位置するラグナ石が強く、紅く、点滅した。


 ジョーカー「”虫”程度、いいえ、人間が、至れる場所、神の意志、ない」


 珍しく、欠伸が混じらずにでも、眠そうにジョーカーは人間を否定する。

 自分も人間であるというのに。


 るーちゃん「ドジったな、ジョーカー。それで意図が理解できた。それは、それは、我はかつがれ、利用されたと思っておったが、”本当に我ら、邪神と闘ってきたヴァンパイア族は幼女神 イヴ・クイーン・ヴァンパイアプリンセスの代で遙か高みに昇るようじゃ”」


 ジョーカー「………ここ、同行」


 るーちゃんの言葉を無視して、ジョーカーはイヴの隣に並ぶ。


 るーちゃん「どうやら、本当に人間を舐めているようじゃ。ジョーカー、お主、イヴに――――」


 ジョーカー「それは余計です。本当の力で魔剣 レーヴァティンを破壊しますよ。虫ごときが! 私の努力を無駄にするなぁああああ!」


 るーちゃんの言葉がカンに障ったジョーカーは感情を爆発させる。

 誰彼、構わず、ジョーカーの殺気が攻撃力を伴って、みんなに襲いかかる。あたしは急いでルルリに抱きついて、殺気に背を向けてしゃがみ込んだ。


<ジョーカーの殺気、ルルリ以外の者はHP半分減少した>


 イヴ「ジョーカー! 神化」


 その叫びと共に、銀色の翼がイヴの背から発現し、銀色の透明なドームを構築し、翼は消失した。

 この状態のイヴは普段のステータスの3倍の性能を誇る。イヴの構築したドームから降る白銀の雪は周囲のMPを味方、敵問わずに回復させる。


 ジョーカーが本格的に魔剣をどうにかする前に神の力で止めるつもりなんだろう。

 しかし………とあたしは心の中で呟いた。


 ジョーカー「ふっ」


 イヴの腕は簡単にジョーカーに掴まれ、そのまま、腕の力のみで階段から、宙に投げ飛ばされた。あまりにも呆気なかった。


 イヴ「のぉわぁあああ!」


 叫び声と共に下へと落ちてゆく。

 まずい、このままでは遙か下の床に叩き付けられ、幾ら、神の力を行使している時のイヴでも重傷を負うことになるだろう。


 真央「イヴ!」


 セリカ「イヴちゃん」


 ルルリ「任せて、獣人の足なら!」


 と、ルルリがあたしの腕の中で無茶苦茶な事を叫ぶ。

 当然、実行させるわけにはいかないので、ルルリを決して離さない。


 ジョーカー「イヴ神様………には……が。しかし。妖精魔法 フェアリーフェイザー」


 慌てているあたし達を黙らせたのは、ジョーカーの背中から生えている4枚の羽根。妖精族の証たる羽根だった。

 その羽根を羽ばたかせて、急降下してゆく。


 るーちゃん「ほう」


 セリカ「な」


 真央「何回目の驚きよ!」


 ルルリ「綺麗……」


 と、それぞれ遙か下の床を覗き込む。

 そこには最悪の結果はなく、4枚羽根で器用に空気を掴まえながら、ジョーカーは優雅に羽ばたく。その両腕に驚いた表情でジョーカーの4枚羽根を見つめるイヴ。


 イヴ「ジョーカーが妖精族? そうか、レア妖精女王が紹介したのだから、それも道理か」


 ジョーカー「隠すこと、ない。ジョーカー、妖精。これ、ただのファッション」


 イヴをあたし達のいる場所まで運んで、ジョーカー自身もその場所に着地した。

 そして、言った台詞にあたし達はカラス色のローブを観察する。

 あ、少し、ほつれている箇所がある。


 真央「だせー。そのキャラデザないわ」


 セリカ「暑そうですわ」


 ルルリ「本当に……ママが言った通り、悪いこと、夜に御菓子を食べちゃったりすると、ジョーカーさんがさらいにくるんですかぁ」


 しーんとした空気の中、ジョーカーは首を横に振った。





リフレッシュ ヒール→ヒール リフレッシュに修正。5月24日。

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