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創世する世界のイヴ # Genesis to the world's Eve  作者: 遍駆羽御
本編―――― 第2章 1000キュリアの祈り
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第18話 誰も世界の支配者にはなれない、させないのだ…………。

 第18話 誰も世界の支配者にはなれない、させないのだ…………。


 視点:凪紗南イヴ

 場所:クイーン王国 クイーン王城

 日時:2033年 4月4日 午前 9時10分


 クロウス「どうなされました、イヴ女王様?」


 突然の王族らしくない室内に響く程の爆笑に心配した大臣達を代表して、軍務大臣 クロウス・ハウゼンが予に問う。

 しばし、目を閉じ、まぶたの裏に浮かぶ光景に意識を委ねる。



 視点 凪紗南イヴ(3歳児のいーちゃん)

 場所:クイーン王国 クイーン王城

 日時:2021年10月11日 午後 8時30分


 お母様は予の目の前で華井恵里に焼き殺されて、お父様は華井恵里に連れ去られて……予はただ、無気力に木製が主体の車椅子に載っていた。

 ゲートの一般記念開放式典と共に行われるはずだった予のお披露目式は地球側の重鎮やリンテリア側の王族達間で行われた。

 少女神 リンテリアから予の存在を知らされていた者ばかりだったが、実物を見て、地球側の重鎮達は――――


 アメリカ大統領「美しい銀髪の姫君だ。将来、私の息子の婚約者にどうだろう? 20歳だが、リンテリアでは12歳くらいの結婚も有りなのだろう? ならば、可ではないか」


 アメリカ大統領秘書「そうですね、英雄は死にました。英雄の仲間の妨害はありますが……なぁに、旧世界からの世界の警察です。影響力は奇跡的に第二次世界大戦で勝利も敗北もしなかった日本や、科学力の劣る田舎臭いファンタジー世界のクイーン王国なんか簡単に騙せるでしょう」


 そう言っていたので、予は無気力ではない予に戻ってから……アメリカのお株である世界の警察の座を予が奪い取ってやった。それは尊い誰かを助けてみんなが笑顔に、と本気で考えた勇者様であるお父様の願いだ。薄汚れた自尊心で行って良い場ではない!

 無気力の予はただ、機械的に脳にその言葉をインプットした。


 少女神 リンテリア「虫は解っていない。そもそも、神と人間では規模が違うことをん。それが人間の限界なのねん♪ 可哀想♪ 自分たちの末路を知らずに」


 と、予の挨拶が終わる前に、一人だけローストチキンにかぶりつく。とても、神には見えない。だが、それに対して文句を言う気力も無い。

 ただ、俯き、時に涙を流し…………暗い表情をした未来天皇代理の押す車椅子に揺られ、ひな壇を目指す。


 未来「すまんな、いーちゃん」


 いーちゃん「ねぇ、お父様とお母様は………」


 未来「すまん、私が不甲斐ないんだ………」


 予はねぇ、お父様とお母様は……しか言えなかった。


 身体も痩せ始めていた。痩せすぎて見辛くなる前に為政者の大半は予を披露させて、憐れみもなるべく、少なく、ちっぽけな3歳児に政治的能力など皆無でもはや、英雄の影響力はない。さぁ、再び世界の主権争いの鐘を鳴らそうという考えは無気力な予でも透けて見えた。

 だから、予は再び、自分の意志を取り戻した後、民の益のない世界の主権争い(笑い)を理不尽に踏みつぶした。まるで人間が歩いている蟻を知らずに踏みつぶすように。結果論でそうなったのだ。しかし、蟻は未だ、もがいている。


 アフリカ王「いいですなぁ、新興国の私達は石油の時代が本格的に日本のメタンハイドレートに奪われましたよ。これからどうしようか。いっそのこと、人口は腐るほどいる。無能な下層に墜ちた連中には新しく設けた身分 奴隷に墜ちてもらうことにしましたよ。奴隷ビジネスです」


 フランスの有力議員「おお、怖い、怖い。おたくの国に生まれなくて良かったぁ。まぁ、うちでも上手く、国民を黙らせて、税をあげましたよ。メディアを利用して国はお金がないんです、と間接的に伝えれば、OKです。簡単な仕事」


 オーストラリアの食品メーカー社長「大半の国民は自分が声をあげなくとも是正されると、人間の性善説を信じてますからね。そんなあれば、営業職や苦情係なんてありませんよ。信じすぎなんです、ルールを」


 予の通る道すがら、そんな自分しか考えていない虫の声が聞こえた。

 世の中は不思議なもので、こういう虫がしぶとく生き残り、民はそれを知らずに限られた財で限られた空の下、限られた幸福を享受する。


 予は無意識に自分の目標を立てた。

 ”理不尽なまでの誰もが納得する富の再配分”

 正論は理不尽。

 今はただ、フラッシュバックするお母様の焼ける光景と肉の焼け焦げた匂いの映像に無気力な眼差しを向けるだけだ。


 しばらくすると、左右に異世界 リンテリア 勇者としてお父様が過ごしてきた世界の重鎮達が予のお披露目の道を飾る。


 セリカ「負けないで! わたくし、イヴちゃんを応援してます!」


 ハヤトシーリン王「これが終わったら、君の好きな照り焼きバーガー創るから、今日は一口でも食べてくれ」


 北庄竜王「あれが英雄の娘か。つまらんな、あんな弱々しい娘とは。勇者の子と聞いていたが、がっかりだ。戦場では親子の別れなど、詮無きこと」


 レア妖精女王「今は試練の時です、がんばるんですよ、いーちゃん」


 その他にも様々な言葉が投げかけられるが、予は何も反応せずにひな壇への道をゆく。

 そして、ひな壇に上がり、誰の顔を見ずに予は俯いたまま、世界に告げた。


 イヴ「凪紗南イヴ、または、イヴ・クイーン。………世界の支配者には誰もなれない」


 後半の予の声は異世界 リンテリア側の、

「「「いーちゃん、可愛い!」」」

 という声に掻き消された。


 だが、予の漠然とした灯火だけは消せない。

 華井恵里と同じ笑っているのに、笑っていない欲に塗れた人間がいる、ここにも、多く。

 だから、


 イヴ「………させないのだ」


 誰にもその呟きは聞こえなかった。


 視点 凪紗南イヴ

 場所:クイーン王国 クイーン王城

 日時:2033年 4月4日 午前 9時11分


 イヴ「思い出したのだ。世界連合、異世界連合が英雄、お父様亡き後の世界の主権者争いに明け暮れようとして、準備していたのに、予がポーションを全世界に低価格で、貧しい者にはさらに低価格で発売すると。これでHP0状態の心臓発作時に即ポーションで回復させれば、助かると真実を明かして、な。さて、そんなモノなんてない世界の主導権はどうなった。ん、アラン?」


 優しい農商務大臣 アラン・リデルは予の事を戦争で死んだ娘と同等の存在として扱ってくれる。そんな彼に聞いたのは、自分の中にも、華井恵里がいるという皮肉からだ。

 人間である以上、それは仕方ないのかもしれない。だが、到底、受け入れられないと歯を食いしばる。


 アラン「イヴ女王様のモノに、と理想を言いたいのですけど、不正解ですね。イヴ女王様の生誕と共に少女神 リンテリアがローラント島において、イヴ女王様は自分の後を継ぐ世界の管理者 幼女の生を見守る神だと、各国の王族のみ知らせております。彼らはその不利な事実を己が民には知らせていない、未だに。正解は人間なんていう矮小な生物では世界の主導権は取れはしない。等しく、皆、敗北者。産まれながらにして」


 悲しい瞳で予をアランは見ていた。

 心愛が予の身体をぎゅっと、抱きしめてくれる。しかし、それは予の望んだ茨の道だ。


 イヴ「滑稽であろう? それを頭では理解しているのにまだ、争いを続ける。それが今日までの世の姿。話しを戻すのだ。予がポーションでやっているのは、経済が勝者も敗者も極端に産まれないようにする保険なのだ。ポーションの資金で行っているのは弱者救済とルールに則さないやり方でのし上がった者に対するペナルティーなのだ。また、これを予がやることで、英雄の娘が貴族の義務を率先して、という話しになるのだ。さぁ、勝手に勘違いした貴族は己が名誉を求めて、弱者の救済を始める」


 シルフィーヤ「今も、昔も、ポーションに関してはズレないのね。理不尽なまでの優しい支配。全てを自分のモノにできるのに」


 予が本当に欲しいのは……

 お母様とお父様の互いを尊重し合う会話、そして笑顔で「いーちゃん、おいで」と予を呼ぶ声が聞こえた気がした。

 予が本当に欲しいのは……ううん、予にはアイシャ達、家族がいるのだ。


 イヴ「………不満なんてないのだ」


 予は目の前に置いてあったココアをぐいぐいと飲み干す。程よい温度にまろやかなコク、美味だ。

 飲んで気が付く。これは総統閣下のお飲みものだと。

 すぐに拳骨が予の頭に降り注いだ。膝を貸してもらっている心愛総統閣下の拳骨は痛かった。


 心愛「人は暴力では従わない。人は偽善にも従わない。真に従うのは幼女のような残酷な優しさだよ、皆の衆。幼女は本質を無意識に捉え、それでも、無邪気に笑うだろう。その無邪気さが人には痛い。来るぞ、その反動が」


 クロウス「もう、来ている模様じゃ」


 思い当たるのは………と、軍務の資料 711ページを素早く捲る。


 イヴ「行方不明者探索の増員要請なのだな」


 規模としてはクイーン王国の北側に集中している。これは確かに人為的なモノと推測できる。いや、確実にそうだろう。


 イヴ「ふむ、900名の増員か。対して、行方不明者は推測600名か。神隠し現象の………予のクイーン王国 年間120名と未来天皇代理様の日本 年間190名の謎の行方不明。その他世界の行方不明とどう違うのか? 検討がついた? と」


 静かに魔法大臣のオスヴァルト・ビュッセルが立ち上がり、幼女が目視したら泣きそうな厳つい顔で予の顔を見て、発言する。


 オスヴァルト「はっ、おおよそは。神隠し現象の場合、そこに行方不明者がいたと推測された位置で極端に異常なプリミティブイデアの濃度が測定されています。これはジャウカーン、シーリングとの共同研究で判明しました。特にジャウカーンのプリミティブイデア研究所の所長 ヒビキ・クルセイドが心血をそそいでくれました」


 イヴ「そうか、ヒビキが、か。あやつはドMだから、そこら辺は体質に感謝なのだ!」


 予の脳裏に外交で会った少女 ヒビキの研究に対する熱血が思い起こされる。


 ヒビキ『イヴ女王様ですね。初めて知った時から決めてました』


 アイシャ『おい、豚。イヴに告白しようとしないで』


 ヒビキ『違います! 高尚な願いです。解剖させて下さい。治癒魔法の研究の為に!』


 イヴ『お断りなのだ!』


 アイシャ『そんなことを実行したら、私が聖剣で切り刻んであげます。いや、今からでも……』


 ヒビキ『光栄です! 快感です! 研究の為にこの身を切り刻まれるのならば。あー、気持ちいい♪』


 イヴ、アイシャ『『変態だぁ………』』


 真央にこの事を話したら、新ジャンルねと訳の分からないことを言っていたと思い出し笑いを浮かべつつ、資料のいくつかの測定値を比較する。


 シルフィーヤ「いつも、未来様にお尻をペンペンされて喜んでいる女王様も類友だわ」


 イヴ「ち、違うのだぁ。いやなのだぁ」

 と、適当にシルフィー姉様の発言をひらりと躱しつつ、予の見解をまとめる。


 イヴ「何かしらの魔法が働いた、と考えるのが適切なのだが、それが異世界リンテリアでは5000年もの昔から続き、地球ではここ数年、地球人が魔法を使えるようになってからなのだ。そこまで根深い個人も、組織もおらんだろう………」


 以前、この事実をクイーン王城まで宮廷料理をたかりに来た駄目神に問いただしたのだが、高級牛 フェリアンテの香草焼きを堪能するのを邪魔された駄目神は少し拗ねて、なまいきな小学生女児風に言った。


 少女神 リンテリア『教えてあーげない☆ だって、それどうにか、するの、私の仕事だけど、ぶっちゃけ面倒。いーちゃんがロリ乳をなめなめさせてくれるなら教えるよ。さらに! 今ならエロロンでこの現象は解決よん♪ 元を絶つだけだしん♪ ラグナロク一撃でおしまいねん』


 むぅ、思い出しただけでも腹立たしい。仕事をしろ、駄目神。


 オスヴァルト「それは、我々とジャウカーン、シーリングで解明してゆく、引き続き」


 シルフィーヤ「それに関して、手伝う用意があるから、近内に他の用件も含めて、日本にレア・ミィール妖精女王様がイヴ女王様に会いに行く予定です」


 イヴ「何故、クイーンではなく、日本? 未来お姉様に用でも?」


 基本、ガラスは風魔法による武器にもされてしまうので、ガラスのない窓から、唐突にカラス色のローブを身に纏った予より少し背の高い少女が現れる。

 凪紗南天皇家に属するが、凪紗南天皇家ではなく、予に仕えると公言している予のワイルドカード 世界最強の一角 ジョーカー。

 そのジョーカーは何故か、予と喋る際はしゃがみ込む。以前聞いたのだが……。


 ジョーカー『わたし、信徒。神様、神様。当然』


 意味が解らなかった。よって、保留にしてある。


 ジョーカー「それ、わたし、答える。イヴ神様、残念、弱い。けど、戦い、激化」


 レメイ「喋り方が独特でぷぅー」


 厚生労働大臣 レメイ・リェオが口の周りについた蜂蜜を舌で舐めつつ、ツッコミを入れるが、誰もがそこではないと思っているだろう。


 ジョーカーは一体、高層ビルの最上階ほどある高さをどうやって、跳んだのだろうか? 可能なのか。

 いや、深く考えるなと予はジョーカーの言う戦いの激化について考える。


 ジョーカー「イヴ神様、危険。授ける妖精魔法 フェアリーアーツ」


 オスヴァルト「SOULを技として、種が扱う概念を生み出した妖精の英知か。どれほど、強力なのか。レア妖精女王が死後、古代魔法に列することが魔法ギルドにより決定されている古代魔法に近い妖精魔法」


 アラン「それが事実でしたら、イヴ女王様が死後となりますけど」


 心愛「くくくっ、人間の常識には当てはまらないなぁ-、貧乳神様」


 心愛が何を考えて、予の自慢の未来叔母様と同じ銀色の髪をぐちゃぐちゃに両手でしているのかは手に取るように解る。

 言われるとしゃくなので、牽制する。


 イヴ「うるさいのだぁ、ロリ総統閣下」


 そう文句を言う予の前に先程から容赦なく、女王の国璽が必要な書類が山のように集まってゆく。

 置いてゆく大臣達の顔はみんな、お願いだからすんなり通ってくれと緊張した表情をしている。

 そんな人間に対して、威圧的な態度を取るのは馬鹿らしい。解っているのだから。


 イヴ「ほい、ぺたん♪」


 と、予はリズムよく、承認を与えてゆく。コウモリ模様の国璽を押す手は実に軽やかだ。目を通しても、成果は出ている。国の識字率は勇者であるお父様の尽力でその下地は出来ていて後は予がそれを粛々と守ってゆくだけだった。それが花開き、今では予を納得させる文章構成まで確立しているとは、予は気分が良い。


 心愛「違うだろう、そこは、つるぺたん♪ だろう」


 イヴ「むぅー、予と変わらぬであろう」


 予はさすがに苛ついて、心愛のAAを揉む。ついでに行方不明者探索の増員要請書にも心愛つるぺたん♪


 心愛「うぎゃああ、威厳が、俺の威厳が。男性としての威厳が!」


 イヴ「そんなもの今世紀にはないわ」


 さらに、心愛のAAを揉んだ。


 心愛「うぎゃーあ」


 ジョーカー「イヴ神様……伝えた。その場、ストーキング、する」





ノエシスを技として→SOULを技として、を修正。5月24日。

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