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創世する世界のイヴ # Genesis to the world's Eve  作者: 遍駆羽御
本編―――― 第3章 眠れる天賦
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第114話 永劫の闇 後編

 

 第114話 永劫の闇 後編


 我は人の死を冒涜し過ぎた。

 我は何千もの、人々を母親 華井恵里に命令されるがままに斬りつけてきた。

 バニッシュ ヒューマンと呼ばれるいつか、消える者だからこそ、死に対して怖いとは思わなかった。

 瞼を開ければ、そこは白い部屋だった……。

 白い部屋に闇が浮かび上がっている。

 その闇を集めれば、我の召喚器がそこから現れると何故か、理解できた。

 一つ目の闇と二つ目の闇を合わせた。

 集約された闇に何度も闇を重ねた。

 そうすると、強制的に脳内で人を初めて殺めた記憶が蘇ってくる。


 視点:凪沙南りりす

 場所 バベルの空中庭園都市 第一訓練施設

 日時 2025年 7月3日 午後 2時13分



 あれは4歳の時だった。

 物心、付いた頃には母親 華井恵里の指示で犬や猫、猪、ライオン等の動物を片っ端から殺した。それは華井恵里が我に”殺す”という行為を覚えさせる為にわざわざ、繁殖させたモノだった。それを1日 100匹、1ヶ月 3000匹、1年 36500匹、殺した。

 いつの間にか、我のレベルは4歳の時点でLevel 400にまで高まっていた。

 いつか、人間も殺すだろうと漠然と考えていた。そこには何の感情も籠もっていなかった。

 そして、その時がやって来たのだと我が確信したのは、いつものようにコロシアムのような形をした訓練場に大鎌を持ってゆくとそこには動物の入った檻ではなく、柱に括り付けられた10代の男 3人、10代の女 2人だった。


 10代の男1「助けてくれ」


 10代の男2「助けて」


 10代の男3「助けて下さい、慈悲を恵里様」


 10代の女1「私に合わなかった任務だったのよ。こんなところで死ぬなんて嫌だ」


 10代の女2「……いやいやぁああ! 死にたくない、死にたくない」


 我はその悲痛な叫びをうるさい……、無様だなと感じた。

 同じようにそう感じているであろう烏色の髪に、どんな光さえも闇色の虹彩の前では掻き消えてしまう瞳に映る冷厳さを保つ我の母親 華井恵里が我を手招きした。その手招きには母性なんぞ、存在しなく、利用できる人材としての手早い手招きであった。


 恵里「りーちゃん、さぁ、Level上げの時間よ。沢山、喰らって早く、りーちゃんのお姉ちゃんを殺せるようになりなさい。神殺しを達成する。それはただの人間には難関よ。ましてや、魂の強度が強すぎて最高 20歳までに、最低 13歳までに消えてしまうバニシュ ヒューマンたるりーちゃんには、ね」


 りりす「お母様。我は必ず、イヴお姉様を殺して、お母様の期待に応えます」


 恵里「お母様? 私はりーちゃんが私の事をそう呼ぶのは許してないわ」


 りりす「すいません、恵里様」


 恵里「そう、私には様付けが相応しい。さて、今日はここにいる任務の成績が振るわなかった者の廃棄処分を行いますぅ。叫んでも泣き喚いても完全に消滅させる」


 お母様はあらぬ方向に鎌を投げつける。その鎌は中空で停止した。

 お母様の投げた鎌に血が付着し、零れ墜ちてゆく……。その血が血溜まりを構成する前に妖精魔法 クリアが切れて、妖精族が姿を現した。

 魂のしらべを運ぶつもりだったのであろう妖精族は既に胸元にお母様の鎌が突き刺さり、声も上げずに絶命していた。ドサっと妖精族が仰向けに倒れた。


 この行為は死者への冒涜とされ、どんな悪でも魂のしらべを転生宮へと運ぶ妖精族の仕事を邪魔するものはいなかった。たった一人、我のお母様 華井恵里を除いて。


 恵里「全く、レア・ミィール妖精女王様も懲りない。どんなに精鋭の妖精族を送り込もうとも私にはほんの些細な気配でも妖精族の有無なんぞ、簡単に看破できる。さ、りーちゃん、さっさとそこで震えている廃品を切り刻んで経験値にしなさい」


 我はうんと首を縦に振るうと何の感慨も無く、歩き出した。

 一歩、一歩、歩く度にこれから魂のしらべのまま、彷徨うことになる犠牲者達の絶望の声が聞こえてくる。あまりの恐怖に糞尿を漏らす者までいる。しかし、我の歩みは止まらない。


 我はお母様に愛されたい!

 愛されるんだ!

 ただ、その一心で我は鎌を横に振るった。面白いように人の首が吹き飛んだ。

 後、4人の首も同じように鎌で刈った。


 そこにはなんら、感想はない。

 ただ、獲物が縛られていたのでいつもよりも簡単だった……。


 転がった恐怖に顔を歪ませた顔をお母様が心理詠唱式の古代魔法 ドラグマグマで燃やした。朱い炎は一瞬にして、犠牲者達の頭部を灰にした。


 恵里「これからは動物ではなく、このような成績を振るわない者、裏切り者等を処分してもらうわ、りーちゃんには」


 黒い白衣のポケットに両腕を突っ込んで、お母様は不適に微笑んだ。


 *


 こうして、4歳から我は人間を殺め始めた。

 全てはお母様に愛される為だった。小説の中にだけ存在していた家族的なことを経験してみたかった。

 だが、今ならば、解る。

 お母様は我を道具として見ていて、皮肉な事に殺そうと思っていたイヴお姉様は我を妹として見てくれた。

 だからこそ、我は闇を一カ所に集め続ける。そうすることで我の武器は完成する。

 闇を重ね続けて、闇の中から漆黒の大鎌が現れた。

 しかし、掴もうとしてもそれを掴むことができなかった。

 その鎌が物言わずに囁く。

 汝の願いは何だ? と。

 願い。

 そんな事を考えたことがあるだろうか?

 お母様の下を飛び出しても生きることに夢中でそれに気づけなかった。

 その鎌は再び、物言わずに囁く。

 良いでしょう、願いを探す為に生きた証を振るいなさい、と。


 りりす「そうか。我の願いは望みを探すこと。そして、汝の鎌の名はエクスキューショナー」


 掴めなかった鎌 エクスキューショナーを掴むのに今度こそ、成功する。


 *


 目を瞑り、また、目を開けると皇立桜花学園の空き教室へと戻っていた。

 手には禍々しい気を纏った鎌 エクスキューショナーがあった。


 りりす「イヴお姉様、我の鎌をお陰様で手に入れることができました」


 イヴ「うん、良かったのだ。これで予の深淵の刀とお揃いなのだ」


 銀色の髪を振り乱して自分のことのように褒めてくれるイヴお姉様を我は愛おしく思った。できることならば、イヴお姉様の下で生を全うしたいと……。

 探そう、その為の望みを。


 <凪沙南りりすは召喚器 エクスキューショナーを手に入れた!>

 <自動で装備がエクスキューショナーに変更になりました>


 <エクスキューショナー(召喚器) 攻撃 11170 Level 41 レア度 goddess 装備時のみ 全ステータス+1845>





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