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創世する世界のイヴ # Genesis to the world's Eve  作者: 遍駆羽御
本編―――― 第2章 1000キュリアの祈り
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第12話 ワールドゲート。そして、異世界へと。

 第12話 ワールドゲート。そして、異世界へと。


 視点:凪紗南イヴ

 場所:地球 旧世界 東京都 千代田区、地球 新世界 東京都 凪紗南市

 日時:2033年 4月4日 午前 6時30分



 清々しい朝の空気を吸いながら、予は真央、セリカを伴って広々とした車道を歩く。未だ、自動車が目まぐるしく街を行き交う時間帯ではない。静かなもので何処からか、野良猫や野良犬の鳴き声が聞こえる。


 もう一度、吸ってみる。


 落ち込んだ気持ちもリフレッシュしそうな気がする。自然は予の治癒魔法よりも上の治癒魔法を使えるのかもしれない。

 空を飛行する自動車 飛行車も未だ、走っていない。だからこそ、空から暗殺される恐れも無く気が抜ける。尤も、皇女の本拠地を直接攻撃なんぞする愚か者はあまりいない。


 セリカ「らんらん、お掃除楽しいわぁー」


 適当に箒で道路を掃きつつ、セリカは予の背後を着いてきている。丁度、メイドさん達と一緒に女王の館のお掃除をしていた時に――――

 セリカ『あら、イヴちゃん、何処にお出かけですか? いつもの猫ちゃんポーチを肩に提げて。お出かけですか?』


 イヴ『そういうセリカはお掃除中なのだな、偉いのだ! ボクはこれから真央の住んでる女神の館に行くとこなのだ!』


 セリカ『でしたら、わたくしも行きますわ。今日はイヴちゃんと一緒にいたい気分なのです』


 イヴ『行こう』


 セリカ『わかりましたわ』

 ――――とそんな会話があり、今日の一緒に行動するお友達に加わった。


 ちなみにアイシャは今日は地球、リンテリアの両世界最高の歌姫 Garden of the GodsのLilithが異世界 リンテリアの上空にある教会本部 ローラント島に聖歌 リンテリアの祈りを唄うべく来るのでその案内役 兼 おもてなし役で昨日の夕方からローラント島に泊まっている。

 だから、昨日のうちに白地のTシャツをアイシャに渡して――――

 イヴ『アイシャ! これ、こ、これ、これれれれにぃ』


 アイシャ『落ち着いてください、イヴ。深呼吸です。すはーすはー、よし。はい、どうぞ』


 イヴ『これにLilithのサインをお願いするのだ! 良いな、これは予の聖騎士としての勅命なのだ!』


 アイシャ『はっ、必ず』

 ――――アイシャならば、必ず、やってくれるはずだ、と予はうん、と力強く頷いた。きっと、お空のアイシャも任せてくださいと頷いているだろう。


 隣にいる真央が何故か、不機嫌だ。そんなに朝早くはない時間だ。予も学習したのだ。一度、予が活動しはじめる午前4時30分頃に「今から、北庄竜王家を招いたクイーン王国の炎魔法演武会を行う日取りを正式に――――」と腕時計型携帯電話で要請したのだが…………眠そうな声で真央が「って、今、4時半じゃない! 常識を考えなさいバカ皇女」と怒られた。


 イヴ「うーん、常識範囲の時間なのだ」


 真央「そうね、時間は常識範囲よ。じ・か・んは、ね。さて、問題です」


 イヴ「うむ」


 セリカ「あらあら、わたくしも参加しますわ」


 真央「ここは何処でしょうか?」


 にこにこした笑顔をしている真央だが、眉間の皺周辺の皮膚がはち切れんばかりに中心に寄っている。相当、キレているのだ。

 真央のクイズの解答に答えるべく、予とセリカは周囲を観察する。する必要は無く、解るのだが…………念のためだ。


 予達は真央の住んでいる東京都凪紗南市 異世界リンテリア貴族居住地区 女神の館から徒歩 約30分歩いて、左右には何も建物がなく、雑木林が鬱蒼とそびえる風景が続いている。このまま、何もない風景ばかり続くのか、とうんざりする気持ちになりそうだ。しかし、そうなる前に正面には違った風景が見えるようになった。

 巨大な門。

 そんな言葉を誰もが心に感想として呟くだろう。

 その門には凱旋門と呼ばれる類いの門でデザインは両世界共通。


 門の柱には英雄の娘、両世界の絆の象徴である予を表す蒼薔薇達が彫られていた。門上部には右側に勇者 凪紗南春明、左側にリン・クイーンが彫られてあり、その2人が手と手を取り合っていた。

 それを見る度に予の責任は重大だと思う。誰もがこれを見る度に感じるだろう。ああ、なんて、英雄は偉大な事を成したのだろう。その英雄の娘 凪紗南イヴはこれから何を成すのだろう、と。

 その巨大な門 凪紗南市ワールドゲートを2人の軍服を着た日本兵が警備をしていた。ワールドゲートの数メートル先には、ワールドゲートを警備する軍人達が詰める詰め所があった。

 世界の要たるワールドゲート。その警備にはエリート軍人が当てられている。それでもプレッシャーは相当だ。であるから、未来お姉様直々の指図で兵詰め所はホテルのように立派な建物になっている。

 ここはクイーン王国に女王のお仕事に行く際、よく通過している。当然、どこだか、知っているのだ。


 イヴ「ワールドゲート前なのだ!」 セリカ「お友達と交流しましょうの扉前ですわ」

 と、同時に予とセリカは真央に回答を寄越した。


 真央はしばし、沈黙をしたが、にこっと笑った。


 真央「正解♪ そして、天然さんは話が進まないので無視の方向で」


 セリカ「しょぼーんですわ」


 イヴ「元気出すのだ」


 そう言って、予はうなだれるセリカの頭をぽんぽんと優しく、手の平で叩いた。

 真央はそれを見て、こほん! とこっち、見ろと軽く咳を入れる。


 真央「あたしが悪いみたいじゃない。ってか、あんた、セリカ、へんな小芝居しない!」


 そう言われて、セリカは舌を出して微笑んでみせた。


 セリカ「バレましたか」


 真央「あんたって意外と強かなとこあるし。さて、イヴ、あたしはあんたに相談があるって言われて着いてきました。相談は女王の屋敷でもできることです。なーんでかな」


 イヴ「実は、な。クイーン国女王のお仕事で行方不明者の捜索騎士増員及び女王報告が主な会議に出席せねば、ならぬのだ」


 真央「で? 何故、あたし? それが相談?」


 イヴ「違うのだ。予だけでは相談の時間が取れないし、優秀な真央に補佐してもらえないかなと思ったのだ」


 真央「思ったのだ? じゃない! 偉そうな口調で言わない。これだから、ブルジョアは」


 イヴ「お願いするのだ」


 真央「はぁー、わかったわよ。しゃーなしね。他国の情報だけど、まぁ、喋らないわ」


 イヴ「そう言うと思ったのだ」


 セリカ「わたくしも勿論、手伝いますわ」


 イヴ「お願いする!」


 予は商談成立とばかりにセリカの両手を握って、上下に振り回した。同じように、真央にもやろうとしたが避けられた。

 ワールドゲートに近づくと、いつものように警備の軍人2人のうち、1人がこちらへと頭を何度も下げながら、近づいてきた。


 警備軍人1「イヴ皇女様、お疲れ様でございます。今回はどちらへ」


 イヴ「うむ、クイーン王城までな。仕事なのだ」


 警備軍人1「どの身分でも忙しさは変わらないんですね。いや、イヴ皇女様の方がお忙しいですか…………」


 イヴ「そうだな。しかし、そなた達は命をかけるのだ。そちらの方がリスクはあるのだ。誠に苦労」


 予が言葉を続けようとすると、真央の腕が予の腕にぶつかった。真央が催促したのだ、早く話を終わらせろと。


 イヴ「すまぬが、先を急ぐ。早く異世界 リンテリアには持ち込めない品の預かりとエクイップメントカードの確認を」


 予はそう言いつつ、エクイップメントカードを猫さんポーチから取り出し、警備軍人の前に提示した。同じようにセリカ、真央もエクイップメントカードを提示する。


 エクイップメントカードとは、王族や特別な役職に就いている者だけが持っているルビーが四方に埋め込まれた白いカードの事で、これを所持していることにより、通常必要な荷物検査をパスすることが可能となる。

 世界天秤条約により、異世界 リンテリアに地球の高レベルの科学知識が流出するのを防ぐ為の処置だ。特に武器は地球産銃の持ち込みは禁止だ。その他の品でもリンテリアマークが貼られた両世界で所持しても大丈夫ですよ、という品以外は全面禁止と厳しい。

 高レベルの知識も異世界 リンテリアで吹聴しただけでも知識産業崩壊罪という重罪となる。各国で刑はまちまちだ。ちなみにクイーン王国では禁固 30年の刑だ。

 逆の異世界 リンテリアから地球への知識流出は何も制限されていない。おかしい話だが、異世界 リンテリアが逆らえば、当時は地球の機械兵で攻め落とされかねない空気が地球側にあった。英雄が予のお父様でなければ、異世界 リンテリアは占領されていただろうと歴史研究家や軍事評論家などに分析されている。


 そんなわけで、警備の軍人の仕事は重要なのだ。


 警備軍人1「イヴ皇女様、お荷物の方は…………お預かりの方は?」


 警備軍人は額の汗をハンカチで拭って、戸惑うようにそう言った。


 イヴ「うむ、今回の持ち物でそれはないな」


 セリカ「あ、箒は預かってくれますか?」


 警備軍人「はっ、了解であります」


 セリカは箒を両手で大事そうに持ち、警備軍人に手渡した。

 予がクイーンリングを装備したまま、出掛けていたら預かり品にしなければならないものがあるから、かなり時間を浪費しただろう。置いてきて正解だった。


 さて、予達は警備軍人に見送られて、常に紫色に発光しているワールドゲートを3人とも手を握って一緒に潜る。

 紫の光の中、頭の中に選択肢が浮かぶ。


 ローラント島

 ダラーヒム

 トゥーマーン

 スユーフ

 ジャウカーン

 クイーン


 ローラントは勿論、リンテリア教の本拠の島だ。

 異世界リンテリア中央に当たる一際、大きな島にダラーヒム、トゥーマーン、スユーフ、ジャウカーン、クイーンの国はあり、アリス族が主に住んでいる。

 ダラーヒムは学術に長けた国であり、蒸気機関車を生み出したりしている。

 トゥーマーンは漁業、農業に長けた国であり、英雄であるお父様が大好物だった米を沢山、植えて収穫する政策が行われている。異世界 リンテリアではマグロは高級魚ではなく、一番漁獲量が多い魚で有りがたがっている地球人の為に地球に多く、輸出されている。

 スユーフは鉱山の多い国であり、国を持たないドワーフが多く住む。ドワーフ達は手先が器用で人より力がある為、兵器開発では一歩リードしている。

 ジャウカーンは魔法に長けた国であり、魔法を生み出すプリミティブイデアの研究をしている。また、古代魔法を研究しているが、成果は上がっていない。

 クイーンは酪農、ファッションに長けた国であり、また、それ以外の分野も土地が他国よりも広い為、一定の成果を上げている。特にペガサスやグリフォン等の肉は美味であり、地球にも多く、輸出されている。ファッションにうるさい国である。


 その他の選択肢がまだ、ある。


 シーリング

 ニャーソン

 北庄


 熱帯地域である島にエルフの国 シーリングがあり、フルーツが豊富に実っている。特産はエルフフルーツ。外見は銀色に輝いている。効果はイデア中毒の緩和だ。

 寒冷地にある島に獣人の国 ニャーソンがあり、生活が以前は雪に覆われて苦しかったが、日本の秋葉原をモデルにして、メイド喫茶ならぬ、耳尻尾喫茶をホテルと併設させたり、スキー場を作るなどしてレジャーポイントとして生まれ変わっている。

 砂漠の多い島に竜族の国 北庄があり、ラクダや羊の群れを飼って日々の糧にしている。乏しい資源を巡り、内戦が続いた為、竜族は絶滅の一途を辿っている。今も各地でテロが行われている。兵器の闇市場、奴隷の売買、麻薬、などなど、世界の負の坩堝でもある。現在、地球のテログループとも結びついている。国の内情は北庄の姫である真央は何もやらせてもらえない為、多くは知らないそうだ。


 今回の転送先を予が代表して選ぶ。


 イヴ「クイーン王国」


 すると、クイーン王国のゲートがある場所の位置が頭に浮かぶ。

 一番、クイーン王国に詳しい予が転送先を選択する。


 イヴ「クイーン王国城下街付近にあるクイーンワールドゲートへ」


 すると、その返答を受けて、予達の身体が紫色の光に包まれ、消えた。



 視点 凪紗南イヴ

 場所:クイーン王国 城下街 周辺

 日時:2033年 4月4日 午前 6時50分


 紫色の光が収まると全く別の場所に立っていた。背後には同じデザインの門が立っているが、予達を出迎えてくれた景色はまるで違った。

 地球の歴史の教科書で見たような石床、石壁が特徴的だ。人が200人くらい入っても余裕そうな部屋に出た。その部屋には窓一つもない。


 予を確認した鎧と剣で武装した6人ほどの騎士がこちらへとやって来た。予の前まで駆け寄ると静かにその場に跪き、頭を下げる。一向に、頭を上げようとしない。


 イヴ「出迎え、大義。頭を上げよ」


 騎士達「「「「「「はっ、イヴ・クイーン女王様」」」」」」


 予の言葉に従い、打ち合わせしたかのように一斉に騎士達は頭を上げる。

 騎士達の種族は様々だ。1人は猫耳の獣人族、1人は妖精族、1人は竜族、後はアリス族だ。


 ほとんどがリン・クイーン、お母様の時代から、お母様を慕って予の国の軍事力のほとんどであるクイーン王国騎士団に入団したのだ。最近では嬉しい事に予を慕ってわざわざ、故郷を出て、騎士団に入る者もいる。

 そんな予の騎士達の姿を見て、真央がため息を吐く。


 真央「羨ましい。イヴんとこの騎士達は裏切りそうにないよね。あたしんちは裏切ったし、まぁ、粛正してやったけど」


 セリカ「はい、イヴちゃんの騎士さん達はきっと、イヴちゃんが腹を斬れって言ったら斬りますわね、いい子ちゃんですわ」


 その言葉を聞いた騎士の一人が予に進言する。


 騎士「斬りましょうか? 自分の腹を。イヴ・クイーン女王様の為ならば、この命!」


 他の騎士達もその案に賛同し、それぞれ、自分の腹に剣を刺さんと中空に掲げる。


 真央「って、お前らの忠義は赤穂浪士クラスかよ。斬るな、斬るなぁあああ!」


 慌てて、剣を奪おうとする真央を予が手で制した。


 イヴ「止めよ、予はそれを望まないのだ。良いか? そちらの命は民を守り、己を守り、己と己の大切な人生を守る為の命。無意味に散らせるな。良いか、最期まで予と共にあろうとするな。それは無駄死にと心得よ」


 予の言葉は石壁によく響き、何倍もの声量となる。

 予の命令無しに再び、跪いた騎士達は皆、精悍な顔立ちをしていた。


 イヴ「そなたらは愚かだ。だが、予は嬉しく思う。では、手始めに予達を馬車でクイーン王城に運ぶのだ」


 騎士達「「「「「「はっ、イヴ・クイーン女王様」」」」」」


 真央「…………赤穂浪士だ、これ」





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