第10話 悪夢と始まりの物語 Ⅲ 神の因子と、治癒魔法
第10話 悪夢と始まりの物語 Ⅲ 神の因子と、治癒魔法
視点:凪紗南イヴ
場所:悪夢による過去の再現 異世界リンテリア クイーン王国 クイーン王国城下街
日時:悪夢による過去の再現 2021年7月8日 午後 5時25分
暗い世界から一転して、予の眼は悪夢の続きを映し出していた。
クイーン王国城下街の奥深く山の頂にあるクイーン王城の円形に構築された建物の群れの中央――――蒼薔薇畑の中央に聳え立つ城本体よりも二倍ほど高い砦の一室が幼女の予が運ばれた場所だった。
涼しい石壁に囲まれた部屋に差し込む夕暮れ時の空。
その茜色がベッドに横たわる幼女の予の感情がない表情を照らしていた。ぼんやりと幼女の予が横を向くとそこには知っている存在と知らない存在がいた。
知っている存在――――国を通して親交のあった妖精族の女王 レア・ミィールは幼女の予が起きた事実に驚いているようだった。
予も客観的に見て、治癒魔法がなければ助からない程の深手だ。後から未来叔母様に聞いた話だが、王族といえども、一般開放もしていないゲートから予の為に日本の医療スタッフを呼ぶ事は叶わなかった。それを無理矢理押し通そうとして、未来叔母様は世界連合と異世界連合の何人かをぶん殴ったらしい。それでも、認められないのは異なる世界と世界を結ぶ法が今の緩さとは違い、厳しかったからだ。今よりも多くの軋轢があったからだ。
幼女の予はあまりの空腹と怠さに指一本すら、動かせない。じーんとした痛みが継続的に全身を襲った。まるで脇腹の傷が他の箇所に伝染したかのように。
医療が充分に発達していない異世界 リンテリアでは幼女の予の血塗れの脇腹に手の平を押しつけて、破れた血管を風魔法 エアで風の栓をするしか手段はなかった。明らかに絶望的な延命治療だ。いや、もはや、治療ではないただの悪あがき。
当時の幼女の予の視界はぼやけていたので気づかなかったのだろう。
レア妖精女王の顔は青ざめていて、普段は隠している六枚羽根が萎えていた。それに後ろにまとめたお団子頭の緑色の髪が艶を失っている。レア・ミィールの膨大な魔力量ではあり得ないイデア中毒の初期症状だ。どれくらい、予の血を止め続けていたのだろうか。
いーちゃん「れあ、おひさしぶり。なんだか、なにもかんじないの」
レア「イヴ様、すいません。貴女様の受けた傷は深すぎて、力及ばず…………」
いーちゃん「まだ、いーちゃん、がんばる、おかあさまに、あうの」
レア「いーちゃん、ごめんね」
レア妖精女王は俯き、蒼色の瞳から涙を流す。
落ちた涙は幼女の予の頬に落ちて、シーツの上に零れてゆく。それを眺めていた幼女の予は首を傾げる。
いーちゃん「なんで、れあ、あやまる?」
その言葉がトドメだった。
レア妖精女王は叫ぶ。
レア「ごめんなさい! 私に力があれば、ごめんなさい! 貴女のママの代わりに貴女を助けたいのに! ごめんなさい!」
そんな悲劇の場面が広がっていた。
その横で………
………
……………
なんか、場違いな奴がいた。予はこれを知っているので奴で充分だった。
幼女の予が知らない存在――――銀色の153cmの少女が木製テーブルの上に胡座をかいていた。少女はようじょとタイトルの記された小学生の女の子がスク水姿で何故か、笛を吹いている表紙の本を読んでいる。
リンテリア「うひぃーやっぱ、地球産のロリコミックは最高。主人公が幼女に手を出して捕まる王道展開は美学を感じるわ。ふぅー」
銀色のセミロングヘアをかいた後、少女は木製のテーブルから幼女の予の眠るベッドを目掛けて飛ぶ。宙をくるりと丸まり回転して、幼女の予の太ももと太ももの間の空間に着地した。
そして、レア妖精女王が今も必死で押さえている脇腹をつんつんと何度か、触る。
リンテリア「なぁーに、悲壮感だしてんの。その子、そんなことしなくても死なないのに。でも、おかしいわね。あー、そうか、神のあれが強すぎるから発現しないのねん。いやぁ、危なかった、あんがとう、人間♪」
レア妖精女王は涙を手で拭いながら、少女に訴える。
これが”あれ”だとは、と奴の正体を知っている予はこの夢を何度繰り返しても頭を抱えたくなる。
神秘的な存在であるはずの奴の服装は、AAカップの貧乳が見えそうなよれよれのTシャツに、お賽銭を入れて下さいと浅ましい短冊が付いたライオンさんポーチを首にぶら下げ………Tシャツの裾から時々、ピンク色のショーツが見え隠れしていた。
そのだらしない姿を真剣な表情のまま、接することは予にはできそうにない。帰れ、駄目神! と言いそうだ。レア妖精女王は予にはできぬ、真剣な表情で問う。
レア「駄目神、いいえ、リンテリア様、貴女様は神様が人間には介入することはないと仰っていましたが………神の因子を保った人間には介入できるんですよね?」
リンテリア「うん、そうだねん、人間。私はイヴに死んでもらっては困る。ということで初めまして、イヴ。私は少女神 リンテリア。現第二神層世界の管理者。まぁ、この世界の管理者ねん。よろしく」
いーちゃん「はじめま、して?」
さすがに、ピュアな幼女の予でもこれが本当に神様なのか? と眉間にしわを寄せる程度には疑いと戸惑いが心に渦巻いていた。
そのこれ! はへそをぽりぽりとかき始めた。
これ――――駄目神は鼻息荒く、叫声をあげた。
リンテリア「うはぁーう! 目の前で見ると私の理想の幼女像だわ。成長しても神の力の強さから、成長率が奪われて140cm前後にしか育たない貧乳ロリっ子って最高ー」
いーちゃん「ろ、り? ほんとうにかみさまぁ?」
そう、疑われた駄目神は慌てて、よれよれTシャツを直して、えっへんと偉そうにベッド上に仁王立ちした。あ、Tシャツの襟元がずれた。
リンテリア「その証拠に今から、少女神の力でイヴの力を少しだけ引き出す」
幼女の予の頭に手をやり……駄目神は目を閉じた。
いーちゃん「え?」
しばらくして、駄目神は目を開けた。ウィンクして、成功したぞ☆ と可愛く成果を誇る駄目神の努力を無視して、幼女の予は両手を天井に向けて………呟いた。
いーちゃん「治癒魔法 ヒール?」
強制的に自分に備わっていた治癒魔法の素質解放がされた途端、一番威力の低い治癒魔法のイデアワードが自然と幼女の予の脳裏に閃き、反射的に口ずさんだ。
それは直ぐさま、威力を発揮する。
幼女の予の全身を強烈な銀色の光が包み込んだ。
レア「きゃっ!」
幼女の予の脇腹に手の平を押しつけていたレア妖精女王が驚いて咄嗟に背後に跳ぶ。
そこにはレア妖精女王が聞いたことのない魔法の効果が渦巻いていた。
レア「な、なに、これ。こんな属性の魔法………聞いた事ない。待って、さっき、いーちゃんが治癒魔法って。そんな」
こちらからは見えないが幼女の予のずたずたになった血管も修復され、失った血さえ、生存可能な領域まで回復しているだろう。
当然とばかりに治癒魔法は脇腹の深い傷さえも、元通りの白い素肌に戻した。それ以外の華井恵里とは関係ない一昨日、ファイアキャットと戯れていた時に転んでしまった膝のかさぶたも綺麗な肌に生まれ変わる。
体力の消耗から身体を守る為に上昇していた熱も収まってゆく。
それと同時に肌に今まで以上のつやが産まれた。
その威力にレア妖精女王は引き攣った笑顔で………にやにやしている駄目神に無言でこの治癒魔法の極致は蘇生魔法でしょう? と問う。
駄目神は応えずにただ、ライオンさんポーチからポテチを取り出し、質の悪い紙袋を歯でワイルドに破った。
リンテリア「っふふん♪ 神の因子を保って産まれた貴女は、今日から幼生のイヴと名乗るのよ。神様活動本格スタート」
治癒魔法で痛みも傷もすっかり治った幼女の予が嘘でしょ、とばかりに綺麗に治った脇腹を触り、突き、はたき、感触を確かめる。
リンテリア「幼生のイヴのお仕事は幼女の生を見守る神であり、この世界に存在しているだけで幼女の死亡率が20%激減します。神様のお力です!」
耳を塞ぎたくなるなんか、納得のいかない神様ネームと、その役割。それって仕事ではない! 労働を舐めるなぁ! と真央辺りならば、吠えるだろう。とかく、予もそう思う。
幼女の予だってぽかーんとしている。
いーちゃん「ふぇ?」
ですよねー、電波だよね、と予だって何度、過去を思い起こしてもそう思う。
駄目神は自分で説得するのが怠いとばかりにため息を吐き、レア妖精女王にお前がやれ! と首を幼女の予の方に振る。
レア「え、えーとね、イヴ様。実はあなた様は産まれた時から、幼女の生を見守る幼女神様だったの。だから、幼女を大切にする必要があるの。つまり、みんなと仲良くしてねってこと」
いーちゃん「仲良く? それがいーちゃんのおしごと?」
レア「そうよ」
そうやって、幼女の予を騙してなんとか、幼女神としての自覚を芽生えさせようとしているレアの隣では、駄目神がポテチを食べてる。
少女神 リンテリア「薄塩、おいしい」
いーちゃん「れあ、いーちゃん、幼女神やる! みんなと仲良くするぅ!」
あ、騙された。
いや、これ、結局、見守るだけなのだが、この次の駄目神の台詞が激しく詐欺臭いのだ。
リンテリア「んじゃあ、言い忘れたけど、幼女神様は私の次にこの第二神層世界を管理する神様になるからよろしくねん♪」
幼女の予はとんでもない事実に固まった。
レア妖精女王は知っていたのか、うんうん、と頷いている。
この時、幼女の予は知ったのだ。何故、妖精女王の地位にあるレアがイヴ様やあなた様と呼んでいたのか。神と人間ではもはや、次元が違うのだ。
駄目神は戸惑う幼女の予の肩を叩く。
リンテリア「もし、神様がこの世界に飽きてしまったら、もう壊すしかないだろう。玩具箱に片付けるのさ。生命の源たるデウス エクス マキナの海に還元してね。嫌だろう? この世界がなくなるのはだから、君が次のこの世界の神様だ。その為に私は凪紗南イヴの存在を肯定した」
いーちゃん「もし、いーちゃんがいやだって?」
駄目神はただ、無言でポテチをかじった。
食べ損ねたポテチのカスがまるで神様に見放された世界に住んでいた人のように見えた。昔も、今も。
それに予は知っている。神という存在が人間を特別視せずに虫と同格だと思っているのを。本物は優しい偶像ではない。
だからこそ、本能的にそれを感じた幼女の予は頷いた。
リンテリア「本当は、ね。ここまでしか語らないつもりだった」
と前置きして、駄目神は苦笑する。
リンテリア「優しいね、イヴ。言うよ、真実を! ただでさえ、世界の管理なんてもう、やってられないのに複雑化した世界構造、これに立ち向かえって! 嫌だね。私は那由多の彼方に愛する我が子を置いてきた。老いることも許されなかった。だからもう、あの子の下に逝きたいんだ。頼む、イヴ。私の後を継げ」
その言葉にはある種の怨念が籠もっていた。誰に向けたかも解らないその深淵はただ、ただ、怖く、幼女の予さえ、この人にこの世界を任せてはいけないと思った。
再び、首を縦に振った。
その瞬間、駄目神はつぼみが開いて華になったような笑顔を浮かべた。
リンテリア「ならば、感謝の気持ちを込めて、特典だ。お前のお母様に会わせてやろう。最期のお別れをするといい」
いーちゃん「お別れ? いやいやいやぁあああ!」
叫び、幼女の予は駄目神のTシャツの襟元を握りしめる。乱暴に掴んだ襟元を左右に振るった。それを駄目神は悲しげに見守った。
リンテリア「それは叶わない。死んだ者は本来、約1時間で死体から魂のしらべ――――」
と言い、駄目神の手の平に紅い塊である魂のしらべがいつの間にか乗っかっていた。
リンテリア「――――は出現する。それは妖精族によって回収されて、転生の扉の向こうにある転生宮へと運ばれてそこで転生を待つ。3年~2000年くらいの間を経て、人は前世の記憶を失い、魂のしらべは新しい身体を得て、違う人生を送る」
いーちゃん「やぁあああああ!」
幼女の予の涙を駄目神は拭おうとするが………止めて、行き場を無くした駄目神の手が幼女の予の髪を撫でる。
リンテリア「通常ならば、そこでバイバイだ。しかし、幼女神は治癒魔法を使い続けると新しい治癒魔法のイデアワードが脳裏に浮かび、さらにそれを繰り返すとやがて………」
いーちゃん「やがて?」
リンテリア「それは蘇生魔法 リヴァイヴに辿り着く。リミットは1ヶ月」
いーちゃん「いーちゃん、覚える!」
可能性があるのだと、幼女の予はそれを自分ならば覚えられると意気込みを保ってそう言った。
イヴ「何故、無理だと言わなかった、駄目神」
窓辺に向かって言った誰にも聞こえない独り言が虚しく、夕暮れ空の向こうに消える。
リンテリア「そう、これ、イヴのお母様の魂のしらべ。さぁ、ひとときのお別れを。本当は駄目だが、許可する。これを逃せば、転生宮に行った人間とは掟に従い、会うことは勿論、話すことも叶わない」
駄目神は自身の手の平の上にある魂のしらべに「もう、話してもいいぞ」と呟く。
リン「いーちゃん、助かって良かったぁ。リンは貴女の無事な姿を見れただけで嬉しい」
いーちゃん「お母様!」
今でも覚えている。その時に触れた紅いお母様の魂のしらべは………とても、温かいと感じた。それは一緒にお昼寝をしている時にお母様の腕に顔をすり寄せて感じた温かさそのものだった。
何故、あの時、予はもっと、最期のぬくもりを堪能しようと考えなかったのか。
予は幼女の予がお母様の魂のしらべを胸元に抱きしめている光景を見て、羨ましく思い、嫉妬した。
そして、怒りを覚えた。
イヴ「こらっ! 3歳のボク! 駄目神に騙されるな。ボクはその後、病院に通い、必死で治癒魔法を唱えて人々を癒やし続けた。寝る間も惜しんで! 寝不足で倒れそうになって! それでもな! 叶わぬのだ! 人の理の限界をさらに越える人の理の限界は…………とても、高かったんだ! だから」
幼女の予には予の言葉は聞こえない。これは予の夢が産み出した蜃気楼なのだから。
イヴ「再会は叶わぬのだ! この無知な自信家め!」
予の涙は床に染み一つ、作ることなく、消えてゆく。
それとは対照的に幼女の予は笑顔で、再会できると信じて………お母様と話す。
いーちゃん「お母様、絶対、いーちゃんがよみがえらせるから! なんたって、いーちゃんは神様なんだから!」
リン「ええ、そうです、勇者様とリンの娘は凄いんです」
いーちゃん「そうだよ、お父様とお母様の子だもん!」
リン「だからこそ、力に溺れない優しいお姫様になりなさい。未来お義姉様の言うことを聞いて良い子にね」
いーちゃん「なるから、よみがえったらまた、良い子良い子してね」
リン「うふふっふ、わかったですよ」
リン「いーちゃん、よく聞きなさい」
いーちゃん「おかあさま?」
リン「これから、いーちゃん、いいえ」
リン「凪紗南イヴ”女王様”にはクイーン王国を統治するお仕事は勿論、英雄の娘として多くの幸福と、多くの不幸を体験するでしょう。行動次第で人は運命を変えられます。だから、優しいイヴ女王様のお心を忘れず、前を歩きなさい」
いーちゃん「お母様?」
リン「貴女は復讐に囚われてはいけない。貴女の力は鍛え上げれば確実に、それは可能です。世界すら、簡単に滅ぼせるようになるでしょう。しかし………」
リン「それは無益なこと。零れたミルクは決して元には戻りません。優しいことに使いなさい」
いーちゃん「優しいこと?」
リン「人生の全て。神たる永遠を使って優しさを追求しなさい。それが力ある者、王族の誇りですよ、イヴ女王様。さぁ、これがリンの、お母様の遺言です」
いーちゃん「お母様!」
リン「ありがとうございます、少女神 リンテリア様。あなたのお力がなければ、リンのイヴは産まれることさえなく、消える運命にある子でした。本当にありがとうございます」
リンテリア「もう、いいのね」
リン「はい」
リンテリア「イヴをここまで元気な子に育っててくれてありがとうね。認めてあげる、人間。あなたの愛を」
そう言って駄目神は、口を真一文字に閉じた。
お母様の魂のしらべを渡さない幼女の予の手を黙って、魂のしらべから離させた。
少々、強引に指を一本一本、無理矢理、開かせて。
あの時、予は精一杯、力をいれた。だが、それは駄目神には通用しなかったのだ。
そして、魂のしらべを抱えた駄目神は幼女の予に手を振る。
リンテリア「またね! ちょくちょく遊びにくるよん! 幼生のイヴ」
木製のテーブルの上に食べかけのポテチと、本を置いて駄目神の姿は忽然と消えた。
幼女の予はしばらく、放心した後、叫んだ。
いーちゃん「お母様ぁあああああああああああ!」
夢が叫びと共に終わる。
覚醒の中、新たに再び、強く願う自身の心に。
イヴ「優しい凪紗南イヴになるのだ。ボクでも、予でも、全てのイヴはそうでないといけないのだ」
視点 凪紗南イヴ
場所:地球 旧世界 東京都 千代田区、地球 新世界 東京都 凪紗南市
日時:2033年 4月3日 午前 7時00分
ここは皇族が入る墓とは別に用意された墓がある場所。名もなき場所。ただ、ソメイヨシノに囲まれて、中央に日本式の墓があるだけの少し英雄の墓としては寂しい場所。
だが、元々、両親は派手なのは好きではなかった。
予はここでふと、規則性もなしに両親に独り報告会を開くのだ。
英雄であるお母様とお父様の慰霊碑はお母様が殺害された元公園にあり、そこで人々は亡き英雄を惜しんでくれているが、予はそこには今も赴けない。近づくとどうしても、胃の中のものを全て、戻してしまうのだ。
情けない限りだと笑う。
さやさや、と桜の花びらが散る。
もうすぐ、桜の季節は終わりだ。
英雄の行いにより、世界は良くも、悪くも変わった。
だから、英雄の娘がすべき道は………。
イヴ「ボクが、変わった世界を元の平常な世に戻すのだ!」
強風が吹き荒れ、予は銀色の髪を押さえてしばし、目を閉じる。
弱まった風を待って、両親に思いを告げる。
イヴ「優しい世界にするのだ。みんなが笑い合える。それが理想なのだ」
今日はしばらく、お母様とお父様とお話しをしよう。
何か、そんな気分なのだ。




