第122話 この不条理な世界で……
第122話 この不条理な世界で……
視点:凪沙南イヴ
場所 東京都 第一地下都市 大和
日時 2033年 4月10日 午後 5時30分
何気に飛行車から流れる気色を窓から眺める。
ハッチエリア入り口付近を護るゲートにはいつものように迷彩服を着た日本軍の兵士が自動装填銃を誰もが装備していて、怪しい連中はいないか? と眼を光らせていた。
そのハッチエリアに続くゲートを予とりりすが乗っている為、素通りで飛行車は通過してゆく。
ハッチエリアと呼ばれる地下都市へと続く道を飛行車は空を飛ばずに、地にタイヤをつけたまま、走りぬける。ハッチエリアはトンネルと同じく、明るい光で満たされている為、事故はほとんど、起こらない。
りりす「イヴお姉様」
イヴ「うん?」
りりす「外にそれほど、面白いモノでもありますか?」
イヴ「いつもの景色なのだ、と言う感じ」
いつもの景色。ハッチエリアを抜けた先には巨大なビル群が立ち並び、その下を人々が楽しげに会話をしてそれぞれの行き先へと歩いている。
それが何よりも大切だ。異世界 リンテリア クイーンであった危険種動物達の氾濫と人の命を奪う盗賊達の件があったから尚更に。
視点:凪沙南イヴ
場所 東京都 第一地下都市 大和 商業区 ブリリアントホテル
日時 2033年 4月10日 午後 5時45分
非公式である為、正規の会議室をしようすべきではないという未来天皇代理様の一言から都内のブリリアントホテルの一室で行われることになった。参加者は予、凪沙南りりす、凪沙南未来天皇代理様、寸命アリア、新羅咲良、テスラ・リメンバーの6名でアリアのもたらしたダラーヒムの非公式での協力について話し合われることになった。
テスラ「寸命アリアがダラーヒムから持ってきた小魚を調べた結果、これは水銀中毒による公害病である可能性が高い。また、一緒に渡された資料から分析した観点からも明らか」
イヴ「今の異世界 リンテリアの文明水準で治癒は可能なのか? テスラ」
予の言葉にテスラは残念そうに水色のセミロングの髪を横に振る。
それに対して、未来お姉様は「やはりな」と呟いた後、黙る。
テスラ「非公式の国家間協力を申し出たカムク・エレルには悪いが…………これを完全に癒やす方法は異世界 リンテリアにはないだろう。それを防ぐ手段は特殊なフィルターなどを設置して汚染水を綺麗にしてゆくプランがある。如何に異世界 リンテリア随一の化学研究国でも……困難を極める長期的な対応になるだろう。クイーンは”そうなること”を見越して未だに蒸気機関車などの文明の利器を採用しなかったのだろう、イヴ?」
イヴ「公害病に対するデメリットを有したまま、文明を急速に進めてゆくことに予と心愛で反対を表明した。世界天秤条約により、地球レベルの科学的説明ができなかったが皆、予の言葉に反対しなかった」
りりす「よく反対されませんでしたね、イヴお姉様?」
いつもの無表情、棒読み口調でりりすが予に質問してきた。
イヴ「有り余りすぎる武力は反乱を生むという事をたとえ話にして懇切丁寧に2時間、喋って納得してもらったのだ」
りりす「誰もが力を手に入れたい。我にもそういう欲求がある。よくぞ、お姉様の家臣は耐えたものぞ」
咲良「どうする?」
珍しく眠気のない声で咲良が予に問う。
座っているソファーに深く腰掛け直してから予は答える。
イヴ「とにかく、カムク・エレルが何処まで望んでいるのか? その真意を問う必要性もあるが……公害病という科学的事実を世界天秤条約において何処まで伝えていいのか? という難題もある。これは世界連合に問い合わせが必要なのだ」
未来「世界連合 橘慎太議長に私から問い合わせてみよう。ところでイヴ、その結果、何処まで他国に秘密裏に協力するつもりだ。クイーンとダラーヒムの間には不可侵条約こそ、あれど、仲良しになりましょう的な条約は結んでいないぞ」
イヴ「公害病の患者を治癒魔法で治癒させるのだ」
アリア「世界唯一、治癒魔法が使えるのはイヴ様だけなんやで……バレるわ、それ」
イヴ「どうにかして……それと汚染先の治癒魔法で水質改善を」
アリア「摘発も同時に行わないと無理やで」
イヴ「カムクを通してダラーヒムの賢者王 リトア・ダラーヒムに会談を求める!」
未来「今代のダラーヒム王はイヴ、お前の治癒魔法を嫌っている。いや、魔法全体を嫌っていると言った方が良いだろう。それでもお前はダラーヒムの王と会談するのか?」
イヴ「クイーンではなく、日本の皇女として会談をする」
未来「地球の一国となれば、態度も軟化するだろう。考えたな、皇女」
りりす「何故、そこまでしてダラーヒムはクイーンを嫌っている?」
イヴ「ダラーヒムには奴隷を使って人体実験を行っていた過去があり、その奴隷達を解放したのが日本から召喚された予とりりすのお父様 凪沙南春明とクイーンの王女だった予のお母様 リン・クイーンだったからなのだ」
りりす「大幅な予定変更を余儀なくされただろう。さぞ、その時の光景が目に浮かびそうだ」
ドSなりりすが予の答えにくすくすと笑う。




