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創世する世界のイヴ # Genesis to the world's Eve  作者: 遍駆羽御
本編―――― 第3章 眠れる天賦
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第115話 イヴとの出逢い 聖剣編

 

 第115話 イヴとの出逢い 聖剣編


 視点:アイシャ・ローラント

 場所 地球 旧世界 東京都 千代田区、地球 新世界 東京都 凪紗南市 皇立桜花学園

 日時 2033年 4月10日 午後 1時07分



 イヴ「次はアイシャの召喚器を創るのだ」


 アイシャ「宜しくお願いしますね、イヴ」


 私はイヴにお辞儀してから目を閉じる。


 イヴ「創世する世界の果てで少女は謳う再生の未来、破滅の過去、停滞の現在を。されど、たゆたう魂に抱かれて少女は願う、再生の炎を」


 目を閉じていても解るイヴの背に輝く8枚の翼。

 その輝きが安らぎに満ちた眠気を誘う。


 イヴ「さぁ、少女の強き願いから産まれた少女の願い人。汝は何を願う?」


 イヴ「何を願う? それが運命を創世する力となる。さぁ、運命の少女の力よ」


 アイシャ「願いはイヴを護る力を」


 イヴ「では、その根源となった過去へと飛び、それを強く願いなさい」


 私は私の大切なイヴを護る為にその根源となった過去へと飛ぶ。

 意識が次第に薄れてゆく…………。


 視点:アイシャ・ローラント(3歳の頃)

 場所 ローラント島 リンテリア教大聖堂

 日時 2021年 11月25日 午後 2時37分



 滝に打たれながら今日も聖剣 ローラントを振る。

 聖剣を握りしめ、濡れた前髪をそのままに荒くなった息を整える。今日、この日で聖剣を扱う修行が完了する。

 修行完了を告げるように外界と閉ざされていた扉が開く。

 扉が開き、私は聖剣 ローラントを鞘に収めて、ゆっくりと木々に囲まれた修行の場を後にする。

 扉を潜れば、そこは礼拝堂だった。

 礼拝堂の司祭が私に駆け寄ると慌てた口調で喋った。


 司祭「アイシャ様、修行ご苦労様です。アイシャ様はこれより、ローラントの姓を名乗ることが許されます」


 アイシャ「そんなに慌てて、どうしましたか?」


 司祭「それがアイシャ様のいたアイリス村が病に襲われて壊滅しました。それで……アイシャ様の姉 リイーシャ様や妹のネネ様もその時に……」


 アイシャ「そうか……伝えてくれてありがとう」


 異世界 リンテリアの文明レベルでは風邪でさえ、命を奪われることがある。私もその村にいれば、流行病で死んでいたのだろうと……乾いた笑みを浮かべる。

 司祭は苦笑いを浮かべてアイシャにこれからの行動を示す。


 司祭「明日、アイシャ様の婚約者 凪沙南イヴ様との謁見がございます。故郷であるクイーン王国に戻り、城へと登城して下さい」


 アイシャ「了解しました」


 アイシャが聖剣を偶然、抜き……それにより、約300年ぶりの聖女として認められて聖女になることを決意したのは姉のリイーシャと妹のネネを苦労させることなく、共に暮らすためだった。

 外に出ると……雨が降っていた。

 その雨に濡れながら、私は声を張り上げて泣いた。


 アイシャ「何故、何故、私が修行を終えるまで待ってはくれなかった…………」


 運命というならば、こんな運命を否定したかったが……アイリス村に戻り、冷たくなった姉 リイーシャと妹 ネネを荼毘に付して、遺骨をアイリス村墓地に入れてから急にこれが現実であり、運命なのだとやっと、理解できた。

 理解したがもう、涙は枯れてしまった。

 イヴ女王様の婚約者となった今ではこの村に戻ってくることは墓参りくらいしかないだろうと思い、悲しみを振り切る為に私は自分の住んでいた家を燃やした。

 その燃えさかる炎が自分の涙に見えた。

 しかし、こんな不幸は異世界 リンテリアの文明レベルでは当たり前の光景だった。事実、二年前の流行病で私の両親は死んでしまったのだから……。それから姉のリイーシャが学校に行きながら農業を続けて私と妹 ネネを食べさせてくれた。

 今となってはその貧乏な日々さえ懐かしい。


 視点:アイシャ・ローラント(3歳の頃)

 場所 クイーン王国 クイーン王城

 日時 2021年 11月26日 午後 1時00分



 私は司祭の着るローブに身を包み、聖剣 ローラントを帯剣して城の門を潜る。

 活気に満ちあふれていてもおかしいはずなのに、城にはどんよりとした気が立ちこめている。

 私は気になり、案内役のメイドに聞いた。

 メイドは少し怪訝そうな表情を見せていたが、私の問いにしっかりと応えてくれた。


 メイド「イヴ様はご両親をテロリストに殺されてお心を少し、病んでしまったのです。私達にはどうすることもできません」


 アイシャ「そうですか……。ありがとう、私は一年間、聖剣 ローラントを扱えるように修行していたので少々、世間に疎いのだ」


 メイド「いいえ、そうとは知らず、ご無礼しました」


 案内役のメイドが謁見の間の扉を開いた。


 その扉を開いた先には、車椅子に乗せられた私と同じ年頃の銀髪の幼女と、幼女と同じ銀髪の女性がその車いすを押していた。


 ???「お前が兄がイヴの婚約者に定めた約300年ぶりに聖剣 ローラントを抜き、リンテリア教会から正式に聖女として認められたアイシャ・ローラントか?」


 女性の銀色の眼光が私の身体を貫く。その銀色には自身に対しても、他人に対しても厳しさが宿っていた。

 私は咄嗟に頷き、自己紹介をする。


 アイシャ「聖剣 ローラントに認められた聖女 アイシャ・ローラントです。よろしくお願いします」


 ???「そうか。私はイヴの叔母 凪沙南未来だ。今は地球の日本と異世界 リンテリアのクイーン王国のそれぞれ、天皇代理と女王代理を務めている。以後、よろしく頼む」


 未来「早速で悪いが、この後、用事があり、地球へと帰る。そこでアイシャにはイヴの世話を頼みたい」


 アイシャ「婚約者と仲良くするのは当たり前だと思っています。むしろ、こちらからお願いします。しかし……イヴ様のご様子が……」


 車いすに乗せられた幼女 凪沙南イヴの様子がおかしいことは謁見の間に入った時に目に入っていた。俯いて何も喋ろうとしない。金と銀のオッドアイは大変、美しいと様々な人が評しているが……そのオッドアイは俯いているので見えない。


 イヴ「……」


 言葉を忘れてしまったかのようにイヴの小さな口はぎゅっと、閉じられていた。


 未来「両親が殺されてからずっと、このままだ。喋らないかもしれないが気にしないでくれ」


 そう言った後、未来様は私にイヴの世話を託して用事を片付けるべく、謁見の間を後にした。


 私はイヴの乗る車いすを押して城の中をゆっくりと回ることにした。

 その間にも必死にイヴに話しかけた。


 アイシャ「好きな食べ物は? 私はおにぎりなのだが……」


 イヴ「……」


 アイシャ「どんなことをして遊んでいるんですか? イヴ様」


 イヴ「……」


 三時間、このような状態だった。

 果たして私とイヴ様がまともに私と話すことはあるのだろうか?






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